たまに駅員に怒鳴っている人を見かけますが、ほとんどの場合はいい歳をしたオッサンだったりします。
統計によると、鉄道係員への暴力行為で、年齢順のトップは「60代以上」。50代の加害者とあわせると43%以上だそうで、平均年齢がどんどん上がる日本では、近いうちにこの数字が70%ぐらいになるのではないかと思います。
さて、怒ったおじさんが口走る台詞として
「責任者を呼べ」
があります。僕も「上司を呼べ」を含め、何度かこのセリフを言われたことがありますが、そもそのこのセリフが出てきた背景を考察した面白いコラムを見つけました。
コラムの著者によると「責任者出てこい」というセリフは、ちょうど50−50代の方が、「ナウなヤング」だった80年代に流行った言葉とのこと。
その時の記憶が潜在意識に刷り込まれており、頭に血が上った時に無意識かつ骨髄反射的に出てくるのではないかと考察しています。(これを著者は「刷り込み理論」と呼んでいます)
さて、この「刷り込み理論」は拙著「プロフェッショナルを演じる仕事術」(2011年)を読んでいただいたことがある方には ピンとくる話です。
↓一部本文読めます
この本のメインメッセージは
「われわれの思考を無意識に支配しているのは、潜在的に持っている刷り込み(ストーリー)なので、その刷り込みをベターなものに上書き保存しましょう。そのベストな方法が「演じる」ということです」
というものです。 (サマリーはこちら「ビジネスブックマラソン」)」
刷り込みによるセルフイメージってどうしても自分の意思で意識的に変えるのは難しいし、「責任者を呼べ」と口走るオジサンが「俺は誰かを真似している」という健在意識がまったくないように、その存在すら自覚できない場合がほとんど。
拙著の中では「刷り込み」の象徴的な事例として、冒頭で「なぜ取り調べ室ではカツ丼が出るのか」というエピソードを取り上げていますが、これも結論的に言えば、メディアを通じてかつて積極的に刷り込みが行われたからなんですね。
じゃあどうすればいいのか?方法は2つあります。
1)「刷り込み」に気づく
米ベストセラーになったイノベーション発想法を描いた「ハイコンセプト」でこんなエピソードが紹介されています。
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著者のダニエル・ピンク氏が絵画教室に通って自画像を描くシーンで、著者は先生に指摘されてあることに気づきます。
「自分が絵に書いている唇は、今まさに自分が鏡で見ている顔にある唇ではなく、幼少期に住んだ街の道路脇の看板にあった唇をシンボルにした看板を書いていたんだ」と。
幼少期のビジュアルイメージの「刷り込み」が強いと、目の前のものをそのまま見ることはできなくて、脳の中で過去のイメージを引っ張り出してきて、それに変換しちゃうんですね。
それに気づくことで、ある意味での自己洗脳(刷り込み)をコントロールすることができる訳です。
2)演技する
これは演技でもなんでもいいので、行動を先行させて無意識に「刷り込み」を上書き保存した方が早いという話です。(伝わりにくい場合は、ぜひ本を読んで見てください、汗)
余談ながら、心屋仁之助さんが「どうせ自分は愛される」など台詞を何度も言わせながらカウンセリングしていくアプローチとも共通点が多いなと思います。(カウンセリングも心理学ですから当たり前と言えば当たり前ですが。)
自分の中にどんな刷り込みがあるのかを意識することは、ほとんど不可能かもしれません。であれば、よりベターなものに上書きするべく、自分がなりたいものを「演じてみる」というのは、やっぱりいい方法だなと思った次第。
少なくとも「責任者を呼べ!」と口走ってしまうオジさんにはなりたいくないものですネ。
余談
30代だった2011年に初めて本を出してから早6年。。時代の流れは早い。今改めて読み返して見ると、稚拙な文章だったり、いまだったらもっと自分の経験を交えて語れるところなど、あらは見えて恥ずかしい部分も多い。アマゾンのレビューに批判的なことを書いている方のポイントも「確かにな」と思う部分もある。逆に「結構いいこと書いているな」と思うところも。
でも明らかにこの本を出してから、自分の人生は変わったなと思う。