大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

問題解決法の進化(「分解」だけのロジカルシンキングから「つながり(再構成)」のロジカルシンキングへ)

記事のPOINTS:
① ものごとをバラバラに分解する手法は、問題解決法の一部に過ぎない。
② 因果関係を無視して問題解決はできない。
③ 「分析」と「つながり」をベースに、創造的な解決策を作る必要がある。

 

「ロジックツリー」「MECE」「Fact-Base」などの言葉は、問題解決法に触れたことがある人なら、1度や2度は聞いたことのあるキーワードだ。ただ、これらを駆使した問題解決法で、本当に現場の問題は解決できているのだろうか?

 

問題を解決しようとして、かえって状況を悪化させていないだろうか?社内に新たな問題(対立)を生み出し、「自分には難しい」「やっぱり現場では使えない」と結論づけている読者はいないだろうか?

 

●いつの間にか「犯人探し」
筆者は20代の頃に、世界的屈指の戦略コンサルティングファームの日本代表を努めた人物が創業したばかりのベンチャーに飛び込み、試行錯誤しながら、ビジネススクール(経営大学院)の統括責任者を約11年務めた。当然ながら、社内ではメールでも、会議でも、ロジックツリーやピラミッドストラクチャをベースにした問題解決思考がデフォルトとなっていた。


ぐちゃぐちゃになった物事を整理・分解して、解決の糸口を見つけ出していく問題解決法には、大きなメリットがある。混沌とした問題の解決すべき論点(イシュー)が明確になり、ツリーやマトリックスでスッキリと図解されると、ある種の爽快感がある。


ただこの方法が万能かといえば、そんなことはなく、使い方にはコツがある。そして特有の弱点も抱えている。薬でも、効能が強いほど、副作用を考えるのが重要なように、問題解決法もメリット、デメリットをよく考えて使う必要がある。


ところが、問題解決&ロジカルシンキング研修、本屋に並ぶ問題解決本で、そのデメリット(リスク)を明確に示しているケースは案外少ない。むしろ、まるで魔法の杖のように、そのメリットだけを強調したものも多い。


その弊害なのか、習ったばかりの問題解決策を現場で振り回したために、問題を解決するどころか悪化させてしまい、悶々と悩んでいる人によく出会う。「コンサルティング会社に頼んだら会社が悪化した」とか、「MBA が会社を潰す」といったたぐいの批判本が出てくる背景も、根っこは一緒のところにある。

 

つまり手法の特徴を十分に理解せずに使ったために、副作用のほうが大きくなってしまっているのである。

 

MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方

MBAが会社を滅ぼす マネジャーの正しい育て方

 
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

 

 

「ハンマーを持つ人にはすべてが釘に見える」という言葉があるが、問題解決法を習うと、ついついなんでも叩いてしまいがちになる。

 

具体的には、ロジカルに問題を解決しているつもりが、いつ間にか「犯人探し」になってしまっている例が多い。「あなたが問題です」と指摘されて嬉しい人などどこにもいない。ましてや自分が問題になろうと思って、仕事をしている人もいない。だから「あなたが問題だ」などと指摘すると、指摘された人との間には必ず対立が起こってしまうのである。それが上司なら、問題解決者のリスクは極めて高い。

 

●バラバラにしたあとは、必ず再構成する
 物事を分解する最大の弱点は、分解した要素間の因果関係を軽視、もしくは無視してしまいがちなことだ。我々を取り巻く世界は、常に原因と結果、つまり因果関係によって成り立っている。もちろんビジネスや組織も例外ではない。

 

言い方を変えれば、ある現象(問題)が、それ単独で起こっていることはあり得ず、それは常に何かの「結果」だということを意味している。

 

だから、原因を見つけて、それを取り除くという線形の解決策はワークしないし、悪化させることもある。

 

 そもそも何かの解決策を実行して、ネガティブな副作用(結果)が出るということは、それを起こすも知れない「原因」が見えていないということを意味している。

 

ガン細胞を見つけたのはいいが、そこにつながっている血管を無視して摘出した結果、連鎖的に体に悪影響が出て死に至るようなもので、問題全体を構造的に捉えられていないである。


MECEやツリーで要素間をバラし、分析すること自体は間違っていないが、それだけでは不十分であり、バラした要素がいったいどう影響しあい、つながっているのかを考察しなければ本質的問題、そして解決策はわからないのである。

 

