大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

スーパーマーケットの巨大化とその課題

先日、岡山の実家に帰った際、近くのスーパーに食材(刺身)を買いにいきました。

まずは中型スーパーの「ザ・ビッグ」へ。ここは以前に「MAXValu」(マックスバリュー)という店で、その後リブランドしたイオン系の店舗です。

そこそこいろいろな商品があって安いのですが、残念なのは刺身の種類が極端に少ない事。

私は父から頼まれた

「いさきの刺身」

が買いたかったのですが、一般受けするマグロやイカはあったものの、それ以外はありませんでした。

しょうがないので、その近所にある「マルナカ」へ。

マルナカ」は、中四国+関西を中心に展開する「鮮魚」を得意とする中堅スーパーです。

幸い、目当ての刺身はあったものの、どうも一般商品のラインナップが「ザ・ビッグ」に近い気が・・・・

レジでレシートを見たら、やっぱり「イオングループ」になっていました。


●東京でも同じ現象

私の住む東京中野でも同じ現象が起こっています。駅前にあった格安スーパーは、いつの間にか「まいばすけっと」と名前を変え、イオン系になりました。

さらに、その先にある「つるかめストア」も、親会社の英テスコがイオングループに売却して、最近イオン系になっています。

このような食品スーパーのグループ化は、今後もどんどん進んでいくのだろうと思います。PBブランドの開発力や、商品ラインナップ、価格競争力について「規模の経済」で負ける中小の独立系スーパーはかなり厳しい戦いになります。


●標準化の罠

イオンやヨーカドーのように、業務を標準化し、規模を拡大することはビジネス戦略の鉄則と言えば鉄則です。

しかしそこには、ありきたりなサービスや、画一的な商品しか提供できなくなってしまう「コモディティ化」の罠が潜んでいます。

実際、日経ビジネス(2014)の「イオン特集」によれば、「トップバリュー」などのPB商品が消費者に飽きられ、NB(ナショナルブランド)を減らしてしまったイオンから客離れが起こっているとの事。

また前述の「マルナカ」の解説記事もあり、地元の魚市場に圧倒的な影響力を持っていたマルナカが、イオン傘下になってから鮮魚売り場を大部分を本部調達のマグロやサーモンなどの「売れ筋」に切り替えざるを得ない状況になり、地元から水揚げ量の少ない魚や、いい鮮魚を仕入れる調達力が落ちているとのことでした。

「いさきの刺身」にような通好みの刺身が少なくなってきた理由もよくわかります。


●【マネジメントコントロール】ポイントは「不確実性」

経営って、結局「不確実性」をどうコントロール(許容)するかに帰結するのではないかと思っています。

そのための方法は大きく

1)組織を理念でつなぐことで不確実性をコントロールする方法、

2)ルールやマニュアルで不確実性を押さえこむ方法

の2つです。

例えばスーパーマーケットは仕入れを安定させる(=不確実性を排除)ために、巨大化した方が一般的に有利です。

また安売り競争や人の入れ替わりが激しいので、時間やコスト面をかけてパートさんに理念教育するより、最低限の教育を行って後は「ルール/マニュアル」をベースに、管理システムを機械化した方が不確実性が下げられ、競争力が上がります。

そういう理由で、大手スーパーの巨大化が進んでいるのっですが、作業の標準化(マニュアル化)が進み過ぎるとメンタルの問題(うつなど)が起こったり、一人ひとりのスタッフの思考力が落ちてしまって顧客ニーズに対応できなくなり、長期的な競争力を失ってしまうリスクを抱えてしまうのも事実。

人間は適度に驚いたり悲しんだりするような喜怒哀楽を伴う「不確実」状態に置かれないと、精神の健全性を保てないのかも知れません。

おそらく今後のマネジメントは不確実性やモチベーションのコントロールが焦点になるのではないでしょうか。

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