人事教育関係者の間ではかなり気になるニュースがありました。
▼ゼリア新薬の22歳男性「ある種異様な」新人研修受け自殺 両親が提訴
製薬会社のMR(いわゆる営業)の新人教育において、いわゆる「スパルタ」系の研修が連日行われ、過去のトラウマを全員の前で告白させられた新人さんが
そのあと自殺したというものです。
研修講師が「鬼教官」になって、学生気分の抜けない新人の鼻っぱしらをへし折り、
”真っ白”な新人を染めあげるといういわゆる
「白い布仮説」
に基づいた研修なわけですが、ある一定の効果はあったのだろうと推測できます。
日経ウェブサイトにも好意的に紹介している記事があります。
▼研修最前線 ビジネスグランドワークス、大きな返事で職場に活(2015)
ただ、この種の個人の内面にまで入り込んで心理操作をしようとする研修は常にリスクを孕んでいます。
「しつけ」や「理念教育」と「洗脳」「「パワハラ」
の境界はかなりあいまいだからです。
「戸塚ヨットスクール」をはじめ、2010年にメディアでバッシングされたくら寿司に新人教育、(新人教育ではないですが)ワタミの裁判や、電通の新人自殺事件まで、
問題の本質は今も昔も同じ気がします。
そしていつの時代も
「それぐらい耐えられないと社会人として通用しない」
「パワハラ洗脳教育はやめろ」
と意見は真っ二つに分かれます。
いずれにしろ結果として起こったのは一人の本当に尊い命が失われたという「事実」であり、その過失を客観的に国が認定したということ。
そしてゼリア新薬と研修を請け負った会社、その講師を相手どって、安全配慮義務違反や不法行為に基づく損害賠償、約1億円を求める訴訟を東京地裁に起こされたということです。
その事実の重大さを当事者が真正面から受け止めて、対処することが最初の一歩です。
もちろん賠償が絡んでくるので、おいそれとは過失を認めらないのでしょうが、「誰それが悪い」となすりつけあいをしていたら研修でよく強調される「自責」の念を持っていないということ。
こういう時こそ”真摯さ”が問われるわけです。
私も大手の新人教育の講師として何度か登壇したことがありますが、新人はまだまだ社会に揉まれていないので、講師の言葉を額面通り受け取ることがあり、かなりセンシティブです。
したがって、中間管理職の研修以上に講師にはかなりの力量が求められることを身を以て体験しました。
このような悲劇が繰り返されないことを祈るのみです。
誰にどのような教育サービスを提供すべきかについては、ハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が提唱した
「シチュエーショナルリーダーシップ」
に答えがあると思っています。ぜひ近日中に考えをまとめてご紹介できればと思っています。