昨年10月、アマゾンが米Eラーニング企業の「テンマークス」を買収したことが報道されました。
▼アマゾンの次のビジネスは? eラーニング企業買収を発表
http://ascii.jp/elem/000/000/833/833251/
テンマークスは幼稚園から高校までの算数/数学のEラーニングで伸びてきた会社ですが、
アマゾンはこのようなデジタル学習の仕組みを、同社のAmazon Kindleに取り込む事を狙っているようです。
私見としては、この取り組みは今後大きく拡大していくだろうと思います。
というのも、電子書籍とEラーニングはもともと相性がいいからです。
私がボンド大学のEラーニングを立ち上げたばかりの2001年は、英語の授業を受けるために、専門の教科書をボンド大学のブックストアから郵送で購入する必要がありました。
ただオーストラリアー日本の間のシッピングは思った以上に時間がかかり、普通の郵送ですと1-2週間かかってしまいます。(これがクリスマスシーズンに重なるともっと時間がかかる事も!)
ところが、現在では日本のAmazonで海外大学の教科書を簡単に購入できますし、一部はキンドルでデジタル的に入手することも可能です。
この動きがどんどん加速して、あらゆる本(もちろん教科書も)がキンドルで読めるようになるのは、時間の問題です。
そして、その先に見えるのは、
「教科書の著者(教授)によるネット授業が受講できる世界」
です。
Amazonは、中高生のEラーニングから始めるようですが、おそらく近い料来にMOOCs(大学の無料公開授業)と連携し、
キンドル上で大学の教科書を読み、関連した講義を視聴し、課題に取り組み、そしてビデオ会議で議論を交わすプラットフォームが完成するはずです。
その先には「学位」の発行もあります。
そのために複数の大学と連携するという選択肢もありますが、彼らの動きが遅いなら、Amazon自身が教育機関の認定を受けて学位を発行するという将来的な可能性もあるはずです。
さらにテキストマイニングの仕組みを使って、受講生の発言記録からAmazon上の商品をレコメンドしたり、デジタル教室上のクラスメートのオススメグッズを紹介したりするようになるはず。
もっと言えば、買った本の履歴や発言内容から受講生の知的レベルや宗教観、行動特性などを把握して、その人の知的レベルにあった書籍やグッズ、旅行パックから生命保険まで売るようになるかも知れません。
さすがAmazonという感じです。
おそらくその周辺で様々な関連ビジネスが生まれるはずですが、そこに対してうまく布石を打てば、大きなビジネスに化ける可能性大です。
●中古ビジネスのアービトラージ
やや余談になりますが、Amazonは米国で
「トレードイン」
という中古CD買取ビジネスを始めています。
▼Amazonに要らないCDを送ってギフトカードをもらおう
サービスの流れは
1)専用の箱に入れてAmazonにCDを送る
2)Amazonが査定して、買取金額相当のAmazonギフトカードがもらえる
3)買い取ったCDはAmazon上で販売
このビジネスは本格化して日本に拡大すると、ブックオフ系の古本屋ビジネスは大きな打撃を受けるかも知れません。
またAmazonは、膨大な買い手のデータ(ユーザー情報)を握っているので平均的な中古商品の売買額や取引数のデータを元に、バイクの買取でも、自動車の買取でも、あらゆる中古品流通ビジネスできるようになるはずです。
「Amazon恐るべし」ですね。
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【今号のまとめ】
・AmazonがEラーニングと融合し、教育機関化する可能性がある
・中古ビジネスはAmazonによってアービトラージされる可能性がある
・Amazonに買収される事を前提した事業開発が加速する
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週刊メルマガ「大人の学ぶ技術」より
登録> http://www.flow-one.com/mailmag.html
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【追記】
ベネッセが始めた著者による動画講義サイト「著者大学」。
映像技術はまだまだこれからって感じですが、MOOCも巻き込んで、こういううねりが今後大きくなりそう。