大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

宗教改革とグレイナーの組織発展論が似ているところ

以前に「大統領選とキリスト教」というコラムで、16世紀にヨーロッパで起こった宗教改革について書きました。

当時、宗教改革の中心人物であったルターは贖宥状(免罪符)批判を巡って、

なんか最近の教会っておかしいよね。もう一度聖書に戻って、本当にそこに書いてある事を、みんながちゃんと理解して、きちんとしたキリスト教を信仰しようよ

といういたってマトモ(というか普通)な主張をしていました。

実際に、当時は聖書は誰でもが自由に手に入れて読めるものではなかったので、教会関係者が「聖書はこう言っているんだ」といったら、庶民はそれを信じるしかなかったのです。

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ところが教会内にはイエスというカリスマの権威を利用し、庶民が無知なのを利用して、あくどい金儲けをする輩や、教会内でもドロドロした覇権争いがおこっていました。

つまり腐敗していたのです。ドイツで売り出された贖宥状などは、まさにその最たるものでした。

そのような状況を憂いて、ルターは庶民でも聖書を読めるようにドイツ語訳するなど、原点回帰運動のきっかけを作ったのです。(当然、カトリック教会はこれを潰しにかかりましたが。)


このような動きは、実は経営学者のラリー・グレイナーが主張した「組織発展の5段階説」とほぼマッチしているなと感じます。

具体的には、組織が拡大する過程で官僚化が進み、「第4段階」で組織が停滞してぐちゃぐちゃになっているのが、当時の教会に近い状態だったのではないでしょうか?

会社でも第4段階で「原点回帰運動」が起こります。成長につれ、だんだんと経営理念は忘れ去られ、ピラミッド組織を形成して権威主義となり、政敵の潰し合いのような社内政治が起こります。

当然ながら、そうなってくると組織がだんだんと迷走しはじめます。その動きが行くところまで行くと、見るに見かねた現場の社員から、

「創業の精神に立ち返ろう」

という主張が必ず出てくるのです。ただし、この手の主張は圧殺されるの世の常です。しかし原点に立ち戻ろうという声は、次第に大きくなり、結局、どこかの時点で革命が起こるか、一部がスピンアウトして新しい会社ができるのです。

まさにプロテスタントが生まれた背景と似ています。

日本の明治維新でも同じですが、組織発展説は、あらゆる組織に当てはまる現象だなと改めて思います。不思議なものですね。