大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

eラーニングアワード2016 雑感

eラーニングアワード@御茶ノ水に参加。


知っている人が講演していたり、よく知っている会社の最新事情がわかったりして面白い。

なんとなく前職ではグロービスさんはライバル的な存在だったが、今はニュートラルに注目している会社の一つ。

 

今日のプレゼンを聞いて、本格的なオンライン教育の世界に参戦してきており、ゲーミフィケーションやブレンディング(研修とデジタルの組み合わせ)、Learning Analyticsやソーシャルラーニングの取り組みには、「結局そこにくるよね」と共感できる部分が多かった。

 

このオンライン教育のトレンドは、提供者側の技術ハードルがどーんと下がったという要因もあるけど、ユーザー側がオンラインで学ぶということに違和感がなくなってきた点が大きいと思う。

 

この動きは大学や研修会社全体を巻き込んでどんどん加速するのは確実なので、むしろ、まったく何もやってないと10年後ぐらいには淘汰されるリスクもある。(そのうちペッパーみたいなロボットが50%ぐらいの標準化された内容を「先生」として教える日もくるだろうし)


そういう意味では、僕もそれなりに最先端を走ってきたなあという感じはあるけど、さらに先に行きたいところ。刺激を大いに受けた。

 

www.elearningawards.jp

「学習する組織」に対する恐れを捨てるのが第一歩

多くの会社って本当に「学習する組織」を望んでいるんでしょうか?

それを考えさせられる記事です。

 

mirai.doda.jp

 

通常の会社が規模を追おうとするとき、業務を標準化して一気にスケールさせる方が目的に見合う場合が多いのではないでしょうか?

 

たとえば採用時にクリエイティブとか自主性云々を言う割に、実際に入ってみると、言われたことをそのままやってくれる方がありがたいというのがマネージャーたちの本音だったりします。

 

もちろん職種ポジションによっては、内発的動機に基づいてガンガン考えてもらった方が業績に結びつく場合もあると思いますが、現状、そういうポジションを大勢に用意できている会社は多くない気がします。

 

だから「学習する組織」ってコンセプト的には合意する経営者が多いと思いますが、実際に自分の会社で社員がやりすぎると、自分勝手に動いたり、カオス状態になってコントロール不能になるのを恐れているので

 

「適度にやってね」

 

という感じでは。

 

そういう意味では、記事のタイトルにある「真面目にやるほど学習する組織にならない」のではなく、実は「学習しない組織」こそが本当は望んでいることであって、その潜在的な欲求が正確に実現しているように思えます。

 

経営者やマネージャーが「社員に任せる」「社員に学習させる」という行為に対しての恐れを克服するところが第一歩です。

 

その意味では、こちらの一冊がおすすめです。

 

 リーダーシップのあり方が「Face to Face」ではなく、共通の目標に向かって歩く共に歩く「Side by Side」の関係であることがわかります。

感じるマネジメント

感じるマネジメント

 

 

部下に仕事を丸投げして、ダメ出ししてもいい条件?

電通で新入社員が過労死する痛ましい事件が起こった。

www.itmedia.co.jp


一連の報道を見ていると、問題の本質は、残業時間が長いとか短いという点ではなく、

 

部下のレベルに応じた指導をするのが上司の役割である

 

ということを直属の上司や部長が明確に認識できていなかったのことであることが見え隠れする。


だから記事に出てくる経営学部の先生のコメントなどは、そもそものイッシューの捉え方に誤りがある。


部下に仕事を丸投げしておいて、

 

「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」」

 

などとダメ出ししていいのは、部下にそれなりの基礎スキルとメンタルタフネスがあって、本人の内発的動機に基づいて仕事をしているという前提がある。

これはマネジメントコントロールにいう[Result Control]の適応条件と同じだ。


だったら「抱え込まずにやめたらよかったのに」という人もいるかもしれないが、介護うつとか、ドメスティックバイオレンスと同じで、

 

当事者としてど真ん中にいると近視眼的になって、他の選択肢が見えなくなってしまうことがよく起こる。


関係者が初歩的なManagement Control とかSituational Leadershipを学んでいれば、こんな悲劇にはならなかったように思える。

 

前途ある人々がかけがえのない命を落とすようなこの種の事件が、一刻でも早くなくなることを願わずにはいられない。

 

僕にできることはマネジメントコントロールなどの経営技術を広く普及させることぐらいだ。

データ分析で変わる通信教育 ベネッセの次の一手

データ解析で教育も変わる。 

派遣社員による個人情報漏えいや、原田さんの一件ではしばらく大揺れしていたベネッセだが、こういう仕組みを進研ゼミ+などにどんどん投入すれば、まだまだ伸びしろはある。

app-review.jp

 

