今週いかにも国際政治的なヒリヒリするニュースがありました。
「インド スリランカの国際空港の運営権めぐり協議 」(NHK)
ご存知の通り、中国とインドはあまり仲が良いとは言えません。そこでお互いにいろいろな戦略を展開しているのですが、その中でよく知られているのが「真珠の首飾り」戦略です。
軍事を含めた海上交通路戦略なのですが、それがインドを取り囲む包囲網のようになっており、インドは当然それを快く感じていません。
インドの首元にあるスリランカは、内戦終結のために中国に対して膨大な借金をし、その上、公共工事も中国からの借金(年利6.0%以上)でまかなって、南部のハンバントタの港を開発しました。
当然ながら、歳入の95%を借金の利払いに当てなければならないほど財政がボロボロのスリランカに借金をスムーズに返せるはずもなく、ハンバントタ港を中国に99年間にわたって貸し出すという形になったのです。(なんとなく財政破綻したギリシャに似ています。)
言い換えれば「借金のかたに取られた」のですが、そもそのなんでスリランカもこんな暴挙を行なった言えば、中国と蜜月状態だったラジャパクサ前大統領が、かなり賄賂を受け取っていたことが分かっています。
中国側が、上記のハンバントタ港を軍港利用する計画がその後判明し、住民から反対運動が起こっていますが、おそらく後の祭りです。
一方インドもここに中国の軍事拠点を作られることを相当懸念しています。(ケネディとフルシチョフがやりあった「キューバ危機」における、アメリカとキューバとの位置関係と同じだからです。)
今回のニュースが面白いのは、そのハンバントタ港の近くにある、ハンバントタ「空港」をインドがリースで借りるという交渉なのです。
23日行われたインドとスリランカの首脳会談で、スリランカ南部にある国際空港の運営権のインド側へのリースが議題だったことがわかり、インドが近隣の港の運営権を獲得した中国の動きの監視を狙って協議を進めているものと見られます。
ハンバントタ空港は、中国から借金して作られた最新の空港ですが、ぺんぺん草が生えるぐらいかなり寂れていて、飛行機がほとんど飛んでいません。1日の利用者も10名程とのことで、そもそもニーズがないのです。
これも「なんでそんなところに空港ができたか」というのは明確で、ラジャパクサ前大統領の地元だからというわかりやすい理由です。(かつての?)我が国の某党の政治家を彷彿とさせます。
ラジャパクサは前回の大統領選挙で汚職を追及されて敗北し、現在はシリセナ大統領になっています。
ハンバントタ空港をインドに貸し出し、国内の軍事的なバランスを取ろうという戦略は、危ういですが、かなり高度な政治的な駆け引きであろうと思います。
「インドが世界で最も利用者の少ない空港を買収、中国をけん制か」(Business Insider)
今後もスリランカから目が離せません。