もし誰かが問題となっているなら、それは単に「結果」にすぎない。だから、「あなたが犯人です」と指摘するではなく、その人の行動の背景にある構造的な「原因」、つまり因果関係を丁寧に解きほぐさなければならない。

 

●2つの要素
日本のビジネスシーンで、ロジカルシンキングや問題解決法が普及するきっかけのひとつとなったのは、大前研一『企業参謀』(1975)である。今でも古典的教科書として版を重ねるこの本は、渾然一体になった問題を、本質に基づいてバラバラに“分解”する重要性を繰り返し強調する。


この視点だけでも、圧倒的な示唆に富むのだが、その影で見落とされがちなのが、「分解」の後のステップとして示されている重要なポイントだ。

 

それは、一度バラバラにした各要素が全体に与える影響を理解し、目的を考えて再び組み立てる(=再構成する)することだ。


『企業参謀』に大幅加筆して英語で出版された『ストラテジック・マインド』(1984)でも、この“再構成”の重要性を、バラバラに分解する以上に強調している。先見性に富んだ意思決定をする条件として、

 

「事業環境の中に働いている各種の動因を、因果律に基づいて未来に延長し、最も実現性の高いシナリオに対する論理的仮説を、単純明快に表現すること」

 

としているのは、その一例である。

 

●再構成の方法論はまだ発展途中だった
要素をバラバラにした後、目的や因果関係に基づいてシナリオを作るのが重要なのだ、というメッセージはクリアだ。ただ「どうやって実現性の高いシナリオを作り上げるのか」という方法については、『企業参謀』でも『ストラテジック・マインド』でも、それほど詳しく解説されていない。


「分解する」と「再構成する」は、問題解決の両輪であり、両方そろって初めて本来の力を発揮するにもかかわらず、なぜ「再構成」が忘れられ、「分解」だけが注目されてしまったのか。

 

その背景には大きく2つの理由があるように思う。

 

まず1つ目は、シンプルかつパワフルで、3Cや4Pといったフレームワークとの相性もよかった「分解」に比べ、「再構成」は、まだまだ直感や非線形思考といったアートな世界にあった。つまり十分に体系化されていなかったために、相対的な注目度が低くなってしまったのである。


例えば、商品の売り上げが上がらない原因を、4P( Product(製品),Price(価格), Promotion(プロモーション),Place(流通))で分解したとする。その上で「Price」が犯人だから変えよう、といったレベルの解決策を作るには、分解思考はうってつけなのである。

 

ところは実際にはPriceとProductに密接に連動しているし、PlacementともPromotionとも影響しあっている。仮に問題をPriceだと決めて価格を下げると、当然ブランド価値にも影響し、売り場も、宣伝方法も連作的に変わってくる。

 

また時間軸も十分考慮する必要がある。

初期に値段を下げて、マーケットを拡大するという戦略もありえるし、目先の利益を稼ごうをして安易に価格を下げると、短期的には利益がアップしたように見えて、長期的にはブランド価値を毀損することもある。

 

要はPrice“だけ”変えるというわけにはいかないのだ。

 

ところが要素のつながりを無視し、たまたま見つけた「犯人」(問題)に注目し、「部分最適」な解決策を作ってしまうと、想定外の副作用のほうが大きくなってしまう。つまり一つの問題を解決したつもりで、2つの問題を新たに生み出すような結果に陥ってしまう。

 

もう一つは、この分解型の問題解決法が、ポジショニングベーストビュー(PBV)をベースにした外部環境分析を得意とするコンサルティングファームで普及したことだ。

 

例えば、3C分析(Company, Competitor, Customer)において、 自社(Company)の変化が即ライバルやマーケットに影響する訳ではないので、バラバラに分解しただけでもそれなりに役立つ。ただ、実際には全ての要素は相互に影響し合っているので、リソースベースドビュー(RBV)の視点がまったくなければ、解決策に副作用が出てしまうのである。

 

●つなげてシンセサイズする
問題を「つながり」(因果関係)によって捉える視点が、ビジネスにおいて注目されはじめたのは、比較的最近である。その先駆けが、自然界をさまざまな要素が影響し合うシステムとして捉える研究(システムダイナミクス)を、組織論に応用した、MIT教授ピーター・センゲの著書『最強組織の法則』(1995)である。

 

日本でも、2010年に発売された楠木建『ストーリーとしての経営戦略』(2010)がヒットした。この本は因果関係の連鎖を経営戦略の視点から分析した一冊だが、タイトルとなっている「ストーリー」は、まさに因果関係を示している。

