大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

中東のシリコンバレー テルアビブの実力とイスラエルの現在

2023年2月末に、イスラエルに行ってきました。死海文書を勉強していた学生時代、ヨルダン川西岸地区(WEST bank)占領地区の難民キャンプ等で紛争解決の仕事をしていたNGO時代に続き、20年ぶりのイスラエルですが、今回はビジネスがメインです。

 

Tel Aviv に来て、まず思うのはマツダ車がかなり多いこと。トヨタが多いのは感覚的に分かりますが、街中でCX-5をはじめとしたマツダカーの存在感があります。(下記は道沿いの駐車場)

マツダイスラエル

ビジネス統計を見ると2021年のイスラエルマツダの販売ランキングは5位ですが、Bクラスというセグメントでは2022年にMazda2がトップだったのこと。


EVで日本はこれから厳しいのではないかと言われていますが、下手なEVよりトータルでパフォーマンスの良いエンジンカーの需要は一定数あるので、世界は欧米ほどは極端にEVシフトしないだろうと思います。


また物価が高く(というか日本が安すぎ)、ちょっとした外食ですぐに4000-5000円するので、結構躊躇してしまいますが、逆に言えば、日本国内やアジアで生産した日本車を中東で売れば、輸出的には有利なので、商売的にはおいしそうです。


ちなみにYmobile!のローミングサービスでそのまま現地で携帯が使えるので、ヤマト宅急便の再配達やら、なんやらと普通に電話がかかってきます。ある意味、世界は狭くなっています。

 

また経済発展が進めばグローバルレベルで趣向が似てきますが、経済都市テルアビブも御多分に洩れず、東京と同じようなところが多いのに気づきます。スーパーに行けば、見たことがあるようなものを売っていますし、基本的に食事も美味しい。確かに一部の店は、独特の香辛料が香る”The中東”って感じですが、そのほかは共通点の方が多く見えます。

OnePeace@Israel


その一方で、周辺国との紛争は続いているので若者の兵役もしっかりあり、インテリジェンス部隊出身者が兵役後にテックカンパニーをどんどん起業します。

 

下記写真は投資家や関係者を集めたテルアビブのテックカンパニーのイベントですが、イスラエルのアドバンテージの一つは、ビジネスレベルの人は、ほぼ100%英語が喋れることです。これによって世界から優秀な人材を集められますし、クラウドサービスなら、そのままグローバルにスケールできます。

Start up Meetup @Tel Aviv

最近のGoogleページ翻訳は結構賢くて、Chromeのボタンを押すだけで、日本語ページもちゃんと英語に訳しますが、それでもカスタマーサービスなどは、まだ言語の壁があります。もちろんDeepLなどももだいぶ賢くなっていますし、GPT、NotionやSlackも進化するので、10年ぐらい経ったら、完全に言語の壁は無くなって、ボーダーレスなDAOみたいなのがIT企業の主流になる・・・かは分かりませんが。

 

ただ、こちら在住の方の話だと、イスラエルの知性は2極化していて、頭がいい人は世界トップレベルで賢く、こういう人等がテックを牽引する一方、全国民の平均値を取ると、そんなに高くないとのこと。ただ知性のインジケーターとして、ユダヤ教正統派などの敬虔な宗教的生活を送っている方々の知性を何と捉えるという問題はあります。

 

いずれにしろ、あちこち道路やオフィスビルの工事が行われていて、なんだかパワーが溢れている感じがする街になっています。

 

⚫︎エルサレム(Jerusalem)

さて、現在ではテルアビブとエルサレム間には高速鉄道が通っており、40分ほどなので、東京で言えば、中央線で三鷹ー東京駅に移動するぐらいの感覚です。

 

約20年ぶりに訪れるエルサレムの旧市街は、以前よりずっと綺麗になっていて、こんなジョークTシャツも普通に売っています。

Old city

T-shirt shop@Jerusalem

経済の中心がテルアビブなら、イスラエル政治の中心であるエルサレムは、今年1月に右派ネタニヤフが首相に就任し(6回目)、極右政党の「宗教シオニズム」、「ユダヤの力」などが政権に加わっています。そこで今後、宗教対立が悪化することが懸念されています。(ネタニヤフと言えば、20年前に読んだ「テロリズムとはこう戦え」(1997刊 ネタニヤフ著 落合信彦訳)がすぐに思い浮かびます。)

 

