大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

交渉術と役割性格

人間は社会的に求められる"ある役割"を演じているうちに、その役割の「あるべき」性格までが、自分に乗り移ってしまう現象=同化するが起こります。

これを心理学では「役割性格」と呼びます。

さらに詳しい解説はこちら。

「役割性格の打破が再発展の鍵となる」(川上真史)

http://www.watsonwyatt.co.jp

新入社員が"新入社員らしく"振舞ったり、母親が子供が出来た時から、「母親らしく」なったりするのも、同じ原理です。冒

同じように、我々が交渉をするとき、知らず知らずうちに「役割性格」を演じている可能性があるのです。

●自分は誰を演じているか

例えば、自分の発する言葉が、過去に実際の現場や、TVで誰かが交渉しているシーンで見た、そのままのセリフだったりしませんか?

そうです。

自分が作り上げた「うまく交渉している人」の固定的なイメージが、自分の役割性格となり、それが"無意識"に行動を支配している可能性があります。

だからこそ、交渉する場合は、「自分はどういった目的で、どのような価値観で、どのように交渉しているのか?」ということを、常に客観的に見る自分(メタ認識=この場合、役者に対する映画監督)を意識することが大切です。というのは、交渉ってやっているうちに、頭のなかで映画やドラマに出てくる駆け引きを得意とするような[タフネゴシエーター」のようなイメージが浮かんで来て、それを演じてしまうリスクがあるからです。

実際の世の中では、「役割性格」に支配され、足元を見失って破綻する経営者もいますし、セルフイメージを意図的に高く持つことによって、コンプレックスを打破する人したり、それがきっかけで結婚するもいますので、交渉する際には、積極的にこの「役割性格」をコントロールしたいものです。

なお、この辺りの詳しい解説は拙著「プロフェッショナルを演じる仕事術 (PHPビジネス新書)」でも説明しています。