大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

自分を演じさせているドラマを意識する

ただいま組織マネジメント/組織心理を研究中ですが、その中で、気にかかっているのが「演じる」という話。

今回のメルマガではこのテーマについて、少し深く考えてみます。

一昨年出版した「プロフェッショナルを演じる仕事術」(PHP)では

”演じる”

というのがまさにキーワードだったのですが、「演じる」という行為が組織の中でどう機能しているのかが、最近分かってきました。

●冷淡な母親に育てられた子どもはどうなるか?

ミネソタ大学上級特別研究員のエリクソンの調査によれば、冷淡な母親に育てられた子どもは、2つの方法で、それを他人との関係構築の際に踏襲するそうです。

1)自ら他人に対して冷淡な態度をとる

2)他人が自分に対して冷淡な態度を取るように仕向ける

1)は、分かりやすいですね。

問題なのは2)です。冷淡な母親に育てられた子どもは、他人が優しく接してきても、わざと嫌われるような行為をして他人に「冷淡な人」を演じさせるのです。

なぜか?それが本人の潜在的セルフイメージだからです。

「母親に受け入れてもらえない」のは本来つらい経験のはずなのに、それが当たり前になっていて、他人とも同じような人間関係を無意識に構築しようとしてしまうのです。

その人に関わろうとしている他人から見れば、せっかく優しくしているのに失礼な態度をとるので、

「なんだよ!優しくしてるのに」

と憤る訳ですが、それはまんまと

「冷淡な人を演じさせられている」

のです。そして冷淡にされた本人は、

「やっぱり、私は愛されないんだ」

と無意識に確認して、屈折した安心感を得ようとするのです。(表面上では、つらいと思っているのに。。。。)

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● 宝くじで億万長者になった人の多くは破産

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そんな統計データが世の中にあるそうですが、もし、これが本当だとするなら似たような理由かも知れません。

他人に騙されて破産するというより、

「私は本来、億万長者なんかじゃないはずなのに」

という潜在意識が、自分を騙すような人を引き寄せ、そして本当に騙されるという現実のドラマを自分で作り出している可能性があります。

これこそが、自分でドラマをつくり、自分も他人もそれにはまり込んでコントロールされるという「コントロールドラマ*」の状態なのです。

*エニアグラムを勉強した方はご存知の方も多いかも。

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● マネジメントへの応用

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組織で働いていると、いろいろな「コントロールドラマ」の力を感じますし、他人がコントロールドラマに陥っているのを見かけます。

何年も「いじめっ子といじめられっ子」の関係を続けているのは、実が本人同士がそういう役割にはまっているのです。

言い方を変えれば「いじめっ子」が周りの人に「いじめられっ子」を演じさせるような態度を取り、それを無意識に受け入れることで成り立っている関係なのです。

逆に「いじめられっ子」(部下)自身が、無意識に「いじめっ子」(ボス)を求めているパターンもあります。

このドラマから抜け出す方法はただ一つ・・・・

「自分が何を演じているのか」を自分で客観的に認識し、意識的にコントロールすることです。

ぜひ、定期的に自分は外部の力のよって何かを無意識に演じていないか振り返ってみてくださいね。


メルマガで配信した文章を抜粋して掲載しています。

http://www.flow-one.com/mailmag.html