大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

ウチの社員って自分で考えないんだよね、を解消する方法

最近、連続して同じような話をお聞きしました。それは

「ウチの社員って自分で考えないんだよね」

「私の部下って、指示待ち人間ばかりで困ってしまう」

というものです。しかし、社員が考えない理由は本当に

「社員の”考える力”(やる気)がないから」

「指示を与えられた方が楽だから」

なのでしょうか?

リクルート創業者の江副氏が作った有名な社訓(旧)に

自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ

があります。社長や上司はまさに、この社訓にあるような<自分で自分の仕事を作り出す>ような人材を求めているのです。

しかし江副氏がこの社訓を作ったら、自動的にみんな自分のアタマで考えるようになったかと言えば、そんな単純な話ではありません。その社訓を達成するような社内の仕組み(マネジメントコントロールシステム)を作ったからこそ、社訓が体現したのです。

例えば、「ウチの社員は自分で考えないんだ」「マニュアルがないと仕事ができないんだ」と不満を漏らす社長さんいるとします。そこで「思考トレーニング」「仮説思考」「ロジカルシンキング」のような教材や研修を与えて、自分の頭で考えるように促したとします。

社員はそのような機会を通じて「そうか!自分の頭で考えて提案し、行動すればいいんだ」と開眼し、社内で前向きにいろいろな意見を言うようになったとします。

大切なのはその後です。

せっかくそういう意見が出てきても、会社側が「それは認められない」「前例がないから許可できない」という反応をし、最後には煙たがられて、

「そんな意見を言う暇があったら、もっと売上を上げろ」というようになったら、本人は確実にやる気を失ってしまうでしょう。その上、黙って指示通りやる人を重用したら

なんだ。言っている事と、実際に行われている事は全然逆じゃないか

と不信感を持つでしょう。

実は「社員から意見が出てこない事」の背景には、こういうやり取りが水面下で繰り返されてきた歴史があるのです。そして

どうせ組織に何を言ってもムダだし、何か言われて気分が悪いのも嫌なので、自分の範囲の事だけ楽しくやろう」とか、もっと消極的に「言われた事だけやろう」と考えるようになるのです。

これが組織で「部分最適」が起こるメカニズムです。

以上の事から分かるように、会社が新しい意見を受け止める「受け皿」を用意しない限り、社員に考える事を促すアクションはうまく機能しないのです。


経営理念と社内システムを同期させ、矛盾のない組織を作れば、社員のやる気はアップし、新規事業のアイデアや、改善提案などもどんどん出てきます。では、どうやってその仕組みを作ればいいのでしょうか?

私はその方法は「マネジメントコントロール」にあると考えています。

社員が「思考停止」しているとしたら、その原因を個人の資質だけに求めるのではなく、組織的な理由がないかも考えてみましょう。そして、社員が持っている不満を、すべてひっくり返す事ができたら、「考える組織」を実現する事も夢ではありません。