大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

コダックがデジカメに屈した訳(倒産した本当の理由)

Harvard Business Reviewの記事で、

イノベーションはアイデアの問題ではなく、気づきの問題である。コダックの研究所は、最初のデジタルカメラを1975年に開発していたが、製品化を進めなかった。」

というコラムを読みました。

足りないのはアイデアではなく「気づく仕組み」

2014年10月21日 デイビッド・バーカス  オーラル・ロバーツ大学の助教授。経営学を担当。

この記事のように「コダックはデジカメの破壊力に気づかなかったら潰れた」とまことしやかに言われますが、その解釈はどうも間違っているようです。

というのも、この本を読んだからです。

「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)
(2013/10/17)
楡 周平

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著者はコダックが破綻するまで15年に渡り、社員として内部からコダックという組織を見ていた人。

著者によれば、コダックの社員の中には、デジカメが脅威になることを予見してした人は多数いました。特に経営幹部の中には危機感を募らせ、将来を見越してデジカメ事業に本格的に取り組もうとした人もいたのですが、株主の多くはそれを望みませんでした。というのも、現状で儲かっているフィルム事業を潰すような戦略は利益相反であると考えたからです。

なので、デジカメを推進した経営陣は無能の烙印を押して交代させられたのでした。

ただしコダックが傾きはじめた瞬間、投資家は一斉に資金を引き上げてしまい、同社はゲームオーバーになってしまったというのが実情。

つまり「気づかなかった」という単純な問題でなく、「動くに動けなかった」とうのがリアリティに近いんですね。


神戸大などで教鞭をとられた加護野先生の解説も参考になります。

「なぜコダックは破綻し、富士フイルムは好調なのか」

コダックは、企業の多角化に否定的な投資家の意向を大切にした

PRESIDENT 2012年4月2日号