大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

事業家父さんノート その1

身近にいる事業家父さんから聞いた話をメモ的に書きます。

 

ビジネスを発展させるキモは3つだ。

 

1)スピード

2)結果

3)自動化(「型)化)

 

1と2はセットで、とにかくQuick Win をすることが大事。今風にいうならMVP(Minimum Viable Product)を作って、市場にリリースし、高速でPDCAを回しまくるということになる。 Lean Model, アジャイル開発も基本的には同じ発想だ。

1、2である程度事業がモデル化できたら、スケール化を目指して自動化していくということになる。

 

 

交渉力をつけるには、強力なBATNAを手放さないこと

第26代米国大統領セオドア・ルーズベルトの外交姿勢を比喩する言葉として下記がある。

 

「Speak softly and carry a big stick.」

 

平たく言えば、”交渉の時は、おだやかに喋ると同時に、棍棒(いざという時の武力)を必ず持っておけ”(そうやってナメられないようにしろ)”

 

という意味である。

 

交渉学的に言えば、交渉が決裂した時の2番手の解決策「BATNA」をきちんと保持しておけということになる。

 

同じようなことが、最近読んだ下記の本にも書いてあった(この本はオススメ)

魔法のコンパス 道なき道の歩き方

魔法のコンパス 道なき道の歩き方

 

作者で芸人の西野さんによれば、テレビを本当に面白くすべく、テレビ局と交渉するには、テレビに対して「NO」が出せる態勢が必要だという。

 

「こっちで飯を食えてるし、メッチャ幸せだし、俺、テレビに出なくてもいいんですよ。でも”それでも”というのなら」という交換条件がだせる状況 

があって、初めて尖った企画を通すための交渉が対等できる。

 

まさに「BATNAがあるからこそ」という点で、要はルーズベルトと同じことを言っている。

 

自分に余人をもって替えがたいスキルや能力があれば交渉は対等にできるが、そうでなければ、足元を見る人はどんどんそこを突っ込んでくる。

 

「俺に断られたらお前困るだろう」とえげつない交渉をしてくる輩も世の中には多い。

 

そんな時、保険であるBATNAがないとどうなるか?

 

「嘘をつかなくてはならない」

 

環境に追い込まれるのである。なんとなく違っているなあ、納得できないなと思っていても、ご飯を食べさせてくれる飼い主には逆らえない。

 

前述の西野さんは、絵本やクラウドファンディグ、オンラインサロンなどで収入を分散し

 

嘘をつかなくての良い環境をつくる

 

ことで防衛しているのである。

 

これからは副業が当たり前の時代である。自らBATNAを捨て、「自分はこんなに会社に身を売っています」とアピールすることで評価される時代は終わりつつある。

 

逆に言えば、副業を認めていて、それでもなお人が集まっている会社は、信頼できる会社である可能性が高いというと言える。

 

会社と個人は本来対等である。

 

言い換えれば、会社はあなたという”個人株式会社”に業務を委託し、その期待値を超える仕事を提供するから関係が成り立つ。

 

そして「委託される側」も「委託する側」も平等に評価されるのである。

 

 

結局、ご飯を食べさせるリーダーに人はついていく

ラジャパクサ前大統領時代の異常な中国傾斜から脱却したと思っていたスリランカ。2月の地方選挙で、前大統領派が勝ち、先が見えなくなった。

 

「理想」と「ご飯」を天秤にかけると、多くの人はご飯を食べさせてくれる親方(リーダー)になびく。何か違うと思っていても、明日食べていく食料がなければ、未来はないと思うからだ。理想で人は動かない。

 

逆に言えば、ご飯を食べさせる保証をすれば、少々理念が間違っていても人はついてくる。ただし彼らが自分でご飯が食べられるようになると離れていく。当たり前と言えば当たり前の話。

 

スリランカ、再び中国傾斜(日経新聞 2018-2-23)

 

www.nikkei.com

 

自分で語る言葉と経験を持つ(人間ウィキペディアからの脱出)

