大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

心理的リアクタンスと「もれ聞き効果」

「これをぜひ買ってください」

と他人に強制されそうになると、かえって買いたくなくなるということがよくある。(私なんかはこのパターンだ)

 

人は「自由をうばわれる」「自由を制限される」と直感的に感じると、それに苦痛を感じ、自由を回復するような行動をとる衝動にかられる。これを「心理的リアクタンス」という。

 

したがって、何かを買ってもらおうと思ったら、ユーザーが「自分で選んでいる」「自分で状況をコントロールしている」という体裁をとりつつ、うまくオススメする必要がある。

 

そのための方法の一つは

 

「選択肢を6個程度に絞る」

 

という方法だ。売り手が提示する選択肢が少なすぎる(例えば2つ)と、どうしても「心理的リアクタンス」が発動してしまう。かといって、10個も20個もあると、選択するのに心理的コストがかかりすぎ、選択自体を放棄してしまう、と「選択の科学」の著者であるアイエンガー博士はいう。

 

だから適度に絞って、相手が選びやすい状況を作ってあげる必要があるのだ。

 


シーナアイエンガー 選択しやすくするには


シーナ·アイエンガー - 選択の科学 Sheena Iyengar - The art of choosing

 

心理的リアクタンスを下げる次の方法は「もれ聞き効果」だ。

 

「Aを買ってください」と面と向かって直接説得されそうになると、買い手には心理的リアクタンスが働くが、いわゆる口コミなので「Aっていいらしいよ」(例えば、あの映画って面白いらしいよ)と聞くと、心理的抵抗が少なく、受け入れやすい。

 

お店が「さくら」を用意したり、バンドワゴン効果を狙うのも、心理的リアクタンスを回避するうまい方法だ。

 

ただし、ユーザーが「いずれにしても、必要だからAを買わないとだなんだよなあ」と思っているケースでは、背中をぽんと押して欲しい場合もある。

 

その際は「これは絶対にいいので買って見てね」と売り手に言われた方が、楽な場合もある(「勧められたから買った」というエクスキューズができるからだ)

 

したがって、相手のリアクションを見ながら、どれぐらいの距離感で商品やサービスを進めるのかを考える必要がある。

 

人間の心理は難しいが、面白い。