大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

学習者のレベルでゲーミフィケーションの強弱をコントロールする

ナムココーエーでゲーム開発を手掛けられ、ゲーミフィケーション研究者になった岸本好弘さんの実に味わい深いコラムです。

 

www.4gamer.net


マネジメント教育の初期の段階ではゲーミフィケーション
めちゃくちゃ有効なのですがその限界も語っていらっしゃいます。

 

ゲーミフィケーションは,モチベーションの低い人たちに
有効な手法です。彼らの大半は,何らかのつまずきが原因で,
本来持っているはずのやる気を失っているだけで,そのやる
気をアップさせるきっかけとなるのががゲーミフィケーションです。
ちなみにゲーミフィケーションは,その事柄に対してモチベーションが
高い人たちにとっては,余計なものになってしまうこともあります。」

 

要は「相手のレベルによってゲーミフィケーションの強弱をコントロールが必要」ということです。ここさえ間違わなければ、社会人の学習にも十分使えるコンセプトです。

 

ところで、先日5歳の娘に付き合って (付きあわされて)「キラッとプリチャン」というアニメ&ゲームに触れることが多かったのですが、これがゲーミフィケーション的な観点から本当によくできているんですよね。

 

prichan.jp

 

例えば、

 

・会員証を作って主人公が成長
アバターがランキングで全国のライバルと競う
・アイテムで主人公がパワーアップ
・ダンスのスコアをリアルタム表示
おもちゃ屋で買った関連グッズを、アーケードマシンに
 読み込ませると、さらに主人公がパワーアップ

 

など。

 

前述の岸本さんさんはゲーミフィケーションデザインのポイントとして
下記の6つのキーワードを提唱しているのですが、
まさにバッチリハマっている感じです。

 

「能動的参加」
「称賛演出」
「即時フィードバック」
「自己表現」
「成長の可視化」
「達成可能な目標設定」

 

といういことで、たまにはゲーセンのアーケードゲームで、開発者の知恵が汗が詰まった結晶である最新ゲームを研究した方が良いなと思った次第です。

 

プリちゃんのゲーミフィケーションで”修行”した娘は、リアルワールドで、今度は自分自身でゲームを構築していくに違いありません。

 

アドバイスを聞ける相手は、自分が行きたい道を先に歩いている人だけ

当たり前ですが、アドバイスを求めるべき相手は、「自分が行きたい道を先に歩いている人」しかいません。

 

例えば、若かりし孫正義さんが、日本マクドナルド藤田田さんにアドバイスを求めたのは、藤田さんが海外関係のビジネスに長けていたから意味があるのであって、留学やビジネス経験のない学校の先生に「高校をやめて留学したいのですが」と相談しても、それほど有益なアドバイスはもらえなかったはず。

 

ましてや「将来、ビジネスで成功するために何を勉強すればいいですか」と相談しても、的確なアドバイスはできなかったはずです。

 

なぜなら、経験したことのない人に「やったらどうなるか」を聞いても結局はバーチャルな回答しかできないからです。

 

したがって留学したい人は、留学経験者にアドバイスを聞くべきだし、経営者になりたい人は経営者、アイドルになりたい人はアイドル、YouTuberになりたい人はYouTuber, 政治家になりたい人は政治家にアドバイスを聞くのがベスト。

 

また、どの世界でも”その道の成功者”と言われている人は、少数派です。

 

したがって大多数の普通の人にアドバイスを求めても、あまり意味がありません。そもそも「こうやったらうまく」というアドバイスができるなら、その人自身がその道を先に歩いているはずだからです。

 

さらに、人の生き方に正解はありません。したがって、どのアドバイスもそれなりに正しいのです。その道で成功しないのも正解だし、成功するのも正解です。

 

実際、少数の人しか成功しない道なのであれば、大多数の人が「やめたほうがいいよ」というのは、意地悪でもなんでもなく、極めて合理的なアドバイスなのです。

 

だからこそ、「アドバイスを聞くべき相手は、自分が行きたい道を先に歩いている人だけ」という原理原則というのは、いつの時代も不変です。


 

もちろん成功者の語る成功法則に普遍性(再現性)があるかわからなかったり、体系的でなかったり、エピソード自体がホントかウソが怪しいこともあるので、評論家や学者の俯瞰的な解説が役立つことも確かですが、メインはあくまでも、実践者本人の言葉です。

 

