大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

モチベーションが上がる評価制度をつくるのは可能か?

突然ですが、みなさんは人事評価(人事考課)でモチベーションが上がったことはありますか?

 

残念ながら私にはほとんどそんな経験はありません。(むしろその逆でした)

 

そこで大変革期を迎えつつある「人事評価システム」の潮流について少し調べてみました。

 

評価されるたびに、評価する人もされる人もモチベーションが上がって成長できる。そんな制度が理想ですが、多くの会社では毎年膨大な時間をかけて人事考課の面接をするたび、社員のモチベーションを下げているのが実際です。

 

ただ、シリコンバレーの企業やGEはそんな問題を克服する新しい評価システムを作り出すべく動いています。

 

さらに以前ご紹介した通り、ICTの進化で評価制度と、社員をパワーアップさせる社内教育システムは切っても切れない関係になりつつあります。

 

flowone.hatenablog.com

さて、今後評価制度はどう進化していくのでしょうか?

 

 

■ KPI, KGI, OKR(評価指標の進化)

シリコバレー系の名だたるIT企業(Google, Linkedin, Adobeなど)で、新しい評価制度として、

 

「OKR (Objectives and Key Results)」

 

が使われており、成果を上げているようです。(Googleは1999年から採用)

 

www.kaonavi.jp


「それって何なの?」

ということで、調べて見たのですが、どの解説もいまいち。
KPIとOKRの違いがよく分かりません。
(多分書かれている本人もわかっていないのは、、、。)

 

また「KGI」(=Key Goal Indicator)というワードも出てくるのですが、こちらもKPIとほとんど同じ説明が書いてあるものばかり。

 

もともとマネジメントコントロールから出てきた概念なので、「結果コントロール(Result Control)」に分類される

 

「BSC(Balanced Score Card)」

 

のアップデート版だろうと推測しているのですが、まだまだ実態は不明です。

 

*マネジメントコントロールと結果コントロールについて 

www.flow-one.com

日本語の解説サイトはどれもイマイチ頼りないので本家の英語のサイトをサーチするといろいろな情報が出てきます。

 

ちなみにOKRを実際に採用しているLinkedINのホームページには下記のような説明があります。

 

https://www.linkedin.com/pulse/employee-performance-mbo-vs-kpi-okr-belal

OKR is a goal setting approach that is increasingly popular at high growth companies and replacing MBOs as a philosophy.

Objectives are what you and your organization want to accomplish. Key Results describe how you will accomplish those objectives, and measure whether they were successfully accomplished.

Example for OKR (Objective & Key results)

Objective:
To develop a workable model for planning

Key results:
Finishing presentation on time
Completing a sample set of 3 Month for objective & key results.

 

うーん、やはりKPIにブレークダウンしたObjectiveがくっついていると
しか思えません。そのObjectiveもMBOとの違いがよく分かりませんね。

 

動画で「Google OKR Implementation」という実際にOKRの
運用している方のプレゼン映像があります。

www.talentcove.com


私にはまだはっきりした違いは見えませんが、キーになるのは、

 

1)Objetivesをブレークダウンすることを明示的に入れている点

2)それを社員全体に共有する点

3)Key Resultsは70%程度が達成できるようにかなりストレッチして設定する点

のようです。

 

その他、マネジメントで世界最先端を走るGEが人事評価制度を刷新するという話もあります。
 

(引用)

GE社は、2016年度より、下記のように人事評価を改める。
(1)No Rating(レイティングの廃止)
(2)No Curve(正規分布の廃止)

 

ポイントは「評価のための評価」ではなく、より現場が成果を上げられるように進化させようとしている点です。

 

たしかに他人に「A」とか「B」とかスコアをつけられたくないですよね。

 

またスコアを無理やり正規分布にする必要も本来ないはずです。当たり前といえば当たり前ですが、それを実際にできる点がGEの強さなんですね。

 

余談ですが昔MBAのマネジメントに関わっていた時に、海外の大学スタッフと「絶対評価」と「相対評価」の哲学の違いで延々とディベートしたのを思い出します)

 

