米海兵隊の教訓に
「二流は後ろから撃たれる」
という言葉あるそうだ。戦場では自分の命がかかっているから、人間のエゴが剥き出しになる。したがって、よほどしっかりした信頼関係を構築しない限り、
自分が助かりたい一心で、味方を背後から撃ったり、味方を敵に売り渡したりする人が必ず出てくる。
これは海兵隊に限定した話でもなんでもなくて、、三国志でも、最近流行の漫画「キングダム」でも、味方から裏切られることで、敗北するケースが多く出てくる。(むしろ戦で敵に負けるパターンより多いのではないだろうか。)
「2020年の大河ドラマの主役になる明智光秀」に裏切られた織田信長もそうだし、関ヶ原の合戦で東軍に寝返った小早川秀秋も裏切り者の代表格である。
「ブルータス、お前もか!」のカエサルも、ユダの裏切りにあったイエス・キリストも構造は同じだ。
そういう意味で、味方から撃たれる(Friendly Fire)というのは、人間の業に根差した、組織運営の原理原則の近いものだと思う。
(もちろん裏切った方の立場から見れば、生存のための正当かつ合理的な判断があったわけで、それを責めてもしょうがない)
かくいう私もサラリーマン時代には、何度か(も?)後ろから撃たれた。
今思い出すと、脇が甘かっただけで、戦場だったらとっくに死んでいるだろう。ただ
幸いなことに現代の裏切りは命までは奪われないから、この経験は、大きな学びになった。
【高橋がなり】#58⇒仲間の裏切りで社長をクビになり人間不信となった元経営者に高橋がなりが「お前はバカか!」と一喝!【まえむき人生相談】
この動画は、かつて一世を風靡した「マネーの虎」の”虎”の代表格だった高橋がなりさんが、裏切りについてアドバイスしているのだが、かなり深い。
「人は自分で自分を裏切れるぐらいなんだから、他人との約束なんて、もっと簡単に破りますよ」
という言葉に、なるほどな、と思う。
例えば、ダイエットしようと決心した(自分で自分に約束した)のに、すぐに破ってしまう。禁煙しようと誓ったのに、誘惑に負けて喫煙してしまう、など、もっとも裏切ってはいけない自分さえ裏切ってしまうのが人間なのだ。
つまり人間はどうしようもなく弱い存在なのである。
したがって、常に「裏切られるかも知れない」という前提に立つことで、万全の準備ができる。
稲盛和夫氏が「実学」で書いているダブルチェックの法則も同じところに根差している。
・うつろいやすく不確かなのも人の心なら、これほど強く頼りになるものはないというのも人の心である。
・人の心をベースにして経営していくなら、この人の心が持つ弱さから社員を守るという思いも必要である。これがダブルチェックシステムを始めた動機である。
・出来心が起こったとしても、それができないような仕組みになっていれば、一人の人間を罪に追込まなくてすむ。そのような保護システムは厳しければ厳しいほど、実は人間に対し親切なシステムなのである。
さて実際に弱い人間の心にどう対応するか。
一つは高橋氏は「裏切ったらひどめに合わずぞ」という仕掛けを用意するというマキャベリ的なリアリズム発想だ。
「君主は愛されるよりも恐れられよ」というわけだ。
もう一つは稲盛氏のように、その究極を(かなり飛躍するけど)「愛」だと捉えること。高い目標を掲げ、そして信頼して任せる、といったポジティブな側面と同時に、「ダブルチェックの法則」のような極めて具体的なバックアップの仕掛けを用意する。
つまりそのバランスが肝だ。
なかなか学校では教えてくれない話だけど、ベンチャーや中小企業なんかでは、元部下にお金を持ち逃げされたとか、顧客名簿を持っていかれた、とかいう話は日重茶飯事で、最も重要なトピックではないかと思える。
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余談だが、交渉においても、いかに味方には仕事を外されないようにするか(裏切られないようにするか)がみそ。現実的な合意が、味方から「妥協」と解釈されると、裏切り者のレッテルを貼られ、ハシゴを外されることになる。