大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

非営利組織と同等の動機づけが求められるこれからの会社

以前に大学のゼミで講演させていただいた際、学生さんから

「就活先の会社の社長さんに、

ボランティア活動と営利活動の違いについてどう思うか聞かれたんですが

どう思いますか」

という質問を頂いた。

ちょうどドラッカーの「マネジメント」に、その答えにあたる一説を発見した。(やっぱりドラッカー先生は偉大です。)

「動機づけ、特に知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なければならない。挑戦の機会が与えられなければならない。組織の使命を知り、それを最高のものとし、献身できねばならない」(「マネジメント」)

引用元:ドラッカーマネジメント」(Google Books)

改めて自分の経験を思い出すと、社会人になって初めて勤めたのが国際NGOだった。仕事内容に大きなバリューを感じていたので、給与などの待遇はほとんど気にならなかった。

同僚や先輩には国際政治やら平和構築の修士や博士がゴロゴロしたが、みんな民間に比べると半分以下の給与(しかも雇用保険なし、赴任地は紛争地)でガンガン仕事をやっていた。

その次に務めたのはベンチャー(民間企業)だったが、いま改めて両者を比較するとマネジメントスタイルには結構大きな差があったなと思う。

NGO(非営利組織)で働く人は、金銭的なインセンティブは働く動機として強くないので、マネジメントは

「スタッフの内発的な動機を邪魔しないか」

がキモになる。

事実、同僚が辞めていったのも、待遇がいいとか悪いという話ではなく、自分が価値があると思うプロジェクトを実施できないからだった。

(もちろん基本的生活ができないほど待遇が劣悪だったり、いつまでもスタッフの内発的動機に頼りすぎてマネジメントがめちゃくちゃだと、それらが「衛生要因」となって離職率を上げるファクターになることもある。)

一方民間組織でも動機付けは極めて重要だが、非営利団体に比べると金銭的なインセンティブの重要度がぐっと高い。

少々語弊があるが、内発的動機が満たされなくても、安定してお金を貰えるならば仕事を辞める確率は、非営利団体に比べて低い。

もっと平たく言えば、少々上司が気に入らなくても、お金がもらえるなら我慢できるのだ。

ただし、ドラッカーを読んでいると、

これからは民間企業でも金銭的インセンティブ(外発的動機づけ)重視から非営利団体並みの「内発的動機付け」を重視する体制に移行しないとダメなことがわかる。

むしろそうしないと

実力のある人材(プロフェッショナル)ほど会社を抜けていき、しがみつかなければならない人だけが後に残ることになる。

当然ながら会社は競争力を失う。

さすがドラッカー、未来を予見しているなあと改めて思う。