 ちなみに経営者本は、自伝と評伝の両方を読むのがおすすめです。

 

過去に納税額日本一を何度も達成している斎藤一人さんの本も、ご自身が書いている本と、弟子の方々が書いている本を両方読むのがおすすめです。メディアに写真が出ないので何となくミステリアスな人ですが、弟子の方々がちゃんと成功しているのがいいですね。

斎藤一人 スカッと一発大逆転

斎藤一人 スカッと一発大逆転

 

 

ーーー
(余談)
アドバイスを直接もらえないなら「私淑する」という手もあります。

「し‐しゅく【私淑】 〘名〙 (「私」はひそか、「淑」はよしとする意)
敬慕する人に直接教えを受けることはできないが、ひそかに尊敬し、
模範として学ぶこと。 教えを受けたことはないが、尊敬する人を
ひそかに師と仰ぐこと。」

私の場合、中学・高校時代は当時大人気の国際ジャーリストだった落合信彦を「私淑」しました。

 

その結果、留学し、NGOスリランカに駐在し、現在は経営コンサルや、教育システムの開発をしています国際ジャーリストにはならなかったのは、我ながら面白いなと思います。

 

最近メディアで大活躍の落合陽一さん(信彦氏の息子)は、私淑ではなく、直接薫陶を受けていますが、現在の職業はメディアアーティスト。

 

国際ジャーリストでも、作家でもありませんが、本を読むとなんとなくノビー(お父さんの愛称)っぽい雰囲気があります。

 

結局師匠を完コピでパクろうとしても、自分の個性と融合する過程でオリジナルが出来上がるということかもしれません。

 

何だか合体・進化するポケモンみたいですが、精神レベルでは本当にそうなっているのかも知れません。

 

そもそもパクろうとする過程で、自分との対話が必然的に生まれるので、心が動いたら行動に移すのがよいというのが結論です。

 

世のなか、面白いですね。

Corvoda(monaca)のユニバーサルリンク対応はどうなる?

現在リリース中のアプリに「Custom URLスキーム」(URLから直接アプリを起動できる機能)を組み込んでいるですが、数年前のAppleの方針変更で、「ユニバーサルリンク」なるものに移行していく動きです。

 

blog.branch.io

 

それはそれでいいのですが、うちでアプリ開発に使っているMonca (Corvova)が、その変更に全然追いついていない様子です。

 

こういう変更がある場合は、大体プラグインで対応できるのですが、ユニバーサルリンクについて未対応。質問サイトにもレスがない様子。

 

teratail.com

 

頼みの綱のGithub でCordovaプラグイン開発にトライした動きがあるのですが、挫折してしまったようです。

github.com

ああ、これはプラグインを使わずに開発せよ、ということか。

スリランカの同時爆破テロと紛争問題

昨日スリランカの8箇所で同時爆破テロが起こり、300人近くが亡くなった。2009年に内戦の終結以来、年率4−5%の成長率で、他の新興国にキャッチアップすべく頑張ってきた。

 

観光産業も伸びており、昨年は日本人が4万人も訪れているが、それらに水を差した形になる。

 

今回、スリランカで幅を利かせる仏教原理主義者がターゲットではなく、キリスト教会がターゲットになった。

 

政府はイスラム系過激団体(NTJ/ナショナル・タウヒード・ジャマート)が主犯という見方をしている。

 

www.huffingtonpost.jp

 

情報機関には10日前にテロ攻撃の可能性に関するレポートが上がってきていたようだけど、事実上無視されたのは、平和ボケだったのかもしれない。

 

www.nytimes.com

 

ここ半年ぐらいは、大統領府と首相がもめており、首相には大統領府からのセキュリティアラートが上がってこなかったようなので、政争のツケを払わされたとも言える。

flowone.hatenablog.com

 

私がNGOで滞在していた2000年ごろは、この手の爆破テロは日常茶飯事だったので、破壊されるリスクが高い高層ビルなどはなく、ホテルやショッピングセンターなど人が集まるところは、セキュリティチェックが厳しかったが、一昨年訪れた時は、高級ホテルやタワマンがバンバン立ち、Majestic City (大手ショッピングセンター)の入り口にも警備員がほとんどいなくなっていて驚いた。

 

今回の件で、少しこの様子も変わるかもしれない。

 

2000年当時の現地レポートが一新塾HPに残っていた。

www.isshinjuku.com

 

