最近、ソフトバンクのペッパー君が、ユーザーに飽きられて首をうなだれている切ない姿をたまに見かけます。マーケティング的に見れば、人の形をしている分だけ、
「人間と同じぐらい会話ができるんだろう」
という期待値を過剰に高めてしまったがために、そこまで実力がないことがわかって、みんな一気に冷めてしまったという状態です。世界最先端のクラウドAIに繋がるGoogle HomeやAmazon Echo、IBMのワトソンにしてもまだまだ
「自然に話せる」
には程遠いレベルにあります。
したがって、グーグルやアマゾンが、デバイスを人型に似せないで、無機質な単なるスピーカーの形状にして発売したことは、
「消費者の期待値をそこまで上げない」
ことで「がっかり度」を大きくしないための戦略として極めて正しいと思います。
一方、LINEのスマートスピーカー「クローバフレンズ」がオリジナルキャラ「ブラウン」「サリー」をモチーフにして”可愛さ”を前面に出しているのはかなり賢いと思います。
なぜなら、喋りかけているAIが、かわいいクマさんやアヒルさんだとわかれば、多少トンチンカンな返答をしてきても
「まあ、クマさんだからしょうがないよね」
と、なぜか笑って許せてしまうからです。つまり、キャラによってユーザーの期待値を自然に下げさせることが容易なのです。
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□AIにキャラを持たせる工夫
もちろん、ペッパーもそこは十分意識して開発されており、Google HomeやApple Siriが比較的無感情・無機質な応対をするのに比べ、ペッパーは「皮肉屋」のキャラを演じて自虐ネタを言ったりします。
ペッパー開発者の林さんも、メディアのインタビューで
「キャラを持たせた方が、人間のリアクションを予想しやすく
自然な会話に誘導しやすい」
と答えています。
ただ、やっぱり形状が人型である限りは、ユーザーの期待値を下げるのに限界があるので、ペッパーのポジショニングには難しさが付きまといます。
もちろんペッパーはクラウドAIと繋がっているので、今後バックグランドのAIが賢くなれば、それなりに消費者の期待値に近づいてくるはず。そのスピードを上げられるかが、ペッパー君がスクラップ工場行きになるかどうかの運命を決めそうです。
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AIにキャラを持たせる試みは、マイクロソフトの「りんなちゃん」をはじめ、各社が取り組み始めています。
またビデオゲームの「龍が如く」が、本物の俳優・女優をモチーフにすることで、完全な創作キャラよりもリアリティを出すのに成功していることも、同じ線状にある話です。
▼そっくり!【龍が如く】の登場人物がモデルとなった芸能人に似すぎている
元をたどれば、ドラえもんでも鉄腕アトムでも、日本のロボットはキャラを持っていたわけで、案外キャラ付きAIが本格的に社会に浸透し始めると、最も早く普及するのは日本かもしれません。
AI=アンドロイド(レプリカントと呼ぶ)と人間の混じり合った世界をいち早く予見し、生命モラルを含めた深遠な問題を描いたのが1982年公開の映画『ブレードランナー』(原題:Blade Runner)です。
今年10月に公開された
「ブレードランナー 2049」
は、人間の生命に関わるさらに踏み込んだ問題を提起していますが、
もともとレプリカントが「人間らしくなる=キャラを持つ」
ための工夫として考案されたのが、
「誰かの記憶を埋め込む」
いう手法でした。
ただ、レプリカント自身が自分の記憶が自分の経験したものなのか、外から埋め込まれたものなのかわからないために、アイデンティティクライシスに陥り、人間と同じように、というより人間以上に人間らしく苦悩します。
ただ「機械学習」が進むと、AIは本当に自律的に”学ぶ”ようになるため、より人間的になり、人間が記憶を埋め込まなくてもアイデンティを持つようになるかも知れません。
その時は、Googleは今のような単なるスマホOSではなく、まさに本物そっくりの人型ロボット
「アンドロイド」
を発売することになるでしょう。