イスラエル、ネタニヤフ氏首相へ 「最も右寄り」政権に

www.nikkei.com

 

例えば、イスラエルではネタニヤフ政権が司法制度改革案(国会(クネセト)が最高裁の判断を覆せるようにする内容)について、三権分立を揺るがす危険な動きとして全国で激しい反対運動が起こっています。

 

そんなネタニヤフの支持基盤は、敬虔なユダヤ教正統派や占領地入植者を含む右派勢力。日本でも、北朝鮮から危機が大きくなれば右派の声が強くなるのと同じで、周りを”敵国”に囲まれるイスラエルにとって、政治も国防のためのサイバーセキュリティを中心に発展したテックカンパニーも、宗教もぜんぶつながっているのです。

現地在住の日本人商社マンに聞いた話では、ウルトラオーソドックスと呼ばれる宗教的な生活をしているユダヤ教徒達は、基本的に経済活動に従事しておらず、政府から補助金を受けて生活しています。

 

そうなれば、自然に右派政権を支持することになります。

 

逆にその補助金の原資を作り出しているテルアビブのビジネスパーソンから言えば、右派の動きは、自分たちが納めた税金をビジネスの発展とは逆の方向に使う訳ですから、ネタニヤフの政策は言語道断です。

 

元々、ネタニヤフのMITスローンのMBA卒&BCG(ボスコン)卒業生でもあるので、経済のことはわかっており、地頭はいいのかとは思いますが、いろいろな要素が絡み合うこの地域では、一刀両断的のような解決策はなく、常にシステム思考的な問題解決が必要とされます。

 

個人的には、世界を席巻するイスラエルのテックカンパニーの中から、将来紛争問題を解決するイノベーションが出てくるのを期待したいところです。

ChatGPTの先に見えるAIが教える教室

ChatGPTが面白すぎるので、色々いじっていたら、約10年前のある苦い経験を思い出した。

 

2010年某日、私は当時勤めていた会社の役員達(社長と役員3名)を前に熱くプレゼンを行っていた。それは、当時責任者だったオンラインMBAで使用していた対話型学習プラットフォームを、画期的に進化させるアイデアだった。

ーー

この「オンライン学習プラットフォーム」は当時からかなり画期的で、単なる学習管理のためのLMS(Learning Management System)にとどまらず、学生たちが毎日のようにユニクロ、アマゾンといった企業戦略について、いろいろな意見を書き込み、熱い議論を交わしていた。

 

もちろん講師もそのクラス議論に参加し、独自の知見を書き込みながらファシリテーションを行い、全員に気づきを与えていく対面教室以上の「サイバー教室」となっていた。

 

私はこの「オンライン学習プラットフォーム」の開発段階から関わり、10年以上統括責任者として、全クラスをオブザーブする立場にあり、その経験を通じてクラスディスカッションには一定のパターンがあることに気づいた。

 

例えば「経営戦略」のクラスで、基本的なフレームワークについて学んだ後、ユニクロのグローバル戦略についてディスカッションする場合、学生から出される論点のパターンは、多くて10個程度に集約される。

 

講師はその議論の流れをうまく読んでファシリしながら、学生が陥りがちな「盲点」を指摘し、AHA!という気づきを与える訳だ。

 

ただ、MBA一年目で習う基礎科目は、どうしてもインプットが多く、内容がパターン化しやすくなる。もちろん初めての学生にはフレッシュなのだが、講師のほうは、何年も同じ内容を教えているので、どうしてもマンネリ化したり、飽きてしまう。

 

そこで一つの解決策を思いついた。

オンライン上のディスカッションには、学生達と先生がやりとりしたログ(履歴)データがすべて残っている。そこで膨大なログをすべてエクセルに落とし、関連項目ごとに整理した。

 

そして、学生が投稿した質問や意見に応じて、過去の講師による返信投稿から、すばやく関連したものを見つけ出し、文脈によって多少編集した上で、過去の発言として引用投稿するようにしたのだ。

 

いってみれば「人間チャットボット」のようなものだと言える。

 

結果は大成功。

学生はまさに自分の発言に対して、講師の卓越した知見にダイレクトに触れることができるようになった。これにより感覚値としては80%ぐらいの発言や質問は過去ログでカバーできるようになり、満足度もアップ。また講師も新しい知見の開発や議論に集中できるようになり、まさにWin-Winとなった訳である。

 

私はこの経験をベースに、

 

