大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

利益追求パラダイムの進化(「フォード前」と「フォード後」)

フォードの始めたベルトコンベアによる自動車の組み立て方式は、当時の大多数の人にとっては理解しがたかったそうだ。

 

なぜなら、当時の勝ちパターンは、

 

独占的な地位を得た後、生産を抑え、価格を上げること

 

だったら。これに対し、フォードは逆に考えた。

「利益を上げるためには、価格を引き下げ、生産量を増やすべきだと考えた。この大量生産方式の発明が、のちの生産方式を支えた」

 

すでに起こった未来―変化を読む眼

すでに起こった未来―変化を読む眼

 

  

利益=価格×量 

 

であると考えると、

 

フォード前:利益↑=価格↑×量↓

フォード後:利益↑=価格↓×量↑

 

の違いがあった訳だ。今から考えると当たり前じゃん、と思うが、当時はパラダイムシフトだったのだろうと思う。

 

市場が渇望しているプロダクトなら、20〜30回に一回のホームランを狙うより、ヒットを量産するイチロー型の戦法の方が、トータルで得点率(利益)は高くなるのだ。

 

昨年だったか、ホクレンがチーズの生産量を意図的に減らして、チーズ不足を演出し、価格を上げている実態がドキュメンタリー番組でスクープされていたが、こういう発想は「フォード前」に近い。(それで酪農家が儲かっているのならまだ分かるが、逆に方向に進んでいるのだから、笑えない話だ。)

 

もちろん時代は、

 

大量生産から少々多品種

量から質

 

へと変わってきているが、

 

「価格を抑えて、量を追う」

 

という戦略は「固定費に近いITインフラをいくら使い倒すか」という勝負になっているクラウドサービスにはそのまま当てはまると思う。

 

人力が関わるものは「量を追うと質が低下する」のが常識だが、ITサービスは必ずしもこれに当てはまらない。むしろ、限界費用はゼロに近いので、そこからキャッシュフローが潤沢に生まれれば、その分、さらにインフラ投資が進むという好循環が生まれる。

 

プラットフォーマーはまさにこの公式通りに成長しているように見える。 

 

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ちなみにヒントをいただいたのはこの本。

朝10時までに仕事は片づける―モーニング・マネジメントのすすめ

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限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭

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