国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)の最終レポートは、原発事故の原因が、組織マネジメントに起因する
「明らかな人災」
であったと明記しています。
事故を巡っては、東電や政府、民間の事故調も発足しましたが、
・委員の専門性
(弁護士、検事、原発専門家、ノーベル賞科学者、経営コンサルタントなど)
・ビジネス上の利害関係
(調査している人が誰からお金をもらっているか)
・国政調査権の有無
を見ても、もっとも客観的なレポートを出している(出せる)のは、国会事故調だろうと私は考えています。
国会事故調のレポートは、原発の安全対策強化に反対していた人物関係をかなり綿密に調査しています。
原子炉メルトダウンの主たる事故原因は全電源喪失という物理的要因ですが、そういった事故を防ぐための規制に全面的に反対してきたのが電気事業連合会(電事連)によるロビー活動である事が、すでに明らかになっています。
ちなみに電事連のドンと言われた勝俣東電元会長は、事故調の公開聞き取り調査(動画アーカイブ)で、
「私は知らなかった。組織内で情報が上がってこなかった」
と安全対策における自分の責任を否定しています。
電事連の長であり、東電の最高責任者であった人物のこういう態度に被災者は怒り心頭だったろうと思います。
一部には事故原因を原発構造に矮小化して、それを直したからもういいでしょ、と言いたいような動きもありますが、問題の核心はそこではありません。(それでは飲酒運転事故において、酔って運転したドライバーを責めずに、安全装置を追加したから大丈夫といっているのと同じです)
またマスコミや専門家を含め、誰が誰からお金をもらって発言しているかを慎重に見る必要があります。
国会事故調が指摘しているようには、核心は
「組織運営の仕組み」
にあります。
原発再稼働を議論する前に、各電力会社が何をどう反省して、どう組織マネジメント上の対策を打ったのかをはっきりさせるのは最低条件だと思われます。(組織の問題がしっかり解決すれば、同じ原発を運用するにしても安全性が格段に向上します。)
どんなに完璧なマシンを作っても、それを動かすのは人間であり、それを取り巻く自然は毎日のように変化します。だからこそ組織の問題が大切なのです。
最近もこんなニュースが流れています。
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「原子力規制委「何を学んだのか」と厳しく批判」(2014年4月23日 4時46分 NHK)
「原子力規制委員会は、電力各社が原子力発電所の安全性を高めるために設けた団体と初めて意見交換を行い、田中俊一委員長は「福島の事故で何を学んだのか、電力会社がどう取り組んでいるのか全く発信されていない」と厳しく批判しました。」
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はやく本質的な問題を見極めて、次のステップに進んで欲しいと切に願います。
そのためには、国会事故調の「提言」を誠実に実現するしかないように見えます。
現在メディアでは韓国客船「セウォル号」沈没のニュースが毎日のように放送されていますが、対岸の火事には見えません。
【追加記事】
「“推進派”が交代求め…原子力規制委「No.2」退任へ(05/27 16:36)」
自民党の原発推進派が交代を求めていたナンバー2の退任が固まりました。
政府は、原子力規制委員会の委員に原子力を推進してきた原子力学会の元会長・田中知東京大学大学院教授と石渡明東北大学教授を充てる人事案を衆参両院の議院運営委員会に提示しました。この人事には国会の同意が必要です。9月の任期満了に伴って退任が固まったのは島崎邦彦委員長代理と大島賢三委員で、島崎氏に対しては、地震や津波に関する原発の規制の基準が厳しすぎるとして、自民党の一部から交代を求める声が出ていました。
◎原子力規制委員会の報告書が「ストロンチウム」という言葉に当て字を使用して、ネット工作をしていることが判明しました。
*だんだんと規制体制が骨抜きにされ「自民」「電力事業者」「規制当局」で構成させるベタベタの体制に戻るのだとしたら残念なことです。