大人の考える技術

若林計志が経営・MBAのフレームワークやマネジメント理論を応用しながら、ビジネス・社会問題を考察します

部下に仕事を丸投げして、ダメ出ししてもいい条件?

電通で新入社員が過労死する痛ましい事件が起こった。

www.itmedia.co.jp


一連の報道を見ていると、問題の本質は、残業時間が長いとか短いという点ではなく、

 

部下のレベルに応じた指導をするのが上司の役割である

 

ということを直属の上司や部長が明確に認識できていなかったのことであることが見え隠れする。


だから記事に出てくる経営学部の先生のコメントなどは、そもそものイッシューの捉え方に誤りがある。


部下に仕事を丸投げしておいて、

 

「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」」

 

などとダメ出ししていいのは、部下にそれなりの基礎スキルとメンタルタフネスがあって、本人の内発的動機に基づいて仕事をしているという前提がある。

これはマネジメントコントロールにいう[Result Control]の適応条件と同じだ。


だったら「抱え込まずにやめたらよかったのに」という人もいるかもしれないが、介護うつとか、ドメスティックバイオレンスと同じで、

 

当事者としてど真ん中にいると近視眼的になって、他の選択肢が見えなくなってしまうことがよく起こる。


関係者が初歩的なManagement Control とかSituational Leadershipを学んでいれば、こんな悲劇にはならなかったように思える。

 

前途ある人々がかけがえのない命を落とすようなこの種の事件が、一刻でも早くなくなることを願わずにはいられない。

 

僕にできることはマネジメントコントロールなどの経営技術を広く普及させることぐらいだ。

データ分析で変わる通信教育 ベネッセの次の一手

データ解析で教育も変わる。 

派遣社員による個人情報漏えいや、原田さんの一件ではしばらく大揺れしていたベネッセだが、こういう仕組みを進研ゼミ+などにどんどん投入すれば、まだまだ伸びしろはある。

app-review.jp

 

「今回のビッグデータ分析によって、一般的な学習効果のイメージとは大きく異なる事実が多数明らかになった。
例えば、一般的には一つの単語を一日に何度も反復学習するという学習法があるが、1ヶ月後に残っている実力には5回以上の繰り返しの効果が検出されないことが分かった。すなわち、単語の出現頻度や学習のタイミングを管理しなければ無駄の多い学習になってしまうということだ。」

 

Eラーニングと転職サイトの融合「LinkedIn Learning」

リンクトインが就職/転職希望先と、自分の経歴/プロフィールをベースに、そのギャップを自動的にアルゴリズムで測って、最適な学習プログラムを提案してくるというサービスを開始する。

jp.techcrunch.com

  

今後このような流れが加速するのは間違いない。

就職転職サービスと、eラーニング系会社は今後どんどん合従連衡してくるはず日本ではリクルートとか、マイナビが大規模にこの分野で出てくるのでは。

もちろん通信教育大手のベネッセなども協業の範疇に入るだろう。

 

 

 

トヨタに学ぶ評価制度:失敗やリスクを取ったことを評価する

トヨタの評価制度運用に関する豊田章夫氏の素晴らしいコメント。

トヨタ社内には『方針シート』と呼ばれる自己申告型の目標設定用紙があるのですが、これは自分で目標設定をして、後で本人が自己評価します。そうすると自己採点が5段階の一番上である◎に集中するのです。しかし、◎を取るためにイージーな目標設定をして達成したと言われても、全トヨタにとっては全くプラスにはなりません。だから私は今、一生懸命社員に言って回っているのです『意欲溢れるナイストライで、価値ある△を取れ』と」

 

△というのは5段階の真ん中なのですが、やりがいのある目標設定をしたら、そう簡単に◎を取れるわけがありません。大失敗は困りますが、難易度の高い目標を定めて、最低限△で止められるような工夫をすることは、極めて価値が高いと思いますね

引用元

 

目標管理制度の元で、本人が年度初めにチャレンジングな目標を立てれば立てるほど未達になってしまったり、ストイックな自己評価をするほど、それを人事や上司が真に受けて、人事考課で査定が下がるという会社も世の中には少なくないからだ。

 

部下も部下もその辺り(会社や上司の人事評価力)をちゃんとわきまえていて、絶対に達成できそうな目標を、さも難しいように翌年の目標設定としてアピールするのが処世術になる。

 

「結果コントロール」のニュアンスが強い会社は、評価制度を上手く回す仕組みを作らないと、すぐに形骸化してしまうので、むしろ失敗やリスクを取ったことを評価するKPIを入れ込むなどの工夫の必要がある。(GEやリクルートなどはその点魅力的な会社と言える。)

 

そしてそのような現場の問題をトヨタレベルの大企業のトップが正確に把握しているのが素晴らしいと思う。

 

Not all pretzels were created equal

お台場(ダイバーシティ)にあるプレッツェル屋「アンティアンズ(AA)」でパチリ。

f:id:wakabayk:20160920094224j:plain


"Not all pretzels were created equal"というロゴが目立つ。

 

*意味的には、

「すべてのプレッシェルが平等に作られている訳ではない=ここのプレッシェルが最高」

 

となる。


AAは、ペンシルバニア州が起源で、アメリカが最初に首都を置いた場所でもあるので、独立宣言にも見られる文言(all men are created equal)をもじってお店のキャッチフレーズに引用している様子。

