大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

交渉術

BATNAが無限にある完全競争市場での交渉

先週行ったエネルギー系企業向けの交渉術トレーニングの声をレビュー中。 相手との長期的な関係を維持することを前提にしている場合には、いわゆる「Win-Win」をゴールとする協調的交渉戦術が基本となりますが、参加者の中には、原材料の国際調達などで、で…

正義に溺れる自分を疑う

戦争をはじめ、多くのコンフリクトは 「自分が正しい」 「自分が正義である」 という前提で発生する。風評被害でも、デマの拡散でも、多くは「騙してやろう」という動機ではなく、 「みんなを助けたい」 「役立ちたい」 という内発的動機に基づいて行われる…

人との感情的な対立をロジカルに解消する(痛い経験編)

半年ほど前、ある人にアメリカの某クラウドサービスが便利そうですよ、とウェブサイトを紹介しました。 そのサービスは一部無料でも使えるのですが、有料の使い放題サービスは月30ドルほど。日本で同等のサービスを利用すると、5−6倍の値段はするので、仮…

借金トラップ回避に成功したマハティールの交渉術

スリランカやフィリピンが、資金&インフラ建設援助の名目で中国の借金トラップにはまってしまい、塗炭の苦しみにあえいでいるケースを何度かご紹介しました。 もちろんトラップといっても、無理やり「押し貸し」した訳ではなく、インフラ整備を急ぎたい新興…

交渉力をつけるには、強力なBATNAを手放さないこと

第26代米国大統領セオドア・ルーズベルトの外交姿勢を比喩する言葉として下記がある。 「Speak softly and carry a big stick.」 平たく言えば、”交渉の時は、おだやかに喋ると同時に、棍棒(いざという時の武力)を必ず持っておけ”(そうやってナメられない…

ニーズを聞き出すために、仮説や情報をぶつけてみる

Open Questionで相手のニーズを聞き出すのは結構ハードルが高い。したがって、まずは情報を当ててみて、そこから芋づる式にニーズを探り当てたほうがよいということがわかる。 「『わたしに何でも聞いてください』とチャットボットに問いかけられても、ユー…

交渉術とマーケティングの共通点(マレッジブルー)

相手に「商品」を売るのがマーケティング、「アイデア」を売る(受け入れてもらう)のが交渉術 と考えれば、マーケティングと交渉術で使えるスキルやコンセプトはかなり共通するものがあるのがわかる。 たとえば、マーケッターの神田昌典さんが世に広めた 「…

「対立する人」(敵)を「問題解決の仲間」に変える交渉術

交渉上の細かい条件でもめている場合、本来のゴールに立ち返ることの大切さを考えさせてくれる良いコラムを発見しました。 「東レ:市場は後からついてくる」(Diamond Harvard Business Review Oct 2015)には、ユニクロと東レが、どのような交渉をベースに…

シャープとホンハイ(鴻海)の交渉術  「交渉は交渉が成立しないでも良い方が有利」

鴻海によるシャープの買収交渉ですが、最後の段階で偶発債務(将来発生しかねない債務)の問題が出てきて、ごちゃごちゃしましたが、最終的にシャープ側が折れる感じで妥結しそうです。 鴻海、30日に取締役会 「シャープ買収案を議論」 (2016/3/28 2:00) www…

グローバル交渉研修(国別の違い)

グローバル交渉研修でたまに紹介するハーバード大学の記事。ここに出てくる動画はディスカッションを喚起する上でかなりウケが良い。 例えば日本とロシアやイスラエルのコミュニケーションスタイルは対極にあるのがよくわかる。もちろん、日本でも大阪と東京…

インドネシア高速鉄道の失注に学ぶ交渉術

インドネシア新幹線、真に敗れたのは誰か 超大型案件は中国に軍配が上がったが… 大坂 直樹 :東洋経済 編集局記者 2015年10月17日 http://toyokeizai.net/articles/-/87558 日本はインドネシアで大きな案件を落としました。その背景には、日本が歴史的に多額…

関係性を大事にするアジア/いきなり本題に入る欧米

8月27日にシンガポールマネジメント大学(SMU)のDr. Michael Benolielによるグローバル交渉の講義が行われました。 深い知見に基づく話で、通訳しながらいろいろと勉強になったのですが、もっとも面白かったのでは、 「契約(Contract)」と「関係性(Rela…

コラム>LINE森川社長、「交渉はジャズに似ている」

LINE社長の森川さんが交渉術本を読んで書かれているコラム(LINE森川社長、「交渉はジャズに似ている」)を興味深く読みました。 交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義(2014/11/14)マイケル ウィーラー商品詳細を見る 特に面白かったのは下記の…

良心的なネゴシエーターがハマりやすい落とし穴

ネゴシエーター(交渉人)はいつも自分のポジショニングを振り返る必要があります。というのは、交渉の過程で、ついつい自分の立ち位置を忘れてしまうからです。 交渉の基本は「WIN-WIN」です。 勝った負けたで勝負がつく弁護士の世界や、相手との関係構築が…

商談に使える「よい警官/悪い警官」戦法

交渉術の典型的な手法に「Good Cop/Bad Cop」(いい警官/悪い警官)がある。 犯人を尋問するとき、悪い警官が「吐んかい!」と脅し、彼がちょっと席を外したスキに、よい警官が 「あいつを怒らすと怖いぞ。悪いようにはしないからオレの言う通りにしてくれ…

交渉術と役割性格

人間は社会的に求められる"ある役割"を演じているうちに、その役割の「あるべき」性格までが、自分に乗り移ってしまう現象=同化するが起こります。 これを心理学では「役割性格」と呼びます。 さらに詳しい解説はこちら。 「役割性格の打破が再発展の鍵とな…