以上、人事評価制度の進化について少し考察しました。

破壊的イノベーションが「起きない理由」と組織成長マネジメント

言わずと知れた「イノベーションのジレンマ」のクリステンセンの講演録ですが、組織マネジメントの観点から面白い示唆が含まれています。

 

bizzine.jp


この講演録でクリステンセン氏は、イノベーションのタイプを

 

1)「破壊的(disruptive)イノベーション
2)「持続的(sustaining)イノベーション
3)「効率化(efficiency)イノベーション

 

に分類しています。


3の「効率化(efficiency)イノベーション」はちょっと新しい概念なので記事を読んで見ると、

 

「より少ないリソースでより多くの製品を作ることを目的とする
(のが)効率化イノベーション。(中略)効率化イノベーションはその特性として、雇用を減少させ、フリーキャッシュフローを増やす。」

とあります。「持続的(sustaining)イノベーション」よりも、投資効率に着目した概念なんですね。


そしてクリステンセンが言わんとしているキーポイントは、

 

ファイナンス主導で経営を行うと「破壊的(disruptive)イノベーション」には投資できなくなくなる」

  

つまり、企業規模が大きくなると、どうしても投資効率重視の経営姿勢になるため、投資効率の悪い「破壊的(disruptive)イノベーションは避けられてしまうのですね。

 

そしてイノベーションのジレンマ状態にズブズブはまってしまうというわけです。

 

まさに、これは成長段階説で有名なグレイナー教授のいう「第4段階」の現象として解説しているものと同じです。

 

flowone-lab.com

 

ビジネスチャンスの見つけ方の定石

雑誌やコラムで「ビジネスチャンスの見つけ方」がいろいろ語られる

のですが、要約してみると下記の3ステップになります。

 

1)お客さんはどんな問題を持っているか
2)その市場がどのぐらい存在しているか
3)自分にその問題を解決できるソルーションはあるか?


まず第一は「問題」を発見することですが、これを言い換えれば


「不満」

 

<不>の文字がどこに存在しているかを見つけることです。

(まさに「リクルート社」の社是そのものです)

 

言い換えれば「満たされていないギャップ」を発見し、そこを埋めることで差分を取るのです。


そして、一人ひとりのお客さんを集約した概念が「市場」です。

 

マーケットボリュームがどれぐらいあるのかを見極めることが
できれば、そこに時間やコストを突っ込んでいいのかがわかります。

 

そして、ありきたりではない、自分オリジナルのソルーションが提示できえば、競争力を持って戦うことができます。

 

ーーーー

上記に関連しますが先日、自動車修理で儲かっている社長さんとお話しする機会がありました。同社が専門にしてるのは

 

「雹(ひょう)でへこんだ車の修理」

 

なのだそうです。


「雹なんてそんなに降るんですか?」
「ちゃんと商売になるんですか?」

 

と興味津々だったのですが、日本には毎年数回かなり大きな雹が降るのとのこと。で、お客さんの自動車を預かっているディーラーやら中古車ショップは、雹が降るともう大変です。

 

一斉に手持ちの自動車のボディが細かく凹むわけですから、

 

「雹害車」

 

を直さないと商売になりません。

 

さらに雹は同一地域に一斉に降るので、その地域での被害車は一気に数万から数十万台にもなるそうで、修理工場も追いつかないのだそうです。

 

その上、変に修理をすると、「事故車」になって下取り価格が下落してしまいます。

 

ここまでの段階で、

 

1)お客さんはどんな問題を持っているか
2)その市場が存在しているか

 

は完全に満たしているのですが、問題はステップ3の

 

「自分にその問題を解決できるソルーションはあるか?」

 

です。

 

彼の場合は、若かりし頃にアメリカの雑誌を見ていてデントリペアという、特殊な修理方法の日本でのフランチャイズ権を取得したそうで、それを使うと通常板金屋の半分以下の工期で修理できるとのこと。

(しかも事故車扱いにならない!)