私見ですが、人間には「インプットの時期」と「アウトプットの時期」があると思っています。学びの作法で言えば「守破離」の「守」は、まさに「インプットの時期」に当たります。

 

ここで気をつけたいのは

 

1)インプット自体が目的化してしまわないように注意すること

2)アウトプットを前提として、インプットすること

 

の2点です。

 

まず1ですが、どんな世界でもそれなりに面白い世界が奥にあるので、知識オタク化してしまうリスクが常に潜んでいます。言い換えれば、「人間ウィキペディア」の罠に陥ってしまう可能性があるのです。

 

私自身の例で言えば、経営学がそれなりに面白かったので、どんどんのめり込こました(というより現在もそうです)。また仕事上、メディアによく出て来るような”エラい人”に直接触れる機会も多かったので、

 

「●さん(←偉い人)から直接聞いた話なんだけど・・・」

 

なんて人が知らないようなことを喋っていると、人が感心してくれるし、なんとなく優越感も感じられて、それが単純に嬉しかったんです。

 

そして知らず知らずのうちに、そういう知識をインプットをすること自体が自己目的化していました。

 

もちろん「知を愉しむ」という意味で、知識を吸収することを趣味とするのは全然悪くありませんし、それが必ずしも役に立たなくても良いと思います。

 

ただ、多くの場合、そんな悠長なことは言ってられません。

 

限られた人生の中で、ペテロ・パウロのように師匠キリストの言葉を世の中に広めることに最終ミッションがあったり、研究者のようにそれを理論化するが仕事であれば、もっと極端にやりきらないと何の役にも立ちませんし、時間切れになります。

 

いずれにしても、私の場合は、あるときハタと

 

「このままじゃいかん」

 

と思ったんです。

 

特に強く感じたのが、

 

自分自身の言葉

 

がほとんどなかったことです。よく考えたら、全部どこかで聞いたような、受け売りの、借り物の言葉ばかりで、自分自身の経験として語れる価値ある経験がほとんどない。

 

そして経験に裏付けれていない言葉はどうしようもなく「軽い」んです。

 

言い換えれば、「誰それがこう言った」ということを語る”人間辞書”としては優秀なんですが、他人の言葉を並べるだけなら、ウィキペディアの方がもっと優秀です。

 

で、周りを見渡してみたら、世の中には

 

自分の言葉で語れる人」と

えらい人の言葉をアレンジしたり、リピートしているだけの人

 

の2種類がいることがわかって相当危機感を感じました。

 

そして自分自身がすごいと思う人は、例外なく独自の専門性を持っていたり、その人オリジナルの経験をベースにした「語れるコンテンツ」を持っていることに気づきました。

 

平たく言えば、誰かの劣化コピーではないということです。

 

では、劣化コピーにならないようにするにはどうすれば良いのか。

 

それが2つめの「アウトプットを前提として、インプットすること」です。1の結論と一部矛盾しますが、アウトプットするにはやっぱりインプットが必要です。

 

 If I have seen further it is by standing on ye sholders of Giants.

 

というニュートンの言葉がありますが、何か価値あるものを生み出そうと思ったら、先人の知識や経験を活かす必要があります。

 

そうなければ、50歳にして「こんなことを新発見したぞ!」と自分で思っていても、よく調べてみたら、1000年前にすでに同じことが発見をされていて、それを弟子たちがさらに発展させていた、なんてことが起こりかねません。

 

これでは人生が無駄です。

 

じゃあ、いかに学び、いかに行動に移せば良いのでしょうか?

