今週10月23日(水)に、東大の福武ホール(赤門横)で開催された
「FLIT 第1回 公開研究会 MOOCと反転授業で変わる21世紀の教育」
に参加してきました。
FLITは「東京大学情報学環 反転学習社会連携講座」の英語名で、山内准教授の音頭で動きだし、
「反転学習(フリップト・ラーニング)」
を主に研究します。反転学習をざっくり言うと
「生徒は映像授業を宿題として事前に見て、教室ではその補足指導や応用議論を行うような授業の形式」
を言います。
先日、佐賀県武雄市で反転学習を取り入れるというニュースが発表されましたが、この分野は今後メチャクチャ速いスピードで発展しそうです。
この「反転学習」と同時並行で進んでいるのが、大学講義の無料映像化です。
代表的なのは下記の3つです。
・エデックスhttps://www.edx.org/
・ユダシティ https://www.udacity.com/
・コーセラ https://www.coursera.org/todai
▼関連記事 2013年10月24日(木)
「MOOCは世界を変える」――米コーセラ共同CEOコーラー氏に聞く
「より多くの人に、教育への自由なアクセスを」
●運営ノウハウの蓄積がキモ
ムークが将来どうなるかですが、上記の東大シンポジウムでは、それぞれの大学で作られたベスト映像講義が、他大学の授業の一環として取り入れられ、それをベースにキャンパスで「反転学習」が行われるようになるのではないか、との意見が出ていました。
私が責任者をしていたボンド大学 BBT MBAでは、2001年からまさにいろいろな大学の先生にご協力いただき、映像講義を作ってオンライン授業を運営していましたので、その意味ではやや先を行っています。
また講義映像をベースにした議論も教室ではなくオンラインでやっていますので、「反転学習」はフルオンラインへの過渡期的な存在にも見えます。
ただ、そのような大学講義の映像が大規模で、しかも無料公開されるとなると話は別です。通常はシンプルな講義映像1本作るだけでも数十万円はかかるので、それが無料化されるとなると、ゲームのルールが変わってしまうからです。
例えば、MOOCは米国においてすでに一部の企業が社員研修で使用する動きになっており、この動きは加速するでしょう。
近い将来、各大学で同じ科目を教える先生の講義が比較評価される事になるので、その中で自然にベストな講義が選択されていくはずです。
そして、このような動きになることは、日本の代ゼミや東進ハイスクールの衛星/動画講義などでカリスマ講師のクラスに生徒が殺到している事ですでに証明されています。
では、今後各大学はどのように個性を出していけば良いのか?
もちろん、スター講師を抱える事もありますが、講師個人の知名度や能力だけに依存するには限界があります。したがって究極的には組織として独自の「指導方法(ティーチングスタイル)」の確立やノウハウの蓄積する以外にないと考えています。
その中には当然ながら、学生同士が学び合う「ソーシャルラーニング」や「ゲーミフィケーション」も入ってきます。
言って見れば
「学習コンテンツ」(モノ)ではなく「学習体験」(コト)
で差別化が図られていくという事です。
私はこの業界に10年以上いるので、元々MITでやっていたOCW(オープンコースウェア=講義映像を無料公開する試み)や、文字や映像などのあらゆる情報のフリーミアム化、そして今後どういったビジネスモデルが必要かを5−6年前から予想していました。
ただ、ここ数年MOOC、TED、反転学習などの動きが次々出てきているのをみると、やっぱり間違っていなかったなと思うとともに、その先を見越してビジネスモデルを作らねばと思うばかり。
どちらにしろ、さらにスタンフォードや東大などの参入によって、オンライン学習の進化のスピードは10倍、100倍になりそうな予感です。変化はチャンス。面白い持代になってきました。