大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

自己啓発本のベースは「行動コントロール」でできている

以前に、ベストセラー「ストーリーとしての経営戦略」(東洋経済)の著者である楠木先生が、読者からすぐに「使えるスキル」が書かれていなので、読者から毎日のように「金返せ!」というニュアンスの怒りのお便りをもらっていると、やや自嘲気味に書かれたコラムをご紹介しました。

☆バックナンバー:「ビジネススキルとビジネスセンス

これをマネジメントコントロール的に解釈すると、

「実践的だ」

「すぐに使える」

と銘打っている本は、ほとんど場合「行動コントロール」に基づいて書かれています。

たとえば

「ランチは知らない人と食べろ」

「メールは件名だけで内容が分かるようにしろ」

「要らないものは捨てろ(断捨離)」

といった「ある特定の行動(もしくは思考パターン)をせよ」という「行動コントロール」を促す自己啓発本に出会った時、多くの人は

「こりゃあ実践的だ」

と思います。(抽象度が高くなるほど「精神論で役に立たん」と言われます。)「行動コントロール」の色が濃い自己啓発本は、具体的な行動が伴う分だけ明らかに違った結果が出やすい(効果を実感しやすい)というのが最大のメリットです。

行動が変われば、その分だけ精神も影響を受けますので、かなり有用であることは確かです。たとえば「断捨離」で要らないものを捨てて部屋がスッキリすると、思った以上に精神的なストレスが解消するのが良い例です。(私もそれを実感しました。)

ただし、最終的には「行動コントロール」自体を自分で作り出すことを目的としないと、人はいつの間にか強力な「行動コントロール」を作り出す”カリスマ”に依存する状態に陥ります。(これを”信者化”といいます。)

新興宗教の信者が、教祖に「ああやれこうやれ」と命令されるほど、うれしく感じるようなもので、自己啓発本の読者でも、カリスマ社長の組織でもほとんど同じようなことが起こりますが、それではいかんのです。

ということで自己啓発本の「行動コントロール」は受け身ではなく、あくまで自分が主体的で活用するというのが最大のキモかと思います。