 

例えば、自分でそれなりに挑戦した後で、その道のプロが解説しているのを見れば、まったく経験していない人と比べて、吸収できることは、10倍も、100倍も違うでしょう。当たり前と言えば当たり前です。

 

例えば、ドラッカーの本を読んで「真摯さが大切である」ことが頭でわかっても、自分自身がその真摯さに基づいた判断を試される修羅場を経験しなければ、その本当の意味はわからないのでしょう。

 

とすれば、インプットの仕方自体は同じでも、それを実行する前提で学ぶかどうかが、さらに実際に実行して学ぶかどうかで、その吸収性に大きく差が出ることは明白です。

 

ということで「インプット自体が目的化してしまわないように注意すること」「アウトプットを前提として、インプットすること」に気をつけて、どんどん経験を積み、自分の言葉で語れるようになりたいものです。

知らないからできる(TOC)の読書メモ

KPIの取り方の工夫は経営そのものであることがよくわかる一冊。

 

▼設備稼働率をKPIとした場合

 

(メリット)

1)製品の原価率が下がる

 →固定費部分(工場設備や賃料など)が均等割になるので。

 →B/S上は資産として計上される

 

(デメリット)

2)不良在庫が増えてしまう(需要より生産が多ければ)

 →倉庫費もかかる

 →リードタイムが長くなる

   (タイムリーな対応ができない=売り逃がし)

   (店は過剰に在庫を持つ必要が出てくる)

    →やっと完成したとき売れなければ損になる

 

*お店も注文したらすぐに来るのであれば、不要な在庫は持たない方が嬉しい。現金で仕入れてすぐに売れれば効率が高い(10日で仕入れた品が売れたら、2割儲かるなら、トイチより良い

 

▼需要連動生産方式

「緑・黄色・赤」で在庫を見える化するが、定常的に赤が増えている場合は、在庫の適正量自体を変化させる必要がある。

 

システム開発

エンジニアを倍に増やしても、書けるコードが倍に増えるわけではない→むしろ早く完成すれば、キャッシュインのタイミングは早まる。

 

知らないからできる  既成概念を覆す「0(ゼロ)ベース思考」

知らないからできる 既成概念を覆す「0(ゼロ)ベース思考」

 

 

 

ビットコインを巡る仮想通貨と未来の学び方

以前にビットコインについて書かせていただいたのですが、仮想通貨とそれをベースで支える「ブロックチェーン」が来年本格的に様々な分野で存在感を高めそうです。

 

ソニー、教育データを“ブロックチェーン”で認証管理できるシステム

japan.cnet.com

中央監視機構がなく、参加者が相互でデータを持ち合ってデータの信頼性を担保するブロックチェーン技術は、EコマースでもAR、VRでも活用され、インターネット革命の本丸になる可能性がかなり高そうです。

 

そのブロックチェーン技術で可能になった仮想通貨「ビットコイン」も次々と改良版が出てきています。

 

仮想通貨取引会社大手のビットフライヤーにも、取引できるコインとして、ビットコインキャッシュ(BCH)、イーサリアムライトコインMONAコインなどがずらっと並びます。

bitflyer.jp

ただどれかが勝者になるのか、それとも企業のICOInitial Coin Offering)によって独自に発行された仮想通貨(トークン)が主流になるのか現時点ではさっぱり分かりません。

 

ただし、この手のことは他人事で眺めていても頭に入らないので、やっぱり身銭を切ってゲームに参加してみるのが一番な気がします。

 

ちなみに、勉強のために買った十数万円のビットコインは価格が11倍になりました。ただ今月ズドーンと急落し、段々回復してきていますが、ボラティリティの高さは相当
激しいものがあります。でも全く買ってなかったら、こういったニュース自体が全く気にならなかったはずです。

 

財務会計を学ぶのに株を買うのは極めて有効です。海外旅行で現地を体験すれば世界史を学ぶ際にスラスラ頭に入ります。それは単なる知識ではなく、経験だからです。

 

同じようにブロックチェーンを学ぶには、損しても困らない程度で仮想通貨を買ってプレーヤーとして参加してするのが今のところ一番の勉強法です。

消費者の期待値を下げてがっかりさせないAI(人工知能)の「キャラ戦略」

最近、ソフトバンクのペッパー君が、ユーザーに飽きられて首をうなだれている切ない姿をたまに見かけます。マーケティング的に見れば、人の形をしている分だけ、

 

「人間と同じぐらい会話ができるんだろう」

 

