ドラマ「半沢直樹」を毎週見ながら、どうして組織が成長と反比例してダメになってしまうのか、そしてどうやれば立て直せるかを考えています。
多くの組織では、成長の段階において、地位や利権を守るために一部の人々が利己的な動きをするようになり、必然的に会社本来の目的を果たそうとする半沢直樹的な人々との対立が起こります。
だからこそ、多かれ少なかれみんな共感するところがあり、平均30%を超える高視聴率になっているのだと推測します。
このようなコンフリクトを最終的に解決できるのはトップしかいません。
しかし組織の「しかけ」によってある程度マネジメント可能です。
香川照之さんの演じる大和田常務的な人(昔で言う悪代官)と私も過去にやり合った経験がありますが、どうしてこのような人々が組織の上層部に生まれてしまうのかを組織論的に考えてみると、いろいろ学びがあります。
そしてそのメカニズムが分かれば、大和田常務自身も、組織独特の集団心理に飲み込まれて変質してしまったある種の”被害者”であることが分かります。
ドラマを見ていると、半沢直樹の勤める「東京中央銀行」は、典型的な「ピーターの法則」に陥っているように見えます。
USC(南カリフォルニア大学)のローレンス・ピーター博士が表した「ピーターの法則(Peter Principle)」によれば、典型的な組織は下記のような成長プロセスをたどります。
1)階層社会にあっては、その構成員は(各自の力量に応じて)それぞれ無能のレベルに達する傾向がある
2)やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる
3)仕事はまだ無能レベルに達していない人間(*通常は献身的な現場スタッフ)によって行われている
組織が大きくなり、マネジメントを変更するのが大変になると、たいていの人々はそれに下手に逆らうリスクを取るよりは、慣れてしまう方を選びます。その結果、非合理な事でもいつしか当たり前の事として受け入れられ、それが問題であった事すら忘れ去られていきます。そして顧客の都合より、社内の都合の方が優先するようになってしまうのです。
これが年功序列と結びつくと、手に入れた地位を守り抜き、退職までの地位を安泰なものにしようとする人たちで、徐々に各ポジションが占められるようになります。そして出世の階段が上の方から詰まってしまいます。
通常は職位が上の人が下の人を評価するため、基本的にこの構造は変わりません。その結果、社内での影響力を大きくしようとして派閥が生まれ、社内政治が行われるようになるのです。
おそらく、半沢が大和田常務をやっつけたところで、この基本的な組織構造を変えない限り、第二、第三の大和田常務が現れる事になるに違いありません。半沢も戦い続ける事になり、長期的に見れば足下をすくわれるリスクが高まります。
勧善懲悪のストーリーは見ていて気持ちがいいのですが、そもそも「悪」が生まれない組織のしかけを作る必要があるのです。
そしてその「しかけ」こそが、組織マネジメントの科学である「マネジメントコントロールシステム」なのです。
併せて「組織成長の5段階説」も参考になるはずです。これはハーバード大学のグレイナー教授が発表した論文ですが、お読みいただけば東京中央銀行は、典型的な「第4段階」にあることが分かります。
▼参考になるコラム
▼参考文献
ピーターの法則 創造的無能のすすめ (2003/12/12) ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル 他 商品詳細を見る |