1)学生の投稿をチェックする
2)それをトリガーとして、過去の関連投稿から類似のものをサーチする
3)それを編集してレスする

 

という一連のプロセスを自動化できれば、講師の仕事の大部分はオートパイロットにできると考えるようになった。その実装に向けて「研究チームを作らせて欲しい」と役員に直談判した訳である。

 

結果は・・・大失敗だった。

 

途中から議論が熱を帯びてきたが、同席していた役員は一言も喋ることなく、私と社長による一対一の激しいやり取りが1時間近く続いたが、提案したコンセプトの価値は理解されることなく、非現実なアイデアとしてお蔵入りとなった。

 

何人かの同僚は飲みの場でなぐさめてくれたが「完全敗北」と言ってよかった。

 

今になって考えれば、当時の提案は、短時間で理解してもらうには、ラディカルかつ最先端すぎたのかも知れない。そもそも当時は実用レベルでAIの存在自体は一般的ではなかったし、ましてやAIチャットbotのような存在もほぼ認知されていなかったのだ。

 

また「先生がいらなくなる」というメッセージも間接的に含んでいたので、そこは「先生が新しい知識の開発に専念できる」といった、上手い言い回しもできただろうと思う。(当時は本当に純朴な青年すぎてストレートにものを言いすぎた。)

 

さて、それから10年の時が流れて2022年。

ChatGPTは、当時私が考えたアイデアを早期に実現できる可能性を示し始めた。いまでもうまく回答を引き出す「プロントデザイン」をしっかりやってあげれば、かなりナチュラルな会話ができるようになっている。

 

ただ面白いのはここから。いまのChatGPTはオールラウンダーな物知り、悪く言えば没個性な対話ロボットだ。だが、これから数年で、エンベッティングテクノロジーが進化して来ることで、ChatGPTの「個性化」が確実に進む。

 

ある種の得意分野や”人格”っぽいものを持つようになる。

 

ビデオゲームの「龍が如く」シリーズが、哀川翔などの個性派俳優と提携して、画面上のキャラに個性をもたせたことで、一気にリアリティがアップさせることに成功したが、同じようなことがChatGPTでも再現されるというわけだ。

 

 

例えばマーケティングの神様、コトラーの著書数冊を、丸々教師データとしてChatGPTに学ばせることで、ChatGPTがコトラー先生に成り代わって会話する「デジタルコトラー先生」になる。そういう未来がすでに見えているのである。

 

それをソフトバンクのペッパーのような人型ロボットに実装すれば、よりリアルになるはずだ。

 

ただ、早い遅いはあるかも知れないが、方向性が正しければ似たようなアイデアはいつか誰かが思いつく。ジョブズが発明しなくても、スマホいづれ誰かが作ったに違いないが、そのアイデアを実際に形にして実装した人が一番偉い

 

そしてそれをみて多くの人が言う。「自分もはじめからそのアイデアを持っていたのだ」と。

 

あと10年経ったら、教育とテクノロジーを組み合わせた「Edtech」の景色は今とは全く違っているに違いない。

 

個人的には映画「マトリックス」のように知識をダウンロードするような世界に近づき、「教育」という概念そのものが揺らぐと思うが、それを聞いたおじさん、おばさん達はきっと言うだろう。

 

「そんなものは実現性がない」と。

 

そして、その予想ははかなりの確率で外れる。その時、彼らは必ず言うはずだ。「元々こういう時代が来ると私は思っていた」と。

 

どこの世界でも同じだが、過去に否定されたアイデアが、数年後にしれっとパクられるケースは無限にある。私も何度もそんなシーンに直面したが「ごめん、あの時の判断間違っていた」と言われたことは一度とない。ただ世の中、そんなものだ。

 

結論としては、ビジョンを持ったら、人生の貴重な時間とエネルギーを、そのビジョンを理解できない人たちを一生懸命に説得したり、教育することに使うより、同志を見つけて新しい道をしなやかに踏み出し、実装したほうが早い。なぜなら、世界にはさらに先を考えている人もたくさんいるのだから。

 

いずれにしても、今になってみれば、この一件は、直属のボスでもあり、業界の大御所でもあった相手にサシの状態で真っ向から持論をぶつけて議論した貴重な経験になった。

 

また、これがきっかけになって、新しい道を踏み出し、現在の「FlowPAD」開発運営につながることになったのだから、結局正解だったのだろうと思う。

 

