大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

ユナイテッド航空事件に見る社内にうごめく3つの力

ユナイテッド航空の引きずり下ろし事件が膨大な賠償金で和解したようだが、これは社内の3つの力(「効率性」「イノベーション」「おもてなし」)のバランスのとり方に失敗してしまった分かりやすい事例と言える。

 

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ご存知の通り、多くのエアライン会社はLCC(ローコストキャリア・格安航空会社)の登場によって厳しい状況にある。これは多くの利用者が「価格」を基準にチケットを購入することを意味している。

 

もちろん、同じような価格ならば、マイレージやサービスレベル、CAのホスピタリティなど選択基準に入ってくるが、価格が圧倒的に安ければ、それが第一の選択基準になってしまうのはある程度仕方がない。

 

このように「価格」が判断の大部分を占める業界で戦うならば、どうしても価格に最も影響のある「効率性」に偏重した経営をせざるを得ない。

 

もしあなたがユナイテッドの経営者だったとして、手元にある一定のキャッシュがあり、それを使って最大限の利益を上げることをミッションとするなら、その資金を従業員の「おもてなし教育」に使うだろうか、それとも「さらなるコストダウン」に使うだろうか?

 

経営者は株主に預かった資本を最も効率的に増やす使命を帯びており、それができなければクビになるので、ROI(Return on Investment/投資回収率)が高い方にチップを貼るのが当然の決定となる。

 

したがって、この場合の結論は「コストダウン」になる訳だ。

 

しかしここに落とし穴がある。「効率性」「イノベーション」「おもてなし」「おもてなし」の3つは、それぞれが少なくとも最低限の基準を満たしていないと命取りになってしまうのだ

 

価格で圧倒的に勝っていて「ブルーオーシャン」を謳歌していたとしても、他社が同じような価格で戦いを挑んんでくる段階になると、途端に苦しくなる。

 

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ユナイテッドはおそらく、この3つの力のバランスを欠いてしまったのである。

 

自社の強みは何か?その強みに沿う形で「効率性」「イノベーション」「おもてなし」への資源配分をバランスを決める必要がある。

 

だが、あくまでバランスなのであって、他に力を入れなくて良いということではないのだ。