大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

トイクルクエスト制作ノート

4月2日に念願のiPhone アプリ「英語発音RPG トイクルクエスト」をリリースしました。

今回はその意図を書いてみたいと思います。

私は現在38歳ですが、小中学校時代には本当にドラクエに熱中しました。ソフトを発売日に手に入れるために並んだり、友達と一緒に徹夜してプレイしたり、学校で情報交換したりと、私たちの年代(特に男子)でドラクエにハマらなかった人はいないのでは。あのときに人々を熱狂させたゲームロジックを使って、英語やビジネスの勉強ができないか。それが発想の発端です。

私は長い間、社会人向けの教育業界(特に遠隔教育/Eラーニング)でプロとして仕事をしているのですが、その経験を通じてクリアに言えるのは

ユーザーに根性を強いるEラーニングは失格である

という事です。

例えば、社会人向けの英語学習教材は世の中にごまんとありますが、修了率が20%を教材は越えるものはほとんどないと思います。

みんな「いつかは英語がしゃべれるようになる」という幻想を抱いて、半年以内に確実に挫折します。

特にEラーニングは、英会話教室のようなリアルな経験が伴わないので、やっている間にモチベーションが急落する場合がほとんどです。

教材制作者側は

「それは学習者が根性がないのが悪いんだ」

「それでも修了した人もいるんだ」

と言い訳する訳ですが、それはプロとしての「敗北宣言」であって、本当は学習システムのデザイン(Instructional Design)が悪いのです。

Eラーニングの脱落者を防ぐ手だてとして

・リアル講義を組み合わせたブレンディング研修

・リアルに集まる「懇親会」(オフラインパーティー

などもありますが、これはあくまで補助的な手段であって、Eラーニングだけでも成り立つのが、本来のあるべき姿です。

そして、そのあるべき姿を実現するための最も有力な手段が、人をのめり込ませる(Engagement)潜在力を持った「ゲーム」だと私は考えています。


◎「ゲーム」と「社会人教育」の境

ゲームをビジネスや教育の分野に応用する「ゲーミフィケーション」がすでに米国を中心に盛り上がりを見せていますが、日本では

「ゲームは子どものモノ」

「ゲームは不真面目」

のような固定観念が強く、子供用の教材ならまだしも、大人用の学習教材にはまだまだ活用されていません。

「勉強というのは、難しそうな顔でつらいのを耐えてやるもの」

というイメージがあまりに強すぎるのです。

その思いは分からないでもないのですが、企業や教育会社で経営やビジネスの勉強にゲームを活用しようと提案すると、

「ビジネスはシリアスなもので、ゲームではない」

「もっとまじめに考えろ」

と一蹴されるのが普通です。

ただ、あと5年もすれば

社会人向けの教育にゲームを利用するだって?当たり前じゃん、そんなの。ゲームにしなくて、どうやって勉強してもらうの?

といわれる時代がくるだろうと考えています。

そして本来は、ファミコン発祥の地である日本こそが、世界に先駆けて、社会人向けゲーム学習の世界で、そのイニシアティブを取るべきだろうと考えています。


◎”クソゲー”にならないために

もちろん、これまでにシリアスなテーマを題材にした大人向けのテレビゲームがなかった訳ではありません。

・営業ゲーム

・会社経営ゲーム

など、いろいろあるのですが、それはややバランスを欠いたものでした。

まじめな教育会社がゲーム的な教材を作ろうとすると、内容と重視するあまり、どうしてもつまらないゲーム(専門用語で”クソゲー”)になってしまいがち。

私もゲーム的に英語の勉強ができるEラーニング教材を始め、いろいろなものを一通り試しましたが、

「こんなしょぼいゲームだったら、むしろない方がいい」

と思われるものがほとんどでした。

その一方で、ゲーム専門会社が作った経営ゲームなどをプレイしてみると、あまりにゲーム側にバランスが偏りすぎており、面白いのは面白いけど、学習内容がそっちのけになっているものばかりでした。

そう見てみると、実はバランスの良い社会人向け学習ゲームは世の中にそれほど存在しないのです。


◎最適な要素の組み合わせ

今回の英語学習ゲームのポイントは3つあります。

1)iOSに搭載されている音声認識システム「Siri」を活用して、自分の発音した英単語が、きちんとネイティブに理解できるレベルの達しているか判別

2)メインターゲットはファミコン時代に「ドラゴンクエスト」にハマった30-40代のビジネスマンであり、その雰囲気を継承して、プレイの懐かしさと、操作に対する抵抗感(ストレス)を解消

3)忙しいビジネスマンでもモバイル環境でいつでも勉強できる

今回のアプリを基軸に、「リーンスタートアップ」的にVer.1の反応を見ながら「ゲーム学習プラットフォーム」を構築できればと思っています。