ただ面白いことに、その後、社長は私に一目置いてくれるようになり、会議で「若林はどう思う?」と、ことあるごとに意見を求めらるようになった。

 

当時の経営会議は、役員を筆頭に、社長のありがたい御信託を拝聴するような雰囲気で「何が意見のある人は?」と言われても「シーン」としていたから、外資系コンサル代表だった社長にとって、空気を読まずにいろいろ発言する私は、割と貴重な存在だったらしい。

 

近い将来「シーン」とした会議をするぐらいなら、必ずレスをくれるChatGPT相手のディスカッションの方が生産的だと考えられる時が来るかも知れない。

 

 

Final Cut Pro で読み込んだキャプション(srt)を動画として書き出す

世の中的にはAdobe Premiere Proに先を越されている感があるApple Final Cut Pro (FCP X)だが、ちょこっとした編集には大変楽なので、2つを並行して使っている。

 

ただ、多少技術的なことになると、FCPはネット上の情報が圧倒的に少ない。今回がハマったのは、Srt (字幕ファイル)をFCPに読み込めたのは良いが、映像に書き出せないという問題。

 

結論的には、書き出し時に「ロール」→「キャプション」を選び、「キャプションを焼き込む」を選ぶと、ちゃんと画面上に字幕が常時表示される。

 

この方法を見つけるのに20分近くかかった。。。。

キャプション

 

「敵を味方にする」(マイナスをプラスにする)ビジネス発想法

ビジネスモデルを着想するときの方法で、最近面白いなあと思うは「敵を味方にする」発想。


例えば「眠気」は運転の大敵なので、自動車会社はこぞって、いかにドライバーを眠らせないかを研究している。逆に言えば、「どうすると眠くなるか」について膨大な知見を蓄積しているわけで、それをビジネス化したのが、トヨタの”すぐに眠くなるマシン”「トトネ」だ。


同じパターンで、ビール会社にとって乳酸菌は、ビールの質を下げ、マズくする大敵。だから「敵を知り」とばかり、乳酸菌を徹底的に研究した結果、KIRINはプラズマ乳酸菌の商業化に成功し、めちゃくちゃ儲かっている。


 これらのように、本業にとって本来マイナスや副作用を徹底的に研究していて、そこに価値を見出し、まだビジネスモデル化できていないタネを見つけられたら結構すごそうだ。

 

マイナスをプラスにする発想法。

 

・・と考えて「オンライン学習」においてそれが何に当たるかを思考中。

 

toyotatimes.jp

グローバルに飛び出す第一歩は「自己紹介」(無料で台本を作成する3ステップ)

曲がりなりにも、グローバルビジネスやグローバル教育に長年関わってきて、どうすれば簡単に最初の第一歩を踏み出せるかなと考えた時、

 

英語の自己紹介

 

というのは割と有効な一手かなと思います。

 

うまく英語で自己紹介でき、相手がこちらに興味さえ持ってくれれば、そんなにうまくない英語でも、その後のコミュニケーションは結構うまくいったりします。

 

これを痛感したのが、5−6年前に、知り合いの会社経由で日本企業のシリコンバレー視察ツアーのアテンドをした時のことです。会社の経費でやってきた10名程度のパーティーが、現地のITスタートアップ数社を訪問するのですが、(当たり前ですが)まず訪問時に、先方もこちらも各2-3分で簡単な自己紹介をします。

 

ところが・・・元々英語が得意な数人の参加者を除いて、日本人視察チームの誰一人、まともな自己紹介ができないのです。「自分が**の担当して、どこそこの会社で働いていて、今回の視察の目的は何です。御社の**に興味があります」という説明がほとんどできない。というかまったく用意してきていない。ひどい場合は、相手の会社は何をしている会社なのかもよくわかっていない。(ホームページを見ればわかるのに)まさに、会社の経費で”観光ツアー”に来ているのです。

 

先方も忙しい時間をとって視察を受けれてくれているのは、日本企業とパートナーシップを組んでビジネス展開できるとか、出資を受けられるチャンスがあるとか、そういう意図があるのですが、全く話にならないレベルなのです。

 

結局、視察の後に、訪問したいくつかの先方の担当者からやんわりと「メリットがないから来年はお断りする」という連絡が来た時には、そうだろうなあという感じでした。(ちなみに韓国や中国の同じような視察メンバーはアグレッシブで、視察後にパートナーシップ契約をしたとか、そういう話が結構あり、視察受け入れは継続。)