最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か

最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か

 

 

マッキンゼーで日本支社長を務めた横山禎徳氏も、著書『循環思考』』(2012)で、「プロフィット・ツリーでいくら細かく要素分解していっても因果関係を示してくれることはない」と喝破する。

 

循環思考

循環思考

 

 

『企業参謀』から30年以上を経て、イッシューツリーを駆使してきた世界を代表するコンサルファーム元代表からの出てきた言葉は、味わい深い。横山氏は、その解決策としてつながりを強調した”循環思考”を提唱しているが、同じように現場経験を積んだコンサル出身者が、線形の問題解決に限界を感じ、独自の視点で経験則で補っているパターンはよくある。

 

そして、それら多くは「直感」や「右脳思考」と説明されるが、その中心的コンセプトの一つとなっているのは複雑系を”全体”として理解するための「つながり」思考なのである。

 

マッキンゼー&BCGでシニアアドバイザーとして活躍した名和高司氏が、”(既存の)コンサルを超える”最新手法の一つとして「システム思考」を紹介しているのはその一例といえる。

 

 

実際、『企業参謀』の大前氏が経営する会社においても、社内でロジカルシンキングと同じぐらい強調されていたのが、創造的な解決策を生み出していく「構想力」であった。ゼロからイチを想像する「構想力」とは、まさにバラバラに存在する事象や経験をつなげて統合(シンセサイズ)していく、まさに再構成の思考に他ならない。


一見関係なさそうに見える事象の間につながりを見つけ、イノベーションを生み出していく非線形思考の領域は、いまだに完全にサイエンスにはなっている訳ではない。

 

ただ、複雑な事象を因果関係で読み解き、そして再度組み立てていく手法は、「企業参謀」が書かれた30年前よりは、かなり発展してきており、直感や勘としか表現できなかった領域が確実に狭まってきているのは確かだ。

 

 

●戦略と実行

問題解決において、分解以上に重要なのは実行案だ。何をすれば、何が起こり、それがどんな結果を引き起こすのか、といった組織内・外での原因―結果のつながりを緻密に考察した具体的手段(How)がなければ、立派でかっこいい戦略(What)は、絵に描いた餅に過ぎない。むしろ状況を悪化させることもある。

 

問題解決者は、問題をバラバラにするだけの「分析屋」でも、アイデアを出すだけの「評論家」でもなく、実行を通じて成果を出す「実務者」でなくてはならない。

 

そのためには、つながりを無視することはできない。

 

余談だが、よく「数千万円のFEEをコンサル会社に払ったら、分厚いレポートだか残して去っていった」という批判がある。これは半分当たっていて、半分外れている。そもそもそもの問題解決が、因果関係を無視していては話にならないが、伝統的なコンサルは、純粋にWhatを求められる存在だった。

 

つまり、実行(How)は「現場の人の方がよく知っているでしょ」というスタンスでOKだったし、クライアント側もそれを求めたのである。

 

そのことは前述の名和高司氏の言葉に象徴的に現れている。

 

「HOWの細部については、クライアントの現場のほうがよくわかっているので、あまり細かいことには立ち入らず、現場に任せることだ。」

 

 ただ「言うは易く行うは難し」だ。

 

組織を動かすHowには相当なマネジメント力が要求される。立派な戦略を作ったがいいが、実行でつまづいて思ったような結果が出せない会社、現場が反発してお蔵入りになる会社、逆にまじめに実行して悪化する会社が少なくない。

 

結果としてコンサル側の言い分としては「実行はクライアントの責任でしょ」となるし、クライアントの言い分としては「役に立たない分厚いレポートを残して去っていった」となる。

 

いずれにしろ、誰かが悪いのではなく、「再構成」つまり、つながりの重要性がコンサルする側にもされる側にも、スポッと忘れられていたところに問題がある。

 

そして経験を積んだ”できる人”は、そこに「違和感」を感じ、因果のつながりを直感や勘で補ってきたのである。
 

 ●NEXT STEP 

最後に筆者の知る範囲で因果関係に注目するいくつかの優れた情報ソースをご紹介したい。まず手軽なのは、システム思考(思考プロセス)系のビジネス書だ。前出のセンゲの著書『学習する組織』(2011)やその関連図書、岸良裕司『全体最適の問題解決入門』(2008)は一読に値する。

 

学習する組織――システム思考で未来を創造する

学習する組織――システム思考で未来を創造する

 

  

全体最適の問題解決入門―「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!

全体最適の問題解決入門―「木を見て森も見る」思考プロセスを身につけよう!

 

 

「システム思考の概念的な重要性はわかったが、一体どうやって学べばいいんだ」とお考えの方には「TOCfEトレーニングプログラム」がオススメだ。4日間のプログラムだが、ステップバイステップでシステム思考を身につけられるので、時間を取って受講する価値は十分にある。

 

tocforeducation.org

  

もともと

 

「ロジカルである(論理的である)」

 

とは、「筋道を立てて考えること」=「つながりを考えること」であって、バラバラに分解することではない。その意味では、つながりをベースにした問題解決手法は、日本でも多くの現場で暗黙知的に脈々と使われてきた。 

 

dictionary.goo.ne.jp

 

トヨタ式問題解決として有名な「なぜなぜ5回」も、起こった結果から原因をあぶり出していくという観点で、まさに因果関係に着目した問題解決手法そのものである。

 

要素還元主義は西欧的、つながり思考は東洋的、ロジカルシンキングは左脳的、発想法は右脳的などとよく言われる。その真偽はともかく、両者は融合することで真価を発揮する。


過去に問題解決法で挫折してしまった人、そしてこれから問題解決を志すなら、「分解」一辺倒でなく、「つながり」思考の重要性を再認識し、二刀流で勝負していくことが成功のキーになる。

 

今回のコラムは「経営センサー」(東レ経営センサー2019-5号)の寄稿記事に加筆したものです。

人との感情的な対立をロジカルに解消する(痛い経験編)

半年ほど前、ある人にアメリカの某クラウドサービスが便利そうですよ、とウェブサイトを紹介しました。

 

そのサービスは一部無料でも使えるのですが、有料の使い放題サービスは月30ドルほど。日本で同等のサービスを利用すると、5−6倍の値段はするので、仮にサービスの質が期待したほどでなくても許せる金額です。

 

数日後、その知り合いから「法人年間プラン(6万円)に登録してしまったようなので、返金手続きを代わりにやって欲しい」という連絡がありました。

 

「自分でやればいいのに」と思いつつ、親切心からID&PWを教えてもらって、キャンセル申請を代行することに。Confirmation mailも送られてきて一件落着と思いきや・・・

 

さて、数ヶ月後・・・

 

「クレジットカードから6万円が引き落とされた!」

 

というクレーム(?)連絡が。海外経験もある(当然英語もできるはずの)大人なので、

 

「まずは自分でウェブフォームから事実関係と現状を確認するリクエストをしたらどうですか?。英語のドラフトを直すのなら手伝いますよ」

 

とお伝えしたところ、2、3度も「代わりに申請してくれ」というリクエストがあり、その度に、上記のようにお答えしたところ、突然キレて、

 

「あなたが紹介したのは詐欺サイトだ」

「もし返金してもらえなかったら、責任を取って半額を肩代わりしろ」

 

という強硬な要求にいきなり豹変しました。主な理由は下記でした。

 

1)そもそのこのサービスを紹介したのはあなたである(だから責任とれ)

2)法人年間契約をしたのは、サイトの作りがわかりにくいのが悪い

3)このサイトは詐欺サイトだと、口コミサイトにあった

 

正直びっくりしましたが、ここは冷静に状況分析することに。

 

ロジカルに考えると、

 

根拠(「認識している現実」+「推量(仮定)」)→主張

 

という方程式があります。特に「認識している現実」+「推量(仮定)」は一般にメンタルモデルと言われ、自己防衛的に働くので、

 

認識している現実

→間違ったのはサイトの書き方が悪いか、間違うように誘導したから  /そもそもサイトが悪徳・詐欺サイト

 

推量(仮定)」

→詐欺サイトが私を騙した/紹介した人は、そのことについて責任を取るべき

 

主張

→紹介したお前が金を払え

 

という風になります。

 

また「主張」の先には「目的」があります。この場合、

 

「主張」・・・紹介したお前が金を払え(交渉しろ)

「目的」・・・お金が手元に戻ってくる

 

また裏の目的として、

 

「自分の失敗を隠したい」(英語コンプレックスを知られたくない) 

 

も考えられます。

 

さて、この手の問題(コンフリクト)を解決するには、2つの方法があります。

 

一つは、目的を達成するための代替手段を考えること。この場合、

相手(サイト)に返金してもらう」というのが正攻法です。

 

もう一つは主張の根拠であるメンタルモデルの中身を検証することです。

 

認識している現実

→間違ったのはサイトの書き方が悪いか、間違うように誘導したから  /そもそもサイトが悪徳・詐欺サイト

 

推量(仮定)」

→詐欺サイトが私を騙した/紹介した人は、そのことについて責任を取るべき

 

主張

→紹介したお前が金を払え

 

 そこで検証して見ました。

 

認識している現実」=サイトが分かりにくいかどうかは主観によりますが、私が見た限り、英語が苦手な人でも、シンプルに個人月額プランに申し込めるようになっており、法人プランに申し込む方がかえって難しいと思えました。また詐欺サイトであるという情報は、英語でも日本語でも見つけられず(本人に情報源を聞いてもお返事なし)むしろ、信頼できる、という情報のほうが多い状態。

 

「推量(仮定)」=ウェブサイトを紹介したことで、紹介した人がどれぐらい責任を負うのかは、疑問が残ります(気持ちはわかりますが。)さらに詐欺サイトかどうかが確証がありません。

 

ーー

さて「主張」を論破するために、相手の「根拠」をアタックする方法は、裁判やディベートなどではよく使われますが、個人間の対立の場合、(仮にこちらが正しいとしても)下手に行うと、さらに感情的対立を深めます。

 

そこで今回は、事実確認のために会社のカスタマーサポートに「友達が困っているのですけど」という形で、返金ポリシーについて聞いてみました。

 

するとすぐに返信が返ってきて、申し込み後にRefund申請された場合は、タイミングによって一旦カードにチャージされるが、翌月にはRefundされるはずだ」という連絡がありました。

 

ということで、(おそらく)一件落着となりました。

ーーーー

さて、ここからは個人的学びです。

 

・何かを人に紹介する際は、自己責任が取れる人に限定すべき

・不用意に期待値を高めると、かえって不満に繋がる(今回はキャンセル代行)

・人はコンプレックスを刺激されると、理性的な判断ができなくなる

・自己防衛的になるあまり、背後から味方に矢を撃つこともある

 

人生、いろいろ勉強になりますね。

(何か見落としているポイントがあれば是非メッセージください!)

信念対立解明アプローチ、アンコンシャスバイアス、クラウド

コンフリトマネジメント系の情報を収集をしているとき、「信念対立解明アプローチ」というワードを見つけました。

 

どこかで聞いたことがあるなと思っていたら、構造構成学の第一人者である西條剛央先生のオンラインコミュニティで出てきたワードだったので、早速、下記の本を買ってみました。

医療関係者のためのトラブル対応術: 信念対立解明アプローチ

医療関係者のためのトラブル対応術: 信念対立解明アプローチ

 

拝読してみると、実用書でもあり、学術書でもある様な不思議な本なのですが、下記の記述で「なるほど」(AHA)と思いました。

 

「正しい」という確信(=構造)は、なんらかの経験によって裏打ちされているはずだと考えるのです。一切の経験がなければ、ある事柄の正当性に関する確信を持ちえないからです。このなんらかの経験一般は、構造構成学にいう現象にあたります。では、現象から、構造はいかにして構成されるのでしょうか?

 

これに対する構造構成学の回答は、契機ー志向相関的に構成される、というものになります。つまり、現象からある事柄を「正しい」と確信(=構造)するには、

 

なんらかの契機(状況、きっかけ、環境)と、

特定の志向(欲望、目的、関心)

 

などの影響を受けていると考えるのです。(P103)

 

ちょっと難しいのですが、誤解を恐れずシンプルに解釈すると、人は過去の「経験」と「目的」に基づいて、「これは正しい」と確信(=構造)を持つ、ということです。

 

そして、この対立の関係性を明らかにするためのアプローチが下記です。

 

解明条件1:すべての確信は契機と志向に相関的に構成されている

解明条件2:疑義の余地なき確信には成立根拠がない

解明条件3:契機と志向と確信の納得によって相互了解可能性を確保する

 

これも(専門家の人が見たら怒るであろうことも考えた上で)独自に解釈すると、人と揉めたら、お互いに「目的」と「主張」と「根拠」を説明することで、対立が解消する可能性が高まるよ、ということかと解釈しました。

 