という期待値を過剰に高めてしまったがために、そこまで実力がないことがわかって、みんな一気に冷めてしまったという状態です。世界最先端のクラウドAIに繋がるGoogle HomeAmazon Echo、IBMのワトソンにしてもまだまだ

 

「自然に話せる」

 

には程遠いレベルにあります。

 

したがって、グーグルやアマゾンが、デバイスを人型に似せないで、無機質な単なるスピーカーの形状にして発売したことは、

 

「消費者の期待値をそこまで上げない」

 

ことで「がっかり度」を大きくしないための戦略として極めて正しいと思います。

 

一方、LINEのスマートスピーカー「クローバフレンズ」がオリジナルキャラ「ブラウン」「サリー」をモチーフにして”可愛さ”を前面に出しているのはかなり賢いと思います。

 

f:id:wakabayk:20171230112751j:plain


www.so-ra-no-i-ro.com

なぜなら、喋りかけているAIが、かわいいクマさんやアヒルさんだとわかれば、多少トンチンカンな返答をしてきても

 

「まあ、クマさんだからしょうがないよね」

 

と、なぜか笑って許せてしまうからです。つまり、キャラによってユーザーの期待値を自然に下げさせることが容易なのです。

______________________________________________________

□AIにキャラを持たせる工夫

 

もちろん、ペッパーもそこは十分意識して開発されており、Google HomeApple Siriが比較的無感情・無機質な応対をするのに比べ、ペッパーは「皮肉屋」のキャラを演じて自虐ネタを言ったりします。

 

ペッパー開発者の林さんも、メディアのインタビューで

 

「キャラを持たせた方が、人間のリアクションを予想しやすく
 自然な会話に誘導しやすい」

 

と答えています。

 

ただ、やっぱり形状が人型である限りは、ユーザーの期待値を下げるのに限界があるので、ペッパーのポジショニングには難しさが付きまといます。

 

もちろんペッパーはクラウドAIと繋がっているので、今後バックグランドのAIが賢くなれば、それなりに消費者の期待値に近づいてくるはず。そのスピードを上げられるかが、ペッパー君がスクラップ工場行きになるかどうかの運命を決めそうです。

______________________________________________________

ドラえもんブレードランナー

AIにキャラを持たせる試みは、マイクロソフトの「りんなちゃん」をはじめ、各社が取り組み始めています。

 

りんな (人工知能) - Wikipedia

 

またビデオゲームの「龍が如く」が、本物の俳優・女優をモチーフにすることで、完全な創作キャラよりもリアリティを出すのに成功していることも、同じ線状にある話です。

 

そっくり!【龍が如く】の登場人物がモデルとなった芸能人に似すぎている

matome.naver.jp

元をたどれば、ドラえもんでも鉄腕アトムでも、日本のロボットはキャラを持っていたわけで、案外キャラ付きAIが本格的に社会に浸透し始めると、最も早く普及するのは日本かもしれません。


AI=アンドロイド(レプリカントと呼ぶ)と人間の混じり合った世界をいち早く予見し、生命モラルを含めた深遠な問題を描いたのが1982年公開の映画『ブレードランナー』(原題:Blade Runner)です。

 

ブレードランナー - Wikipedia


今年10月に公開された

ブレードランナー 2049」
 

www.bladerunner2049.jp

は、人間の生命に関わるさらに踏み込んだ問題を提起していますが、


もともとレプリカントが「人間らしくなる=キャラを持つ」
ための工夫として考案されたのが、

 

「誰かの記憶を埋め込む」

 

いう手法でした。

 

ただ、レプリカント自身が自分の記憶が自分の経験したものなのか、外から埋め込まれたものなのかわからないために、アイデンティティクライシスに陥り、人間と同じように、というより人間以上に人間らしく苦悩します。

 

ただ「機械学習」が進むと、AIは本当に自律的に”学ぶ”ようになるため、より人間的になり、人間が記憶を埋め込まなくてもアイデンティを持つようになるかも知れません。

その時は、Googleは今のような単なるスマホOSではなく、まさに本物そっくりの人型ロボット

 

「アンドロイド」

 

を発売することになるでしょう。