大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

アマゾンで1円の古本がある理由

アマゾンで古本が1円とか10円で販売されているのをたまに見かける。

「送料250円で送ったら損じゃないの」

と思ってしまうが、そうではない。ではどうやって儲けているのか?

まずアマゾンで古本を買うと、80円のメール便で送ってることがあるので、単純にいって

(固定の送料:250円)−(実際の送料:80円)=170円

は儲けとなる。

もちろん梱包材やアマゾンへの手数料(100円+販売額の15%)もいるので、実質的には約50円ぐらい儲かる。

では、本をどこで仕入れているのかといえば、ネットの古本屋とか、ブックオフとかそういうところで買っている。そこで50円以下で買えば事がいい。

もう少し詳しく見てみよう。

A市場で1万円のものが、B市場では5000円で売っている事はよくある。

たとえば日本で10万円するバーバリーのコートが、アメリカでは6万円で売っているような例だ。

そこで、並行輸入会社をつくってこの差分を儲ける事を「アービトラージ」という。(もちろん手数料はかかるから全部は儲からない。)

中古車のガリバーを初め、バイクなど買取販売専門の業者はほとんどこのアービトラージを使っている。自社で展示販売しないで、買い取ったモノをそのまま業者用のオークション市場に流して差分をとるのだ。

ガリバーのビジネスモデル

http://www.glv.co.jp/company/info/business.html

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アマゾンの1円本も基本的には同じロジックを使っている。

大手の古本チェーンは、業務を単純化するために買い取った本の販売価格を一律にしているケースが多い。発売から1年以内だったら定価の半額、それを超えたら300円、一定期間売れなければ100円みたいな感じだ。

でもアマゾンで中古本を見ていると、数年経っても人気の本は定価の80%ぐらいで売っている本がざらにある。その差分をとればいいのである。単価は安くても、数は多くなれば結構な儲けるになる。

アマゾン側からすれば、安い価格で販売するアービトラージ業者が出てきてマーケットが盛り上がるのであればウェルカムなのだろうし、古本が一冊売れるごとに100円の手数料が取れる。

(販売業者にプロマーチャントという仕組みに登録してもらえれば、月固定で5000円程儲かる)

でもそんなに儲かるのだったら、古本界のガリバーみたいな会社がでてきて、ごっそりアービトラージしてしまえばいいようなものだ。例えばガリバーの例でも、オークション運営会社自体が中古車買い取りをはじめたりして、入り乱れているように見える。ちょうどAmazon自体が買取をやっているようなものだ。

ということで、今後アマゾンが自社で買取を始めるかどうかは気になる点。顧客の購買履歴や、古本市場のデータを押さえているのだから、

「あなたが過去に買った本を●●円で買い取りますよ」

というメッセージを流せば、結構な商売になる気がする。

本当に儲けたい個人は、そういう業者に任せるより、自分で手持ちの本の販売価格を見て、現在の仕組みで売る方がいいのだと思うが、そういう手間が面倒は人もいるはずだ。(だからこそ、みんなブックオフに持っていくのだから)

どちらにしても、アービトラージ会社が切磋琢磨する事により、儲けられる幅が確実に狭まる。

これが大きな意味(マクロ経済)でいえば「市場の最適化」ということになる。