大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

起業とマネジメントの矛盾とバランス

「日本復活には新しい産業が必要だ!だから起業家がもっと必要だ」

「起業しやすい社会環境を整備しなければならない」

など、起業をプッシュする声があちこちから聞こえてきます。確かにGoogle, Facebookなどアメリカでどんどん新しい企業が生まれているのを見れば、そういう声がでてくるのは当然です。

ただそこには、

なぜ既存の企業から、新規事業がでないのか

という視点がすっぽり抜け落ちています。

ザッカーバーグや、ブリン/ペイジのように、どの組織にも所属せず、いきなり起業する人を増やそうとするなら話は分かりやすいのですが、大体の場合は起業前に関連する業界のどこかに所属しており、新しいアイデアがその会社で実現できずに、起業しているのです。

しかも実際に会社を辞めて起業する人は少数派で、ほとんどはアイデアベースで消えていきます。もちろん諦められる程度のアイデアであれば消えて当然とも言えますが、その中には磨けば光る原石もあるはずです。

もしそうだとするなら、ミスマネジメントを改善することが解決すべき問題であり、脱サラ起業が多い社会が一概にいいとも言えないのです。

実際「社内からイノベーションが出てこない」という声はどこでも聞きますが、もし社内に新しいアイデアを実行したくてもできず、不満を持っている人が多くいるなら、

・マネジメントを勉強して社内を変えるべく努力すべきなのか、

・外に飛び出すべきなのか

という当然の問いが出てきます。

個人にとっても、自分が働いている会社の問題点を発見したとき

・それを変えようとあがいてみるのか

・時間をムダにせず、新天地を目指すのか

は迷うところです。

実際、これは「マネジメント教育」と「起業家教育」という(ある意味で矛盾した)テーマの長年関わりながら、問い続けてきたことであり、正解はないので、結論は自分で出すしかありません。

なんとなくブームに乗って起業したものの、実際に成功する人は一握りですし、失敗したからと言って、勧めてくれた人が責任を取ってくれる訳でもありません(逆はあるでしょうけど)。現実はシビアです。

ただ、もし将来的に会社に大きな利益をもたらすはずのエース級の社員が、起業のために大手企業からどんどん辞めているのだとしたら、その動きを奨励する事は社会的によいことなのでしょうか?

少なくとも経営者やマネジメントを志すものとしては、何か積極的な手を打つべきであって、手放しで起業を応援している場合ではないはずです。(自社の優秀な人材がどんどん流出してもいいなら別ですが。)

この問題を解決できない限り、起業する人が増えたとしても、それらの会社が成長する度にどんどん人が抜け、また振り出しに戻るという永遠のサイクルが繰り返されるはずです。

▼「“ヤメソニー”が語り継ぐものづくりの魂」

http://diamond.jp/category/s-yamesony

▼日本の起業率が上がらない理由

http://futoimegane.hatenablog.com/entry/20140415/1397540751?utm_content=bufferba7dd&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer