トヨタの評価制度運用に関する豊田章夫氏の素晴らしいコメント。
「トヨタ社内には『方針シート』と呼ばれる自己申告型の目標設定用紙があるのですが、これは自分で目標設定をして、後で本人が自己評価します。そうすると自己採点が5段階の一番上である◎に集中するのです。しかし、◎を取るためにイージーな目標設定をして達成したと言われても、全トヨタにとっては全くプラスにはなりません。だから私は今、一生懸命社員に言って回っているのです『意欲溢れるナイストライで、価値ある△を取れ』と」
△というのは5段階の真ん中なのですが、やりがいのある目標設定をしたら、そう簡単に◎を取れるわけがありません。大失敗は困りますが、難易度の高い目標を定めて、最低限△で止められるような工夫をすることは、極めて価値が高いと思いますね」
引用元
目標管理制度の元で、本人が年度初めにチャレンジングな目標を立てれば立てるほど未達になってしまったり、ストイックな自己評価をするほど、それを人事や上司が真に受けて、人事考課で査定が下がるという会社も世の中には少なくないからだ。
部下も部下もその辺り(会社や上司の人事評価力)をちゃんとわきまえていて、絶対に達成できそうな目標を、さも難しいように翌年の目標設定としてアピールするのが処世術になる。
「結果コントロール」のニュアンスが強い会社は、評価制度を上手く回す仕組みを作らないと、すぐに形骸化してしまうので、むしろ失敗やリスクを取ったことを評価するKPIを入れ込むなどの工夫の必要がある。(GEやリクルートなどはその点魅力的な会社と言える。)
そしてそのような現場の問題をトヨタレベルの大企業のトップが正確に把握しているのが素晴らしいと思う。