第26代米国大統領セオドア・ルーズベルトの外交姿勢を比喩する言葉として下記がある。
「Speak softly and carry a big stick.」
平たく言えば、”交渉の時は、おだやかに喋ると同時に、棍棒(いざという時の武力)を必ず持っておけ”(そうやってナメられないようにしろ)”
という意味である。
交渉学的に言えば、交渉が決裂した時の2番手の解決策「BATNA」をきちんと保持しておけということになる。
同じようなことが、最近読んだ下記の本にも書いてあった(この本はオススメ)
作者で芸人の西野さんによれば、テレビを本当に面白くすべく、テレビ局と交渉するには、テレビに対して「NO」が出せる態勢が必要だという。
「こっちで飯を食えてるし、メッチャ幸せだし、俺、テレビに出なくてもいいんですよ。でも”それでも”というのなら」という交換条件がだせる状況
があって、初めて尖った企画を通すための交渉が対等できる。
まさに「BATNAがあるからこそ」という点で、要はルーズベルトと同じことを言っている。
自分に余人をもって替えがたいスキルや能力があれば交渉は対等にできるが、そうでなければ、足元を見る人はどんどんそこを突っ込んでくる。
「俺に断られたらお前困るだろう」とえげつない交渉をしてくる輩も世の中には多い。
そんな時、保険であるBATNAがないとどうなるか?
「嘘をつかなくてはならない」
環境に追い込まれるのである。なんとなく違っているなあ、納得できないなと思っていても、ご飯を食べさせてくれる飼い主には逆らえない。
前述の西野さんは、絵本やクラウドファンディグ、オンラインサロンなどで収入を分散し
「嘘をつかなくての良い環境をつくる」
ことで防衛しているのである。
これからは副業が当たり前の時代である。自らBATNAを捨て、「自分はこんなに会社に身を売っています」とアピールすることで評価される時代は終わりつつある。
逆に言えば、副業を認めていて、それでもなお人が集まっている会社は、信頼できる会社である可能性が高いというと言える。
会社と個人は本来対等である。
言い換えれば、会社はあなたという”個人株式会社”に業務を委託し、その期待値を超える仕事を提供するから関係が成り立つ。
そして「委託される側」も「委託する側」も平等に評価されるのである。