大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

ZOOMのポテンシャルを活かすバーチャル研修&スクールの設計

コロナの影響で、私の周りでも、社員研修や講演会などが軒並み延期になっていますが、その代替としてZOOMを使ったセミナーがにわかに脚光を浴びています。

 

中身は、私が責任者をやっていたオンラインMBAの「バーチャルクラス」で、10年以上前から先生や学生の皆さんと何百回もやってきたことと同じです。

 

違うところといえば、以前はAdobe ConnectやMacromedia Breeze, CISCO WebEXを使う必要があり、使用料が結構高く、しかもユーザーのネット回線が遅く、PCのスペックも低かったので、高いハードルがあったことぐらい。

 

ただZOOMなどの登場によって無料or格安で、誰でも一気にバーチャル授業が受講できる環境になったのは素晴らしいことです。またそれに加えて、

 

「やっぱり授業は生だよね」

 

とデフォルトで思いこんでいた方々が、「バーチャルでも全然いいじゃん」という思考にアップデートされたのは、本当に良いことだと思います。

 

ただ、システムのポテンシャルを引き出しているかといえばまだまだ。PCの前で講師が画面共有でパワポのスライドをめくりながら、ひたすら喋るパターンも多いようです。

 

もちろん、デジタルシフト(DX)への”第一歩”としてはそれでOKなのですが、 その先を考えると、ほとんど参加者とインタラクションしないのであれば、同時アクセスさせてライブでやる必然性がないことがわかります。

 

むしろ事前録画した動画でEラーニングを行う方がじっくり考える時間があってベターなこともあります。(合格率がシビアに問われる東進ハイスクールなどが、ライブ授業と、オンデマンド動画授業を使い分けているのが良い例です)

 

つまり、何でもかんでもLIVEが優れているわけではないのです。最初は「生中継」っていうこと自体が嬉しいという気持ちはよーくわかりますが、しばらくしたら落ち着いて

「手段」と「目的」

をじっくり考えることが重要です。

 

講義の方法をリアルからバーチャルに切り替えるのは、あくまで「手段」の話であって「目的」ではないからです。 

 

何の世界でも同じですが、新しいテクノロジーが認知され始めた頃は、「それを使えば何でもできる」という大きな勘違いから過度な期待が暴走します。そして、ほどなくピークアウトして、今度は過度な「批判(落胆)」に変わります。(ハイプサイクルが有名ですね)

 

www.gartner.com

したがって、流行りに振り回されないことが重要です。 

 

では、理想的なバーチャルクラスとは何で、それをどう実現すれば良いか。 

下記のハーバードビジネススクールの動画(2015年)をご覧ください。

 

www.youtube.com

  

PCの前でひたすら喋るZOOM授業とはかなり違い、リアルに近いインタラクティブ性を実現しています。

 

でも、それは金をあるからできるんでしょ・・と思いませんでした?

 

はい。ちょっと前までは確かにそうでした。

 

ただ、ここまで金をかけなくても、ZOOMでほぼ同じやり方(というより、もっと進んでいる?)を再現しているのが小中学生のカリスマ講師の宝槻先生@探求学舎です。

 

youtu.be

 

うちの子供なんか毎日のようにライブ授業(by ZOOM Webinar/YouTubeLive)に参加してます。

 

最近は機材のコンパクト化&低価格が急激に進んでいて、クロマキー合成デバイス例えば、Blackmagic Design ATEM/Live Wedge/iO Data Live Ariser)などを全部揃えても大して高くないので、やる気とノウハウさえあれば、同じようなインフラ環境を実現できます。

 

www.blackmagicdesign.com

 


YouTubeライブやるならこれ買っとけば間違いない ブラックマジック ATEM Mini【動チェク!】

 

www.iodata.jp

 


Cerevo LiveWedgeがあれば最強の生放送YouTuberになれる!?【動チェク!】

 

あとは一眼レフ(例えばPanasonic GH5)をPCカメラ代わりに使ってクオリティを上げることぐらいで、結局は中身の勝負になります。

 

ちなみに探求学舎は、三鷹のオリジナルスタジオと、パンダスタジオの両方をお使いの様子ですね。

www.pandastudio.tv


ただし、このようなビデオ会議システムを使った同期型学習(Synchronous Learning)には、どうしても時間等の制約が付きまとうので、スクールのような場所での継続学習や学習効果、フレキシビリティを考えるなら、LMSと呼ばれる非同期型学習(Asynchronous Learning)のプラットフォームとの組み合わせが必要になります。

ただ既存のLMSは、非同期型のインタラクションを行うSocial Learning機能がなかなかカバーできないので、FlowPADのような専用システムとの組み合わせると、ベストな環境構築が可能になります。

 

www.f-pad.com

 

何を同時に学んで、何を同時に学ばなくて良いのか。これを切り分けることが肝です。

 

コロナが終わって、以前のような教室型の集合・学校教育に戻るのも一手ですが、学習効果の観点からも、今回を契機として一気にDXシフトするのが正解だと個人的には考えています。

 

余談

「LIVE」はリアル研修に近い認知のされ方をする場合が多いので、当面は「動画授業」より単価(FEE)が高く取れるというメリットがあります。

 

しばらくは、この状況が続くかもしれませんが、今後数年かけて、LIVEか動画に関係なく、学習体験や本来の目的である学習効果(アウトプット)が重視される様になるはずです。

 

追記

上記のコラムをご覧いただいたITジャーナリストの湯川鶴章さんにビデオ取材いただきました。


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