「契機」というのは、最近よく見かける「アンコンシャスバイアス」(無意識の偏見)に近いコンセプトであり、経験を通じた価値観や持論、世界観なので、容易に変えることはできませんが、それを自己認知(Self-Awareness)したり、自己開示するすることは、対立解消にとっても大事ですね。

 

「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない

「アンコンシャス・バイアス」マネジメント 最高のリーダーは自分を信じない

 

 

さて、いろいろ出てきた概念は、TOCでいうジレンマ解消の「クラウド」で書き表せそうです。

 

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クラウド

この様に、対立をビジュアル化することで、信念対立を「解明」し、解消に繋げられると面白いと思います。さらに深掘り予定です。つづく。

守破離のステップで学ぶ:思考の体幹トレーニング

スキル=行動フレームワーク

考え方=思考フレームワーク

哲学=精神フレームワーク

 

分類して自分のレベルをアップする方法を考えると良い。

 

スポーツだと、

 

スキル=テクニック

哲学=体幹レーニン

 

とも言える。

 

守破離のステップで精神のフレームワークを学ぶ」(PDF)

https://www.flow-one.com/_src/584/entre.pdf?v=1552615160999

自動運転であおり運転から身を守る

日産に搭載されるあおり運転への対策オプション。

9post.tv

 

自動車が走っている現在地から公道の制限速度や急ブレーキのレコードなどを同時取得し、煽られる方に問題がないこともAIで即時判断できるとなお良いと思う。

 

同時にバックカメラで後続車種のナンバープレートの撮影も自動化(クラウド保管して、裁判の証拠資料とする)

 

そして最後は自動運転で全部自動化(オートパイロット)して、最寄りの警察署に移動するなど、自動的に危険を回避できれば、言うことなし。

 

日本人はリーダーがお嫌い?(世界価値観調査)

オランダで始まり、ミシガン大学がリードしている「世界価値観調査(World Values Survey)」という世界レベルの学術調査がある。

 

 

これに面白い質問項目があって、

 

リーダー(Authorityなので権力者でも良い)が、より尊敬される社会になることは良いと思いますか?

 

という質問に対して、日本はダントツに低い。

なにせ賛成が、4.7%しかいない。

 

ドイツ58.7% 

米国 55.2%

中国 41.9%

日本 4.7%

 

www.worldvaluessurvey.org

 

この理由はなんだろうか?

f:id:wakabayk:20190606171002p:plain

価値観調査

戦後教育によるものだろうか?

一応年齢別に並べられるが、20代でも50代でもあまり結果は変わらない。戦後50年経ったので、戦後教育を受けているという点では一緒だから、差が出ないのだろうか?

 

権力者=軍部の暴走、悪、庶民の敵、妬みの対象、上から目線

 

的な発想になっているとしたら、日本は相当深刻な毒を飲んでいる感じがする。

 

 

business.nikkei.com

セミナーや講演会で「質問する力」(4つのチェックポイント)

私自身の講師経験や、社会人ビジネススクール(MBA)の運営を通じた講師と受講生のやり取りを思い出すと、筋の良い質問、価値のある質問には、ある程度の共通点があります。

 

下記にそのポイントをまとめてみました。

 

1)調べればわかる事以上の内容を聞く


せっかくお互いに貴重な時間をとってその場に参加しているので、Googleで検索すれば、すぐにわかるようなことを聞くことにはあまり意味がありません。

例えばユニクロ(First Retailing)創業者の柳井さんが講演されたとして、質疑応答で

「御社の売上はいくらですか?」
「創業何年目ですか?」
「経営理念は何ですか?」

と聞くことにあまり意味はありません。(よほど特別な意図でもない限り)ストレートな物言いをする講師なら「それは自分で調べてください」と回答するかも。


お互いに貴重な時間を使ってそこにいるのですから、「*という経営判断した時にキモになったのは何ですか?」といった、その場でしか聞けないような内容を吟味して聞くと、お互いにとってより価値のある時間できます。

 

2)講師の知識を「試す」のではなく、エッセンスを「引き出す」


たまに

 

「最近***というニュースがありましたが、先生は知っていますか」

 

という類の質問をする方がいます。また質問の形を借りて、自分の意見をとうとうと説明して、結局何が質問したいのかわからない人もいます。

当然ながら、他の参加者は

 