このレポートの通り、戦後のスリランカは「シンハラ・オンリー政策」、つまりマジョリティである仏教系シンハラ人を優遇する政策を進めた。

 

www.mofa.go.jp

 

仏教系過激ナショナリスト団体がこの動きを主導したのはよく知られており、今でもイスラム系の避難民であるロヒンギャに危害を加えていることも報道されている。

 

newsphere.jp

 

余談になるが、「イスラム系過激派」とよく報道されるので、イスラム=怖い、という偏見を持つ人がいるが、スリランカの仏教系ナショナリストはいわゆる過激派そのものだ。つまり、仏教にも原理主義・過激派がいるということで、「宗教が過激かどうかということではない」ということが良く分かる例がスリランカである。

 

そして偏狭なナショナリズムがマイノリティであるタミル人との軋轢を生み、タミル系武装組織「LTTE」を誕生させ、内戦となった。

 

そして「シンハラ・オンリー政策」の影で、タミル人と同じように人権蹂躙されたのがイスラム系で、彼らがイスラム国(IS)の残党等などと連携して起こしたのが、今回の爆破テロというのが政府の見立てである。

 

また今年3月に発生したニュージーランドのモスク襲撃の報復との見方もある。

www3.nhk.or.jp

 

いずれにしろ、多民族国家というのがバランスが命であり、極端な政策をとると、そのツケを長年払わされる結果となる。

 

スリランカ内戦は2009年に集結したが、今後のどうなるのか注視したい。

社会的コストとメリットのバランス

高齢者の自動車事故も、原発過酷事故も本質は同じで「社会的コスト」と「メリット」の比較で世の中は動いていることを示している。高齢者を運転禁止にするコストよりも、少々の事故が起こっても(ベンサム的な功利主義から)メリットの方が大きいということを社会は選択している。

 

だけど、心情的には被害当事者だったら受け入れるのは無理だろうと思う。このギャップをどう乗り越えたら良いのだろう。

 

news.yahoo.co.jp

理由と目的で水掛け論を脱する(「ロンリのちから」より)

高校講座「ロンリのちから」が面白い。ネット動画で各回10分程度なので、ぜひお時間があるときに。

www.nhk.or.jp

 

第5回は、「水掛け論」から脱するためには、「主張」の背景にある「理由」に着目し、議論を深めることが大事というのがポイントでした。

 

もう一つ付け加えると「主張」の背景にある「理由」を聞いたときに、さらにその「理由」によって達成したい「目的」をチェックすることで、代替手段を提案するという方法もあります。図解すると下記のようになります。

f:id:wakabayk:20190422204214p:plain

理由と目的

「主張」を崩すには、まず「理由」を検証し、その誤りを正す方法があります。

 

例えば、新しいスマホを買っても、処理が遅い原因がクラウドサービス側にある場合は、スマホ側の処理速度を上げても、結局スピードは速くなりません。(ボトルネッククラウドにあるからです)

 

もう一つは、「理由」によって実現したい「目的」を聞いて、他の方法を提示することです。例えば、仕事を早く片付けたい場合、仕事の方法そのものを変える方が良いかもしれません。

 

いずれにしろ、主張の背景にある「理由」と「目的」にフォーカスすることが、水掛け論を脱するために必要です。

 

まとめ

・手段で争うと水掛け論になる

・「手段」の背景には「理由」がある。理由の背景には「目的」がある

・「手段」を見直すには、2つの方法がある

 1)理由が正しいかチェックする

 2)目的を他の手段で達成できないか考える

 

 

論理包含とTOCブランチの矢印(→)の違い

論理学で「AならばB」を「A→B]と書く。これはテクニカルには「AがBを包含していますよ」ということを意味している。

ja.wikipedia.org

 

例えば

 

「これはみかんだ」→「これは果物だ」

 

といえば、「みかん」という言葉の中に、「果物」が含まれている。

 

有名な

 

大前提「人間は死ぬ」

小前提「ソクラテスは人間だ」

結論「ソクラテスは死ぬ」

 

もこのカテゴリーである。

 

ややこしいのだが、因果関係も「A→B」で表すことが多い。(「もしAならば、結果としてBである」)

 

この場合、矢印は包含関係ではなく、Aが原因となって、Bが引き起こされているいうCause-Effect の関係を示しており、包含関係ではない。

 

頭の整理のためのコラムでした。