MBA流 大人の学ぶ力

MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題から何が学べるかを考察します。by 若林計志

交渉の鉄則は相手のニーズを見極めること

北朝鮮で日本人の独立系ジャーナリストが拘束されたというニュースが流れています。概要としては、ヨーロッパ系の旅行代理店のツアーで入国して、そのまま消息が途絶えているようです。

 

シリアでも同様にジャーナリストの安田さんが拘束され、その映像が公開されて波紋を呼んでいます。

責任論はさておき、それぞれのケースで水面下で交渉が行われているのは間違いありません。もちろんシリアにしても、北朝鮮にしても、日本政府にそれほど強いパイプラインがあるとは思えないので、細いルートを手繰ってコンタクトを試みようとしている状態であることが推測されます。

 

この種の交渉において重要なのは、3つのポイントです。

 

1)交渉相手が達成しようとしている「目的」(ニーズ)を見極めること

2)面子を潰さないようにそれを満たすこと

3)合意の中で、こちらのニーズが自動的に満たされる条件を入れること

 

当たり前ですが、相手のニーズが宗教的なもの、精神的なものであれば、それを十分に理解する必要があります。宗教色が強い国に住んだり、仕事をしたことがある人は誰でも知っていますが、宗教が生活の中心にあって、命より優先する国は多くあります。

 

それを十分に理解せずに、冒涜してしまうと、その代償は大きいのです。

 

私自身もかつて紛争地で活動した経験がありますが、知ってか知らずか、現地で横暴に振る舞う外国人を少なからず見かけました。もちろん宗教色がそれほど強くない国であれば、現地の文化にレスペクトを示さない態度も大目に見てもらえることがほとんどですが、それは例外的と考えた方が無難です。

 

宗教的感度の低さが裏目に出た良い事例は911同時多発テロ事件です。この事件の実質的な指導者と言われたアルカイダの司令官であり、サウジの名家出身のビン・ラディンは、アメリカとはアフガン戦争で同盟関係にありました。ところが湾岸戦争を巡って、アメリカがサウジアラビアを実質的に冒涜する行為を行なってしまったがために、くすぶっていた反米感情を強く刺激しました。

 

ウサーマ・ビン・ラーディン - Wikipedia

 

ただし超一流のブレーンを抱えるアメリカ政府が宗教的な無理解によりサウジアラビアを冒涜したかといえば、そこは「?」です。実際のところは、当時のブッシュ大統領が各機関からの情報を軽く見て無視したか、自分の政治的野望を優先してしまったがために、起こってしまったというのがリアリティに近いでしょう。

 

いずれにしても国際交渉においては、宗教的な背景に十分すぎるほど注意を払う必要があります。そして宗教的・文化的背景に十分敬意を示した後で、実施的な金銭的な条件交渉を行うことになります。

 

交渉相手にしても、背景にいる仲間から宗教より金銭を優先した「裏切り者」(売国奴)扱いされ、支持を失う(背中から撃たれる)リスクは犯したくないですから、面子を十分に考えた交渉が必要です。

 

よく知られた話ですが、2002年に小泉首相北朝鮮を訪朝を成功させたのは、戦後補償として同国が要求していたウン兆円を、経済協力金として支払うという交渉が行われたからです。決してモラルから行われた交渉でも、北から積極的に拉致被害問題を解決しようとした結果ではありません。

 

ただし金銭的な交渉の背景が表立ってあまり出てこないのは「北朝鮮の面子を守りたい」という日本政府の意向をメディアが「忖度」したが、実質的にそういう依頼が報道各社に対して行われたからです。

 

現在シリアおよび北朝鮮での日本人拘束問題において現在進行形で行われている交渉でも、表の交渉と裏の交渉が同時並行で行われているはず。

 

良い結果になることを祈るばかりです。