▼彼の会社ではないですがデントリペアの参考

デントリペアとは|デントリペア専門店 Y's FACTORY [東京都町田市]


そして、自動車保険で雹被害は補償されるのだそうで修理代が回収できないということもほとんどありません。


▼[雹(ひょう)が降ってきて傷がついた時](ソニー損保)

www.sonysonpo.co.jp


「おおー、すごい」

 

と唸ってしまいます。

 

ちなみに、海外から進んだものを取り入れてビジネスするのを

 

「タイムマシン経営」

「クロスボーダー型アービトラージ

 

と呼んだりしますが、まさにそのど真ん中のビジネスモデルです。でも、こういうことを考える人はたくさんいたはず。

 

で、勝負を決めるのは実際にアイデアをベースに実際に相手のコンタクトをとる「行動力」という結論になります。


当たり前と言えば当たり前!

 

また当初は自分しかできない解決法を提供することで「ブルーオーシャン」を謳歌できたビジネスでも、時間が経つにつれてライバルが増え、血の海に染まっていきます。

 

したがってビジネスモデルに常に改良を加えたり、イノベーションを起こす必要があります。

 

そして、その先には、

 

4)OPT(Other People’s Time)を使う
5)OPM(Other People’s Money)を使う


があります。人生は有限なので、人を雇うこと(=OPT)でビジネスシステム
を作って拡大し、さらに銀行や市場からファイナンスを受けて(=OPM)、
レバレッジをかけるという話です。

 

この5ステップを確実に踏むことが大切なんですね。

 

最後におさらいです。

1)お客さんはどんな問題(不)を持っているか
2)その市場がどのぐらい存在しているか
3)自分にその問題を解決できるソルーションはあるか?

4)OPT(Other People’s Time)を使う

5)OPM(Other People’s Money)を使う

 

 

”デジタル眼”を手に入れつつあるリアル研修(ブレンディング学習の進化)

eラーニングアワード2016で、今回一番印象に残ったのは「ブレンディング学習(リアル×Eラーニング)の進化」でした。

 

これまでいわゆる「研修」と「eラーニング」は違うもの、もしくは対立概念として捉えられることも多かったのですが、それがここにきて急激に融合してきました。

 

その要因は大きく2つあります。

 

1)研修にセンサーなどが簡単に導入できるようになった

これまでの研修の世界は、講師が参加者(教室)の空気を機敏に読みながら、臨機応変に進めるのが一般的でしたが、ウェアラブル端末で学習者のライフログをとったり、集中力を測れるJINSのメガネ(MEME)にようなIoTデバイスが気軽に利用できる環境になってきました。

 

jins-meme.com

 

これは「新しい眼」を手に入れつつあるということです。

 

たとえば、これまで(現在)は、実施した研修を振り返ってPDCAサイクルを回そうとする際、講師が特に印象に残っているところを中心に改訂作業をしたり、受講生のアンケート結果を分析するぐらいしか手がありませんでした。

 

ところが、今後は「講義の内容(フロー)」と「受講生の時間別集中力データ」を突き合わせて

 

32分目の4Cを説明しているパートでは、81%の参加者が集中できていないので、内容を改善した方が良い

 

といったことがデータをベースに検証できるにようになってきています。

 

この辺りは、日立がマイクロセンサーを使って、社員のライフログを取り、そのビッグデータからオフィスの生産性をアップさせる手法を研究している「データの見えざる手」で語られる世界観や、

 

ソフトバンクの孫さんが、ビッグデータ、AI、ネットワーク、IoTなどによって到来する「シンギュラリティ」の時代に向けて、その「眼」となるARMを買収し、布石を打っているのと同じです。

 

今日の生物の多様化は、5億5千万年前におこった「カンブリア爆発」と呼ばれる時期に集中して起こっていますが、その要因は生物がはじめて「眼」を手に入れたからであるという有力な仮説があります。

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

 

この「カンブリア爆発」が 教育テクノロジーの部分で急激に起こっているのです。

 

2)学習プロセスを統合して管理できるようになった

学習理論では、社会人の学びはおよそ「70:20:10」割合で構成されていると言われています。


70%は、実際の経験(OJT)を通じた学び
20%は、周りの人からのフィードバックや観察による学び
10%は、講義など正式なトレーニングを通じた学び

 