 

その後、もう一度「シリコンバレー視察ツアーを手伝ってくれ」という話があったので、その際は同じ轍を踏まないように、任意ですが一人2−3分で英語で自己紹介ができるコンサル(台本作り+音声吹き込みmp3を提供)を提供し、しっかり準備してきた上で参加するようにお願いしました。

 

それでも申し込んだのは10名の内4名でしたが、準備してきたメンバーのパフォーマンスは明らかに違いました。込み込みで60万円ぐらいかかる視察ツアーのコスパが高まったのはいうまでもありません。

 

結局、英語が苦手でも、自己紹介で相手に自分のバリューをうまくアピールできれば、後はなんとかなります。(もちろん、まったく話せないと厳しいですが、中高で6年も英語習っていれば、最悪筆談でもなんとかなりますし、その後のメールのやり取りなら翻訳アプリもあるので、もっと容易です。)

 

それはこんな事例で考えてみるとわかりやすいかもしれません。

自社がスリランカで教育ビジネスをしたいと思っていた時、たまたまスリランカ人とビジネスセミナーで出会ったとします。その人は、英語がほとんど通じず、相手の片言の日本語でしかコミュケーションが取れないのですが、よく聞いてみると、スリランカで15拠点ほどの進学塾を展開している経営者だと分かったとします。さて、あなたはどうするでしょう?きっと「日本語が流暢じゃないからもう聞かない」とは思わないはずで、一生懸命日本語でコミュニケーションしようとするはず。つまり、欲しい情報を相手が持っていたとわかれば、最初のハードルは突破できるのです。

 

さて、その英語で相手にアピールする自己紹介の作り方ですが、具体的ステップは3つです。

 

  1)日本語で原稿を作る(仲間にしたい相手にアピールする内容)

  2)英語に翻訳する

  3)読み上げ機能を使って真似する

 

以下、順番に見ていきましょう。

ーーーー

  1)日本語で原稿を作る(仲間にしたい相手にアピールするもの)

最初にまず「日本語で原稿を作る」ことから始めます。目安は2−3分でしゃべれる程度。英語での自己紹介の作り方は、良書が何冊も出ているので、気に入ったものを読んでみるのがお勧めですが、下記は汎用的な構成例です。

 

*冒頭部分:自分が「何屋」なのか(例:私はミドリムシの研究者)

*ボディ:過去→現在→未来

(例:大学でミドリムシの凄さを知ったが培養に課題があることを知った。その培養に成功し、現在ビジネスを展開している。将来はバイオ燃料などにも転用し、世界のエネルギー問題に貢献したい)

*締め部分:次のアクション(例:今度メール交換させてください)

 

  2)英語に翻訳する

1で作った原稿を「DeepL」で翻訳します。ちょっと変な文になることもありますが、おおむねいい感じの翻訳が出てくるはず。心配なら英語が得意な人に微調整してもらいましょう。

 

3)読み上げ機能を使って真似する

DeepLの下部にスピーカーマークで読み上げ機能があります。

speaker

これでも十分使えますが、おすすめなのは「音読さん」。DeepLで翻訳した文章をコピペして読んでもらいましょう。英語の発音は割とナチュラルだし、音声はmp3でダウンロードできます。これをスマホにダウンロードして、ひたすらシャドーイング練習すればばっちり。

 

下記はサンプル

 

また「ODDCAST」も面白いです。こちらもDeepLで翻訳した文章をコピペして読んでもらいましょう。英語の発音は「音声さん」よりやや劣る感じですが、映像が動くので、なんとなくネイティブにレッスンしてもらっている気分になれます。

oddcast

ちなみにここまでは全部無料。

 

さらに、もっと実践で使いたくなったら、オンライン英会話レッスンを利用します。「スキマトーク」はネイティブの先生を選んで、1時間ごとにレッスンがバラバラに買えてフリートークできるので、1000-2000円程度で予約して、上記で作成した自己紹介を聞いてもらい、フィードバックをもらうと良いと思います。(レッスンはZOOMにも対応してもらえるので、先生に直接お願いするのがおすすめ)

 

後は実践あるのみです!(今はコロナで微妙な時期ですがLCCでサクッと海外のカンファレンスなどにいって、とにかくテストランするのも良いと思います)

 

因縁果報とシステム思考、そしてエフェクチュエーション

仏教用語に「因縁果報(いんねんかほう)」という言葉があります。

 

