大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

官僚的な仕事のやり方とその意味を考える

ライフネット生命社長兼COOの岩瀬さんの記事を見て、サラリーマン時代に苦労した事を思い出しました。

「取締役会に出す資料を前日になって手直ししたいと思い、ある部下にセッティングをお願いしたのですが、「すでに一度、社外の確認が済んでいるので、このタイミングでの変更はやめて欲しい」といわれました。もちろん準備作業に時間がかかるのは分かりますが、僕としては最後まで良いものを作るための努力を惜しみたくなかった。だから僕は、「そういう官僚的な仕事のやり方はやめてください」と強く伝えました。これは自分の意志がいかに強いかを伝え、部下に

これは重要なポイントなのだな

と気づいてもらうための一つの手段だと思います。」(P74 THE 21 2012-9)

もちろん十分に考えて準備するのは大前提です。しかし日々状況が変化する中では、どんどん新しい情報によって考え方をアップデートする必要があるというのも真実です。

私も直前まで手直しをしたい方なので、チームメンバーによく資料差し替えなどをお願いしました。そのリアクションは典型的に

・快く引き受けて工夫しながらどんどんやってくれるタイプ

・嫌々だが折れてやってくれるタイプ

・強力に抵抗するタイプ

の3つに分かれました。

理念を共有したり、その作業の意義を何度も伝えても、やはり一部のスタッフは抵抗します(もちろん組織なので強制的にやらせることもできますが、不満で一杯です。)

ではなぜ抵抗するのでしょうか?

「きちんと仕事をやりたい」(事前に作業するとミスが起こる)

という責任感から抵抗感が出てくることももちろんあります(ミスが自分の責任になる可能性があるとしたらなおさらでしょう)

もっと深いところでその人自身の性格的なものに起因していることもあります。また組織全体の雰囲気として、

組織は大きくなるほど硬直化(官僚化)する

という慣性の法則的な理由が影響している事もあります。

だからこそ「マネジメントコントロール」を含めた経営手法や実践例を学び、打ち手の全体像を理解する事が、マネージャーにとって有用ではないかと改めて感じるのです。

注意したいのは、別に「官僚的」が悪いという事ではありません。一般に役所は企業のように顧客を選べないので、誰にどうツッコミを入れられてもフェアであると主張できる行政サービスを提供する責務を背負っています。

したがって、一貫性や継続性を保つためには、容易にものごと変えない事が、仕事の性質上も求められる側面があるのです。つまり

臨機応変性)>(継続性)

なのであり、必ずしも「個人の性格」に起因するものではありません。(もちろんすべての場合において、それが良い訳ではありません)

ただ同じような事をライフネット生命のようなIT企業がやっていたら、早晩会社は潰れるでしょう。

だからこそ組織戦略にマッチしたマネジメントスタイルを選ぶ必要があるという訳です。