「それ、わざわざここで聞く必要ある?」
「何が言いたいの?」


と思いながら聞いています。

「先生を試したい」

「自分の有能さをアピールしたい(ひけらかしたい)」

「マウントを取りたい」

 

という特殊な意図があるのでもない限り(そういう意図があっても避けた方が良いと思いますが)、セミナー後の質疑応答時間などでは、セミナー内容そのものを深く掘り下げる質問のほうがベターです。

多くの場合、講演者は時間の制約のもとで、泣く泣く内容を割愛したり、かなり要約して説明したりしています。

その部分をつっこんで質問することができれば「よくぞ聞いてくれました!」とばかり、より深い洞察や、その場の雰囲気によって、そこでしか聞けない話を聞くことができます。

 

良い講演は、スピーカーだけが作り出しているのではなく、オーディエンスの力量でその質が何倍にも変わってきます。

 

3)具体的に聞く


「どうしたら先生みたいにすごくなれるんでしょうか?」
「**についてどう思いますか?」

といった抽象的な質問には、抽象的な回答しかできません。(実際のところ、有名人はその手の質問を過去に数千回も聞かれているので、月並みな回答しか返ってこないのが普通ですし、わざとらしい「よいしょ」質問は逆効果です。)

質問するなら、講演者が”本域”を発揮できる(せざるを得ない)するような質問がオススメです。

例えば、

 

「神奈川の**というエリアで席数30の居酒屋を10年経営しています。リピーター客が売上の70%を占めていますが、今度近所に大手の激安居酒屋チェーンAが進出を計画しており、お客さんを奪われることを恐れています。うちも追従して価格を下げようと思っていますが、同じような経験があれば、ご意見をお聞かせいただけませんか?(何かアドバイスいただけませんか?)」


という質問はどうでしょうか? もし講師が過去にそれに近い経験をして克服していたり、プロとして本業でコンサルティングをしている領域であれば、おそらく本気(ガチ)でバリューの高い回答してもらえる可能性が高いはずです。(むしろ、そこでお茶を濁したり、イマイチな回答しかできないのであれば、その程度の実力だと見られるリスクさえあります)

もちろん、講師にとっても回答のハードルが上がるので、考えを整理したり、内省するきっかけにもなり、お互いにとってメリットがあります。

 

4)質問の「手段」と「目的」を意識する


質問やアドバイスを求める時には、手段を目的を意識すると、質問の切れ味が良くなります。

前述の「具体的に聞く」で使った例を使うと、

目的「常連客の客離れを防ぐ」
手段「価格を下げて対抗する」

という構成になっています。質問する時に「客離れ」を防ぐに目的について広く方法を知りたいのか、「価格下げる」という特定の「手段」の是非について聞きたいのかによって、質問のポイントはかなり異なります。

同じように「高齢者の自動車暴走で犠牲になった人はかわいそうだから、高齢者には免許を返納させるべきだと思うが、それについてどう思うか?」という質問には、目的と手段がごちゃ混ぜにに入っており、ポイントがはっきりしません。

回答者がうまく論点を整理して回答してくれる事もありますが、可能であれば、質問者自身が

 

「目的」を達成するために、他に「手段」があるのかを聞きたいのか、それともその「手段」そのもの有効性に限定して聞きたいのか

 

を整理すると、対話の価値がグッとあがります。


いろいろ書きましたが、

 

・考えすぎて何も質問しない

・頭が悪いと思われるが恥ずかしくて黙っている

 

というのが一番もったいないので、上記をガイドラインにしつつも、恥をかきながら実践で質問力を鍛えるのがベストです。(目立つのが嫌だ、と思っても、案外、他人はすぐに忘れてしまいます)

もしあなたが学校運営者や講師であれば、クラスの終わりに、どういう質問が良かったかについて、全員でディスカッションしても良いかもしれません。

「質問力」に関しては、いろいろな書籍が出ていますので、ぜひ検索してみてくださいね。

 

PS

これまでの経験で、リアルで見てすごいと思ったのは、このような方々です。

 

・藤田田(日本マクドナルド創業者)
・稲盛和夫(京セラ創業者)
・大前研一(マッキンゼー&CO 元日本支社長)
・孫正義(ソフトバンク会長)
・柳井正(ファーストリテリング会長)

 

どの人にも、その場の空気を一瞬で変える独特の雰囲気、迫力、魅力があります。その真価を引き出せるかどうかは、オーディエンスの「質問力」にかかっていると言っても過言ではありません。

 

www.f-pad.com