大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

ビジネスにおけるミッションを見つける3つの質問

最近、自社の新規事業を考えたり、新規事業について企業研修の依頼をいただくことが増えてきました。このテーマで参加者のリアクションをみていて面白いのは、明らかに「ピンときている人」と、「まったくピンときていない人」が明確に分かれることです。

 

ロジカルシンキングや問題解決研修では、ここまで極端に差が出ることはありません。


「なぜこんなに差が出るのか」と考えていたのですが、 結局「人生でどこに行きたいか?」というゴールに関わってくるんだろうという結論に至りました。

 

そこで「人生のゴール」を炙り出すのに適切な3つの質問を考えてみました。

 

1)「これはおかしい」と怒りを感じたこと(現在感じていること)
2)「この人を助けたい」(or 喜ばせたい)と思ったこと
3)「なんでこんなにいいものが世の中に知られていないんだろう」と思うこと

 

言い換えれば、これらは直感的に

「現状」と「理想」のギャップを感じている状態、リクルート風に言えば不満の「不」を示しています。この不満がなければ、何かにチャレンジするための自分をドライブさせる熱意も湧かないので、まだアクションを取る時期ではないということです。

 

逆に、不満を感じているなら、その「直感」を「論理」に転換することで解像度を上げ、ゴールを明瞭にすることが重要になります。

 

 

さて、この不満(不条理)を感じる状態には上記図の通り3パターンがあって、その問題に対するリアクションの仕方が人生を作ると言っても過言ではありません。

 

気をつけたいのは「怒り」を感じているパターンで、怒りを発生させている「原因」にフォーカスして、会社組織やら上司を責めるパターンに陥っている場合は、大体においてドツボにハマっています。(もちろんクソ上司はいます)

 

30代前半までは、私もそういう思考にハマっていたのでよくわかりますが、不満なのに会社を飛び出す勇気もなく、かといって社内で具体的アクションも取らず、ずっと陰で悪口を言っていると、だんだんと同じような思考の人を引き寄せます。

 

45歳を過ぎて「会社のせいで***できない」などとウジウジ悪態をついている人を見ると、この人は50になっても、60になっても同じことを言い続けて人生を終わるんだろうと容易に想像できますが、ネガティブな人がネガティブな人で、案外波長が合う仲間がいるので、無理して交わらなければ良いだけです。

 

さて10年前に当時働いていた会社を辞め、起業しようと思ったのは、不満の「原因」側に囚われて時間を過ごすのではなく、「だからどうしたらいいか」「自分だったらどうするか」という未来側にフォーカスして、代替案を作ってしまう方が良いんじゃないかと思ったからです。

 

上司がどれほど馬鹿だとしても、その人の人格を変えるのは基本的に無理ですし、もしムカつく相手を改心させるために、仮に自分の人生の5年を費やすのだとしたら、そのパワーをもっとポジティブな方向に注いだ方がよっぽど生産的です。(そのシチュエーションのど真ん中にいると、意外とそのことに気づかないんですが)

 

そう考えて、未来のための仕事をしていると、今度はそういうポジティブな人と自然に波長が合うようになります(逆の人は避けるようにしていますし、そうしなくても自然に離れていきます)


もちろん怒りから完全に解脱できるほど、私は人間ができている訳ではありませんし、むしろ「怒り」が新しい行動を起こす原動力にもなっている側面もあります。要は、そのベクトルの先をちょっと変えるだけだと思うのです。(仏教の教えでは「心の中の鬼」のコントロールだというんだそうです)

 

さて、不満を感じた時に、私たちの目の前には常に2つの選択肢が現れます。

 

「変える」
「順応する」

 

ここでジョブズがいう「この世の中はあなたより賢い人が作ったわけではない。だから変えられる」というメッセージが重要です。そう。私たちは自分の手で未来を変えられるのです。

 

 

「ギャップは解消されるべきだ」と評論家的に嘆いたり、つぶやくだけでなく、実際に脳に汗をかき、手を動かして具体的に解消しようとする人が「起業家」であり、本当世界を変えられるパワーを持つのがビジネスです。

 

これを社内で実行できるなら「社内起業」(新規事業)すればよいし、外でしかできないなら「起業」ということになります。(そもそも明確なゴールがなければ、ノーアクション)

 

例えば「なんでこんなにいいものが世の中に知られていないんだろう」と思うことは、他の人に見えていない本当の価値が、自分にだけ見えているということを意味します。

宇宙の神秘でも、生成AIの可能性でも、何かの価値を伝えられるのは、本人やそのモノ自体より、実はそれに感動しているストーリーテラーではないかと改めて思います。そう。感動なのです。そして、その感動を伝える行動こそが、自分自身の表現だと言い換えられます。

 

その意味で、下記の動画でいう「一見「孤独なバカ者」を本物のリーダーにする人」の存在が極めて重要なのです。

TED「社会運動はどうやって起こすか」(3分)

www.ted.com

 

普通のビジネスパーソンなら、別に新しいことにチャレンジしなくても、毎月定額の給与が保証されます。不満があっても、転職も独立といった具体的なアクションを取らず、同僚に上司や会社の愚痴を言って満足してだけならノーリスクです。

 

逆に具体的に新しいことをやれば、必然的にぶつかったり、仕事が増えたり、新しい責任を負うわけで、そのマイナスを乗り越え、新しいことに挑戦するには「こういうことを成し遂げたい」という健全な「欲」が必要となります。

 

ある意味では、現状に安住しない、良い意味での「エゴイスト」であることが要求されるのです。

京セラ創業者の稲盛さんはこれを「強烈な願望」と表現し、USJを復活させた刀の森岡さんは「欲」と表現したりしますが、本質は同じです。

 

xtrend.nikkei.com

 

youtu.be

 

最後に、名著「ビジョナリーカンパニー」で紹介される”ハリネズミの法則”によれば、下記の3つの条件が重なる事業に、会社のリソースを集中させることが成功のための共通点であるとされます。

 

1)自分が心から情熱的になれること

2)世界一になれること

3)経済的な原動力になるもの

 

まさに「過去に「これはおかしい」と怒りを感じたこと」「この人を助けたい」(or 喜ばせたい)と思ったこと」「「なんでこんなにいいものが世の中に知られていないんだろう」と思うこと」から、モチベーションの源泉を探ることは、自分たちが心から情熱的になれることを探るための質問なのです。