大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

孫さんが効果的に使ったマネジメントコントロール

「プレジデントオンライン」のコラムを興味深く読みました。

「出版する雑誌8誌のうち7誌が赤字に。廃刊するか」

孫正義が出題、思考力を磨く設問

PRESIDENT 2011年3月7日号

孫さんの答え自体はともかく、このコラムで最も面白かったのは下記の部分。

1)(孫さんが各雑誌編集長に伝えたセリフ)「これより3カ月以内に黒字にならなかった雑誌は、すべて廃刊します」

2)「口から泡を飛ばし、大げんかをした結果、勝負の3カ月間は毎週会議を開き、編集長には各雑誌の損益計算書を提出してもらうことにしました。編集長という人たちは、面白い誌面をつくることには才能を発揮するのですが、利益確保には鈍感な人が多かった。ですからコスト意識を徹底したのです。」


1)は「結果コントロール」。納得性の高い客観的な評価指標を出しました。もちろんその根拠となる熱い思い(下記)も説明していますから、そこは多分に「環境コントロール」的です。

出版事業という「命」が奪われかねないのに、編集長たちは「自分の雑誌」しか頭になく「切断するな」と言う。だから僕は怒鳴った。「おまえらの(雑誌への)愛情は偽物だ。俺は本当に出版事業を愛しているんだ」と。出版事業をなくすより、片足、両足を切っても生きていることのほうが大事だ、と。

2)は「行動コントロール」ですね。「利益を考えろ!」と精神論を言う前に、「損益計算書(P/L)を出せ」と指示した。これが間接的にコスト意識を芽生えさせたんですね。こういうマネジメントコントロールの使い方はかなり高度です。

さすが孫さん!