ただ、これまでの研修は、どうしても10%の部分しか管理できませんでした。

 

したがって、研修の効果を測る指標としてよく知られているカーク・パトリックが提唱した評価モデルの1、2ぐらいしか実際にはデータが取れませんでした。

・レベル1:Reaction(反応)
受講直後のアンケート調査などによる学習者の研修に対する満足度の評価

・レベル2:Learning(学習)
筆記試験やレポート等による学習者の学習到達度の評価

・レベル3:Behavior(行動)
学習者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価

・レベル4:Results(業績)
研修受講による学習者や職場の業績向上度合いの評価

カークパトリックの4段階評価法 | 日本イーラーニングコンソシアム

 

ところが、これが学習ログがデータ化により統合的に管理できるようになってきたのです。

 

例えば、事前にeラーニングを受講してもらい、反転学習的にリアル研修を受けてもらった後に、事前学習のパフォーマンス(かけた時間、クイズの成績、発言など)と、研修でのパフォーマンスを突き合わせて、容易に比較/相関分析できるようになっています。

 

実際、今回のイベントの発表では、「事前にeラーニングをちゃんと受講した受講生の方が、リアル研修でのパフォーマンスが最大3倍以上高い」というプレゼンもありました。

 

また

 

「人は時間が経過するとどれぐらい忘れるか」

 

を証明したエビングハウス忘却曲線という有名な実験がありますが、これもスマホなどによる、研修後の学習フォローアップなどで、定性的に測ることができるようになっています。(したがって、どれぐらいの頻度でフォローアップのリマインドをすれば、確実に記憶に定着させられるかを科学的に検証できるのです。)

 

忘却曲線 - Wikipedia

 

さらに企業が社員の能力を管理するために導入している人事管理システム「=TMS( Talent Management System)」と、研修やeラーニングの学習履歴を蓄積したデータベース(LRS/Learning Record Store)をつなぎ込んで統合し、

 

この研修と、この仕事の成果は0.79の相関性がある

 

ということを具体的に検証できる環境もできてきています。

 

学習者のインフォーマルラーニング(職場での上司や同僚などとのちょっとした会話も含む非公式な学習)も、定性的データが取れるようになってきているので、おそらく近い将来、上記の「70%、20%、10%の学習」の全てを一気通貫で管理できるようになるはずです。

 

現状では、まだまだセンサーから取れるデータのはゴミ(ノイズ)も多く、各プラットフォームの連携性がそれほどよくないので、しばらく時間がかかりそうです。

 

しかしxAPI(TinCan API)といった学習データを記録する標準フォーマットのようなものが世界的に普及して来ているので、統合&実装は時間の問題です。

 

AIが分析データをもとに学習者に個別のアドバイスやフィードバックを出したりするような取り組みは、部分的ですがすでに始まっています。

 

近い将来、講師役自体をロボットやVR/AR上のキャラが務め、参加者の個別データを事前に把握し、ライフログや表情認識をリアルタイムでチェックしながらアダプティブにトーク内容を変化させるスーパー講師が出てくるでしょう。

 

もちろん、一足飛びに生身の講師をアービトラージすると言うよりは、アシスタントに近い役割になると思いますが。

 

また以前に自分のレジュメ(CV)をベースに、あなたが学習すべきeラーニングコンテンツを自動的にレコメンドしてくれる転職サイト「LinkedIn」が始めた

 

リンクトインラーニング」

 

をご紹介しましたが、この世界観が、社内外、大学などあらゆるところで広がってくることになりそうです。

 

映画「マトリックス」で主人公のネオが、必要な知識(格闘スキルや操縦スキル)をクラウドからダウンロードし、数秒で身につけるシーンがありますが、本当にあれに近い世界が実現しそうです。

マトリックス (字幕版)
 

 

 

eラーニングアワード2016 雑感

eラーニングアワード@御茶ノ水に参加。


知っている人が講演していたり、よく知っている会社の最新事情がわかったりして面白い。

なんとなく前職ではグロービスさんはライバル的な存在だったが、今はニュートラルに注目している会社の一つ。

 