因果応報という似たような言葉もありますが、「因縁果報(いんねんかほう)」には「縁」という漢字が入っているのが特徴です。

意味は、「物事には、原があり、それによって結が起こる。そして、それはにより左右される」ということです。

 

「縁」を現代風にいうと、「条件(コンディション)」ということになります。

同じアクション(原因)をとっても、結果が全く変わることがよくあります。

 

例えば、安く物を売っても、

・よく売れる場合

・そうでない場合

の2つがあるのは「物価」という条件が180度異なるから。

 

ということは、何かのアクションをとって思うような結果が出ないなら、

 

1)「条件」(縁)を読み違えたか

2)アクション(行い)が間違っているか

 

のどちらかになります。もともと仏教は「因果」(Cause-Effect)をベースにしている思考体型ですが、こう見ると本当にロジカルですね。

 

もっと言えば、この原因、結果、縁を総称して「業」と表現し、その業がさらに次の因果に影響することで、輪廻(りんね)思想につながっていく。

 

ここ最近、経営学では、手段からスタートする「Effectuation(エフェクチュエーション)」が注目されていますが、これも行為が影響(Effect)することに注目した考え方なので、仏教的にかなり近いところにある発想だと言えそうです。

 

スリランカ経済危機の本質は観光客の減少ではなく「債務の罠」

深刻な経済危機に陥っているスリランカで、3月31日に最大都市コロンボでデモが起き、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領の辞任を要求して、民衆が大統領の邸宅を包囲したという報道がされている。

この経済危機について、一部のメディアでは「コロナの影響による観光客減が原因」と報道しているが、これは半分当たっているが、ほぼ本質ではない。

 

スリランカ経済に占める観光産業の割合は12-13%前後、海外への出稼ぎ労働者からの送金がGDPの10%を占める。

 

したがって今回、海外からの資金の流入が減ったことが経済にインパクトを与えているのは間違いないが、もっと本質的な問題は、中国への対外債務が多すぎて、その利払ができなくなる「債務の罠」にコロナ前からはまっていたことにある。

 

スリランカは2009年の内戦終結までの26年間、分離独立派のタミル人(LTTE)とシンハラ人側(政府側)で血みどろの内戦を行なっていた。日本を含む各国NGOや国連機関は、このスリランカの内戦を終結させるために、現地でいろいろな努力を積み重ねており、2000年初頭にはソフトランディングでの内戦終結の兆しが見えてきたところだった。(私自身も2000年ごろ、現地でのNGO活動を通じて人生の一部はスリランカ停戦活動に投じた)

 

そんな当時、いきなり中国が「真珠首飾り作戦」「一路一帯」政策の一環として、当時のタカ派だったシンハラ政府側に大量の資金貸付と武器供与(戦闘機を含む)を行うというスタンドプレーに出た。その結果、現地のパワーバランスが一気に崩れ、シンハラ軍による凄惨な大虐殺が行われ内戦が終わる形となったのである。

 

当時大統領だったのがラジャパクサ氏。彼のタミル人の民間人を大量に巻き込んだジェノサイドは国際的に大きな批判を浴びたが、国内的には「内戦を終わらせたヒーロー」となった。この事もあってラジャパクサ氏自身は、自身を非難する日本や西欧から距離をとることになり、中国依存をどんどん深めていくことになった。

 

またラジャパクサ一族が、政府権力を利用して私腹を肥やしているというのも話も有名で国民は大体その事も知っているが、かつての日本のおける田中角栄みたいなもので、(実行力?)のある彼は国内的には人気が高く、それを許容していたというのがリアリティ。

 

地元の土建屋の利益誘導でわかりやすいのは、中国から(こちらも)莫大な借金をして建設した挙句、大失敗したラジャパクサ空港の事例を見るとわかりやすい。(昭和の日本の香りがする)

www.sankei.com

いずれにしても世の中はそんなに甘くなく、内戦を終結させるために中国からドカンと借りた借金が重石になっている。スリランカの対外債務の総額は510億ドル(約6兆4000億円)。そのうち対中債務は10%程度だが、その中には高金利な借金も目立ち、年利が最高6.3%にもなるものもザラだ。(日本の円借款が1%程度だからいかに高いかわかる。

 

また別途、中国国営企業からの借金もあるが、それは統計上、なかなか表に出てこない。)日経新聞(2022.7.22)には下記の記載がある。

 

