大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

公益資本主義

先週、「公益資本主義」について考える東京円卓会議にオーディエンスとして出席してきました。主催はアライアンスフォーラムの原丈人さん。シリコンバレーベンチャーキャピタル(VC)として成功した方で、社会貢献とビジネスを両立している素晴らしい人です。

編集工学の松岡正剛さんや、慶應の矢作教授も登場しており濃い内容でした。

基本的な問題認識は、金融資本主義がそろそろ限界なのではないか、ということ。

特に[ROE](株主資本利益率)のアップを経営目標にすると、見た目のROEが高くしようとします。そのために長期的な研究開発費を減らしたり、収益性の悪い部門を切り売りしたりします。

ROE = 当期純利益 / 株主資本 × 100

特にファンドから経営者が送り込まれていたりすると、どうして任期中に成果を上げようとするので、この傾向が強くなる。(ファンドは期限内に投資家に利益を返さねばならないので、仕方がないのですが。)

もちろん、収益の悪い事業を辞めるという事ではないのですが、極端に遣り過ぎると弊害の方が多くなります。

例えば、素材などの研究分野は10−20年後に化けるかもしれません。東レ炭素繊維なんかは儲かるようになるまでに50年かかったそうですが、そういう分野が短期的な利益追求の前では、なかなか正当化されないのです。

そしてこういう株主至上主義の流れは「グローバル化」という名目の元で日本にもやってきます。そこで、アメリカがハマってしまった轍を踏まないようにしようというのが「公益資本主義」の基本的な主張です。

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アメリカではすでに「株式公開して調達する資金」より「自社株買いする資金」の方が多くなっており、株主に内部留保をどんどん吐き出させるカタチになっています。

原理的には、株価が割安のときに自社株買いするのは戦略として正しいのですが、実際には単にROEを上げて株価をアップさせ、株主を喜ばせているだけという面もあります。そして株主は短期保有者(momentum Player)が多数を占めるのです。またストックオプションは、基本的に在任中にしか行使できないので、経営陣が退任前に自社株買いを行って、株価を上げる事もあります。

こういう状態に一石を投じようと言う「公益資本主義」に僕は大変注目しています。またこの考え方に賛同する企業経営者も多いのも希望が持てます。

先週、原さんがBSフジに登場した映像がダイジェスト動画になってました。 http://www.bsfuji.tv/primenews/movie/index.html?d121109_0