今日のプレゼンを聞いて、本格的なオンライン教育の世界に参戦してきており、ゲーミフィケーションやブレンディング(研修とデジタルの組み合わせ)、Learning Analyticsやソーシャルラーニングの取り組みには、「結局そこにくるよね」と共感できる部分が多かった。

 

このオンライン教育のトレンドは、提供者側の技術ハードルがどーんと下がったという要因もあるけど、ユーザー側がオンラインで学ぶということに違和感がなくなってきた点が大きいと思う。

 

この動きは大学や研修会社全体を巻き込んでどんどん加速するのは確実なので、むしろ、まったく何もやってないと10年後ぐらいには淘汰されるリスクもある。(そのうちペッパーみたいなロボットが50%ぐらいの標準化された内容を「先生」として教える日もくるだろうし)


そういう意味では、僕もそれなりに最先端を走ってきたなあという感じはあるけど、さらに先に行きたいところ。刺激を大いに受けた。

 

www.elearningawards.jp

「学習する組織」に対する恐れを捨てるのが第一歩

多くの会社って本当に「学習する組織」を望んでいるんでしょうか?

それを考えさせられる記事です。

 

mirai.doda.jp

 

通常の会社が規模を追おうとするとき、業務を標準化して一気にスケールさせる方が目的に見合う場合が多いのではないでしょうか?

 

たとえば採用時にクリエイティブとか自主性云々を言う割に、実際に入ってみると、言われたことをそのままやってくれる方がありがたいというのがマネージャーたちの本音だったりします。

 

もちろん職種ポジションによっては、内発的動機に基づいてガンガン考えてもらった方が業績に結びつく場合もあると思いますが、現状、そういうポジションを大勢に用意できている会社は多くない気がします。

 

だから「学習する組織」ってコンセプト的には合意する経営者が多いと思いますが、実際に自分の会社で社員がやりすぎると、自分勝手に動いたり、カオス状態になってコントロール不能になるのを恐れているので

 

「適度にやってね」

 

という感じでは。

 

そういう意味では、記事のタイトルにある「真面目にやるほど学習する組織にならない」のではなく、実は「学習しない組織」こそが本当は望んでいることであって、その潜在的な欲求が正確に実現しているように思えます。

 

経営者やマネージャーが「社員に任せる」「社員に学習させる」という行為に対しての恐れを克服するところが第一歩です。

 

その意味では、こちらの一冊がおすすめです。

 

 リーダーシップのあり方が「Face to Face」ではなく、共通の目標に向かって歩く共に歩く「Side by Side」の関係であることがわかります。

感じるマネジメント

感じるマネジメント

 

 

部下に仕事を丸投げして、ダメ出ししてもいい条件?

電通で新入社員が過労死する痛ましい事件が起こった。

www.itmedia.co.jp


一連の報道を見ていると、問題の本質は、残業時間が長いとか短いという点ではなく、

 

部下のレベルに応じた指導をするのが上司の役割である

 

ということを直属の上司や部長が明確に認識できていなかったのことであることが見え隠れする。


だから記事に出てくる経営学部の先生のコメントなどは、そもそものイッシューの捉え方に誤りがある。


部下に仕事を丸投げしておいて、

 

「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」」

 

などとダメ出ししていいのは、部下にそれなりの基礎スキルとメンタルタフネスがあって、本人の内発的動機に基づいて仕事をしているという前提がある。

これはマネジメントコントロールにいう[Result Control]の適応条件と同じだ。


だったら「抱え込まずにやめたらよかったのに」という人もいるかもしれないが、介護うつとか、ドメスティックバイオレンスと同じで、

 

当事者としてど真ん中にいると近視眼的になって、他の選択肢が見えなくなってしまうことがよく起こる。


関係者が初歩的なManagement Control とかSituational Leadershipを学んでいれば、こんな悲劇にはならなかったように思える。

 

前途ある人々がかけがえのない命を落とすようなこの種の事件が、一刻でも早くなくなることを願わずにはいられない。

 

僕にできることはマネジメントコントロールなどの経営技術を広く普及させることぐらいだ。