実態を知るうえでスリランカの経済学者2人が6月にまとめた報告書が参考になる。財務省への情報公開請求を踏まえ、国有銀行からの商業融資も含めて推計したところ、対中国は昨年末で20%を占めた。小口に分散する国際ソブリン債(36%)を除けば、アジア開発銀行(15%)や世界銀行(10%)、日本(9%)を上回る最大の債権者だ。

 

いずれにしろ、ついには2017年に借金返済が実質不可能になり、主要港の一つであるハンバントタ港を99年に中国に明け渡す(借金のカタに取られる)事案が起こっている。中国は、ここを対インド戦略を踏まえた軍港にすると言われている。

 


そう、これが典型的な「債務の罠」であり、真綿で首を絞められるが如く、スリランカは徐々に中国化してしていく運命にある。(ただ「サラ金地獄」と一緒で、結局誰のせいかといえば、その責任はサラ金会社ではなく、借りた本人の問題であることは間違いない。中国は虎視眈々と国益増大の戦略を展開しているだけだから、ある意味あっぱれなのだ。

 

このラジャパクサ氏の過度な中国傾斜に警告を鳴らすがごとく、彼の側近だったシリセナ氏が反旗を翻して2015−2019年に大統領に就任し、中国依存を修正する政策を打ち出した時期もあった。しかしシリセナ大統領は政局の混乱で失脚し、その後は、前大統領であり兄のマヒンダ・ラジャパクサに代わり、弟のゴタバヤ・ラージャパクサが現大統領に就任している。(ちなみに兄は首相、末っ子のバシル・ラジャパクサは財務相である)

 

これは民主的な選挙による結果だから、スリランカ国民自身がラジャャパクサ一族に権力を与えることをもう一度選んだといって良い。

 

当然この弟ゴダバヤは、兄マヒンダを継承して中国傾斜路線を復活させることになり、シリセナ時代に締結した日本インドとの共同コロンボ港開発プロジェクトを白紙に戻したり、日本に委託した鉄道敷設計画をいきなり中国企業に乗り換えるなどの政策転換を行っている。日本の関係者は怒り心頭だが、自ら「債務の罠」に再びハマりにいったのである。

 

これがスリランカが「親中」と呼ばれるようになった所以である。

その後も、中国への依存度をどんどん加速していたところに、コロナ禍がヒットする形になった。

 

さて今後スリランカはどうなるのか?コロナ禍が終わったところで「債務の罠」が今後もずーっとスリランカを苦しめ続けることは間違いなく、このままだとスリランカの中国化は避けらない。

 

冒頭に紹介した暴動ニュースでは、国民がラジャパクサ大統領(弟)の辞任を要求している模様だが、彼が辞任したところでスリランカの状況は変わらないだろう。まさに、大多数の国民が自らが選んだ大統領が、日本などの善意を裏切って中国を選び、そしてその代償で苦しんでいるのが今のスリランカなのだ。

 

大好きな国だけに、見ていて本当に痛々しい。

 

日本の戦後独立はスリランカの第2代大統領ジャヤワルダナに負うところが少なくないのは有名な話だが、そのスリランカに日本はいつか恩を返すべきであると個人的には思う。ただ、ラジャパクサを支持する現在の大多数のスリランカ民度がアップしない限り、日本の声は届かないように思う。

 

ただ国際政治的に、スリランカが中国の準属国になるのは、好ましいことではないことは確か。もともと仏教国でもあり、親日国のスリランカに対し、チャンスが来たら日本はもっとコミットすべきだろうと思う。

PS 2015年、終戦後の経済復興が絶好調だったコロンボを訪れた(現地のよく知っている場所の不動産開発プロジェクトの案件をネットで見つけて、観光も兼ねて訪れたのである)。内戦当時も営業していて、駐在中によくお世話になったさくらレストランは健在だった。今はどうなっているのだろうか。

f:id:wakabayk:20220403171047j:plain

さくらレストラン

f:id:wakabayk:20220403171302j:plain

マジェスティックシティショッピングセンター

PS2

冗談のようなニュースが飛び込んできた。一番の元凶であるラジャパクサ一族が政権に留まり、他の閣僚をクビにするという話。国民の反応が気になる。

ベンガルール=共同】経済危機に揺れるスリランカで3日、閣僚会議が開かれ、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領と兄のマヒンダ首相を除く26閣僚全員辞任が決まった。地元メディアが伝えた。