「今回のビッグデータ分析によって、一般的な学習効果のイメージとは大きく異なる事実が多数明らかになった。
例えば、一般的には一つの単語を一日に何度も反復学習するという学習法があるが、1ヶ月後に残っている実力には5回以上の繰り返しの効果が検出されないことが分かった。すなわち、単語の出現頻度や学習のタイミングを管理しなければ無駄の多い学習になってしまうということだ。」

 

Eラーニングと転職サイトの融合「LinkedIn Learning」

リンクトインが就職/転職希望先と、自分の経歴/プロフィールをベースに、そのギャップを自動的にアルゴリズムで測って、最適な学習プログラムを提案してくるというサービスを開始する。

jp.techcrunch.com

  

今後このような流れが加速するのは間違いない。

就職転職サービスと、eラーニング系会社は今後どんどん合従連衡してくるはず日本ではリクルートとか、マイナビが大規模にこの分野で出てくるのでは。

もちろん通信教育大手のベネッセなども協業の範疇に入るだろう。

 

 

 

トヨタに学ぶ評価制度:失敗やリスクを取ったことを評価する

トヨタの評価制度運用に関する豊田章夫氏の素晴らしいコメント。

トヨタ社内には『方針シート』と呼ばれる自己申告型の目標設定用紙があるのですが、これは自分で目標設定をして、後で本人が自己評価します。そうすると自己採点が5段階の一番上である◎に集中するのです。しかし、◎を取るためにイージーな目標設定をして達成したと言われても、全トヨタにとっては全くプラスにはなりません。だから私は今、一生懸命社員に言って回っているのです『意欲溢れるナイストライで、価値ある△を取れ』と」

 

△というのは5段階の真ん中なのですが、やりがいのある目標設定をしたら、そう簡単に◎を取れるわけがありません。大失敗は困りますが、難易度の高い目標を定めて、最低限△で止められるような工夫をすることは、極めて価値が高いと思いますね

引用元

 

目標管理制度の元で、本人が年度初めにチャレンジングな目標を立てれば立てるほど未達になってしまったり、ストイックな自己評価をするほど、それを人事や上司が真に受けて、人事考課で査定が下がるという会社も世の中には少なくないからだ。

 

部下も部下もその辺り(会社や上司の人事評価力)をちゃんとわきまえていて、絶対に達成できそうな目標を、さも難しいように翌年の目標設定としてアピールするのが処世術になる。

 

「結果コントロール」のニュアンスが強い会社は、評価制度を上手く回す仕組みを作らないと、すぐに形骸化してしまうので、むしろ失敗やリスクを取ったことを評価するKPIを入れ込むなどの工夫の必要がある。(GEやリクルートなどはその点魅力的な会社と言える。)

 

そしてそのような現場の問題をトヨタレベルの大企業のトップが正確に把握しているのが素晴らしいと思う。

 

Not all pretzels were created equal

お台場(ダイバーシティ)にあるプレッツェル屋「アンティアンズ(AA)」でパチリ。

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"Not all pretzels were created equal"というロゴが目立つ。

 

*意味的には、

「すべてのプレッシェルが平等に作られている訳ではない=ここのプレッシェルが最高」

 

となる。


AAは、ペンシルバニア州が起源で、アメリカが最初に首都を置いた場所でもあるので、独立宣言にも見られる文言(all men are created equal)をもじってお店のキャッチフレーズに引用している様子。

Declaration of Independence - Text Transcript


僕の母校も同じペンシルバニア州にあったので、AAはいろいろなところにあったが、もともとドイツ系移民が多い地域(ドイツ系移民で宗教的な生活をしているアーミッシュなんかも有名)なので、プレッツェルといういかにもドイツネーミングなお菓子がチェーンとして発祥したのだろうと思う。

アーミッシュ - Wikipedia


ちなみにブッシュJr.元大統領が、NFL中にプレッツェルを食べ過ぎて喉を詰まらせ窒息しそうになったのは有名な話。


ステラおばさんのクッキー」も、同じペンシルバニアのドイツ系のおばあちゃんのクッキーが元になっている。

 

www.auntstella.co.jp


AAは世界に約1200 店舗あるそうで、日本ではリヴァンプ(元ユニクロの澤田さんや、ローソンCEOの玉塚さんなどが立ち上げた会社)が上陸させ14店(2012年)あるそうだ。でもイマイチヒットという感じではないようにみえる。

www.revamp.co.jp


何が足りないのだろう。甘すぎるのかな。