大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

タンスの「不良在庫」? 消費者のボトルネックを解消する

「earth music & ecology」ブランドなどを展開するクロスカンパニー(本社:岡山市)が面白いビジネスを展開する。

メチャカリ」というサービスで、自社ブランドの服を月額5800円で最大3点まで自由に借りられるサービスだ。また60日以上借り続けると自分のものになり、また別のものが借りられる状態になる。(返却された商品は検品してアウトレットで販売)

なぜこういうサービスを始めるかと言えば、若年層の月額アパレル購入金額が、過去7年で約4割も減少している状況に一石投じるという狙いらしい。

ネットのレンタルビデオ屋(ex.TSUTAYAディスカス)のサービスなどで以前からあったような定額レンタル(サブスクリプション)の仕組みだけど、アパレルでどういう結果になるのかは興味深い。

これをボトルネックの観点から考えてみたい。


①製造プロセスがボトルネックの場合

市場のデマンド(需要)が強くて、サプライ(供給)が追いつかない場合、製造業にできる最も有効な策は、ボトルネックを解消する事だ。

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なぜならプロセスの中でボトルネック(能力が一番低いところ)になっているところが、すべての生産能力を決めてしまうからだ。このボトルネックが解消すれば、生産能力が一気に増え、コストが下がり、さらにリードタイム(商品を製造してお店に並ぶまでの時間)を短縮できるので「売り逃し」を低減できる。

さらに「機動性(柔軟性)」がアップするので、消費者の趣向に併せて自在に生産を調整できる。つまり売れ行きが悪くなったなーと思ったら、在庫が溜まる前にすぐに製造を中止できるし、売れてるなーと思ったら製造を増やせる。


②販売がボトルネックの場合

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せっかくいい製品を製造したのにお店で売れなかったらしょうがない。販売を含むマーケティングボトルネックになっている場合は、それを解消する必要がある。最近だとIoTを使ってお店の導線を改善したり、エスノグラフィー的な手法で販売法を改善したりする手など、精度を上げるための様々な方法がある。

またマーケティングを頑張るにしても消費者の購買行動を完璧に予想できないので、先ほどの製造プロセスの機動性を上げる事で、市場に柔軟に対応していける体制を作ることも有効だ。


③消費者の「クローゼット」がボトルネックの場合

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服や靴は無限に多くは要らないし、そんなに多いと置く場所に困る。だったら捨てればいいかもしれないが、まだまだ着られる新しめの服を捨てるのは、なかなか心理的抵抗がある作業だ。また商品の品質がいいので、破れたり色あせたりしたから捨てるという理由も、昔よりは少ないはずだ。

さらに気に入らない服でも、それなりにお金を出して買った事を考えると早々簡単には捨てられない。

以上のような事が重なり、クローゼットには着ないけど捨てられない服(=不良在庫)が溜まり、新規の服を置くスペースが少なくなり、結果的に服が売れなくなるのである。

まさに新しい服を買う際の「ボトルネック」になっている訳だ。

図解すると下記の方が近い。消耗品だったらこうはならないが、アパレルや耐久消費材はどうしてもこうなる。

循環1

とすれば、そもそも服を「買って」もらわずに「借りて」もらうのは良い方法かもしれない。不良在庫を解消して、新規購入へのサイクル/フロー(流れ)を改善できるからだ。

もちろん「借りる」ということが前提になることで「買って」もらうことによる売上が減少するリスクはある。

それについて、クロスカンパニーはこうコメントしている。

「実際テストでサービスを提供したところ、もともと購入頻度の高いユーザーについては月額の平均購入額が上がり、購入頻度が一般的なユーザーについては購入額に変化はなかったということで、「服の好きなユーザーは、服を借りることで、一層購入する」という行動が見えているのだという。」

 (他業界に奪われたシェアを取り戻す——クロスカンパニーがアパレルのレンタルサービス「メチャカリ」を提供する理由

借りる事で、買う動機が増加するというのは面白い!(たしかに「お試し効果」は期待できそう)

さらに考えれば、消費者のクローゼットはいっぱいにならないので打ち止めがないし、メーカーに取っては売上予想が立てやすくなる。顧客のブランドロイヤリティも上がるだろう。

おそらく最も重要なのは個人個人の趣向がトラッキングできること。過去にレンタルした商品データをベースに、別商品や周辺グッズをレコメンドするプッシュ型提案もできる。また年齢が上がってくれば、自社の別ブランドを提案できるチャンスも拡がる。

リスクはあるが、メリットはかなり大きそうだ。だが、どんな商品にも適用できるかは検討の余地がある。

消費者の不良在庫を吐き出させるという意味では、下記はよくある手だ。

「下取りサービスをする」

「モデルチェンジする(古く感じさせる)」

「サポート期限を設ける」

「故障する/壊れる」

 (修理代を新品を買うより高く設定。昔ソニータイマーという都市伝説もあった。)

ウチの冷蔵庫やソファーを買う時に決め手になったのは「下取り」があるかないだった。廃棄したり、まだ使えそうなもを捨てるのは抵抗感があるので、リユースされると思えば少し気が楽なのだ。

iPhoneなどの携帯電話端末下取りをすれば、海外で高値で売れたりするからメーカーとしては一石二鳥)

レンタル(サブスクリプション)や下取りモデルは、今度工夫次第でいろいろできそうだ。

では、どんなビジネスに応用可能なのだろうか。

まず自動車は有望分野だろう。たとえば、中古車販売大手のカリバーが、定額料金で好きな自動車に毎月乗り換える新サービスを2016年春に開始予定だ。

その他はどうだろうか?

定額料金で好みの車に毎月乗り換える…ガリバーが来春サービス開始へ

・宝石は?

 (腐らないので定額レンタルモデルはいけるかも。ただし単価が高いので買取保証の方がベター?)

ユニクロのようなブランドや高級ブランドでうまくいく?

・電化製品のレンタルは?

 (ダイソンをレンタルするなど)

・マンション/住宅は?(試し住みしてもらっては?)

と興味は尽きない。タクシーの「Uber」,民泊の「AirB&B」のような所有しないで共有するシェアリングエコノミー型ビジネスとの接点も気になる。

何かブレークスルーのヒントがありそうな気がする。

余談になるけど「断捨離」やこんまりさんのベストセラー「かたずけ本」は、消費者が自ら積極的に滞留のボトルネックを解消するための動きとも言えるし、消費者に「捨てていいんだよ」というエクスキューズ(言い訳)を与えてくれる本だとも言える。