Declaration of Independence - Text Transcript


僕の母校も同じペンシルバニア州にあったので、AAはいろいろなところにあったが、もともとドイツ系移民が多い地域(ドイツ系移民で宗教的な生活をしているアーミッシュなんかも有名)なので、プレッツェルといういかにもドイツネーミングなお菓子がチェーンとして発祥したのだろうと思う。

アーミッシュ - Wikipedia


ちなみにブッシュJr.元大統領が、NFL中にプレッツェルを食べ過ぎて喉を詰まらせ窒息しそうになったのは有名な話。


ステラおばさんのクッキー」も、同じペンシルバニアのドイツ系のおばあちゃんのクッキーが元になっている。

 

www.auntstella.co.jp


AAは世界に約1200 店舗あるそうで、日本ではリヴァンプ(元ユニクロの澤田さんや、ローソンCEOの玉塚さんなどが立ち上げた会社)が上陸させ14店(2012年)あるそうだ。でもイマイチヒットという感じではないようにみえる。

www.revamp.co.jp


何が足りないのだろう。甘すぎるのかな。

新しい問題解決法(問題解決2.0とは)【大人の学ぶ技術】

こんにちは。
フローワンの若林です。かなり久々のメルマガです(^^;)

先週土曜日は、首都大学東京公開講座

「新しい問題解決法」

についてクラスを開催しました。

www.ou.tmu.ac.jp


内容は論点を細かく分解していく従来の
「ピラミッドストラクチャー型」の問題解決法に加え、

「原因」と「結果」という因果関係をベースに
問題を解決していくシステム思考型を融合させて、
両者のいいとこ取りをした

「ハイブリッド型問題解決」

を身につけようというもの。


楠木建先生(一橋大)の
「ストーリーとして経営戦略」(2010)をはじめ、
ストーリー(=因果関係)がマネジメントの
現場において極めて重要だという認識は、
ここ5−6年で一気に常識化している感じがします。


▼「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」
 

www.amazon.co.jp


ただいまさら言われなくても、
昔からできる人は頭の中で自然にこれをやってきた訳で、
単に誰でも使えるようにフレームワーク化される機会が
あまりなかったという感じです。

それを、本メルマガでも何度となく紹介している
TOC(制約理論)型の「システム思考」をベースに
従来型のピラミッド構造型問題解決と融合した形です。

少なくとも、一般に教えられている問題解決系の研修や
講座は90%がピラミッドやそれに付随するMECEだけ
ですのでこれまでにはない

「次世代の問題解決」「問題解決2.0」

的な斬新な内容にできたかなと思います!
もちろん課題も見つかり、どんどんブラッシュアップする予定です。
(続きは後述)

ーーーーー

また、対話型ディスカッションシステム「フローパッド」の
プッシュ通知専用アプリのApple審査対応をここ1ヶ月
ぐらい、ずーっとやっています。

www.f-pad.com


Androidアプリは7月にすでにリリースしており、同時に
iOS版をアップルに申請していたのですが、
なんと今年6月から審査が変わったというオチでした。

AppleiOSアプリを6月1日から「IPv6サポート必須」に

www.itmedia.co.jp


IPv6は、
現在デフォルトで使われているIPアドレス形式(IPv4)が
足りなくなってきたこと、

また今後IoT系のデバイスが爆発的に増えるので、IPアドレス
枯渇することを見込んで、多くのIPアドレスを作成できるよう
にした新方式です。

まだほとんど世の中に普及していないのですが、アップルは
早々とその方式を採用し、アプリ作成会社にも強制すること
にした訳です。

長期的には良いことなんですが、
こちらは技術的ハードルが上がって一苦労です。


▼今号の内容
ーシステム思考への道のり
ー気になる記事

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 ■システム思考への道のり
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冒頭でご紹介したシステム思考型の問題解決ですが、
これは特に新しいものではありません。

例えば、大前研一「企業参謀」で著者は、戦略とは目的に応じて
経営資源を再構成する(シンセサイズする)と語っており、
まさにこれはシステム思考的なニュアンスのする考え方と言えます。

企業参謀が日本で爆発的にヒットしたので、その後、加筆増補して
英語で出版された「The Mind of Strategist」(その逆輸入翻訳版が
「ストラテジックマインド」)でも、直感やシステム思考的な
話がちょくちょく出てきます。

ただバーバラ・ミントさんを起源とするピラミッド構造
(Pyramid Principles)がよっぽど企業受けが良かったのか、
ストラテジックマインドよりも圧倒的に企業参謀が売れたからなのか、
その後システム思考的なフレームはあまり語られていません。

近年「企業参謀ノート」という入門書も出ていますが、
システム思考的な観点からは
個人的には「ストラテッジマインド」をお勧めします。
(原著は古いですが新装版も出てます。)

少し横道にそれましたが、

システム思考的なフレームワークの必要性や、
ピラミッド構造の限界は、

バリバリのピラミッド構造型問題解決を生業にしてきた
マッキンゼーで東京支社長を務めた横山禎徳さんなども、
退職後に著書で指摘しています。

▼「循環思考」(2012)

www.amazon.co.jp


いずれにしろ、新しいフロンティアを切り拓きたいなと思っています。

☆続きは次回!

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 ■ 気になる記事
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ビッグデータが教育に革命を起こす!?
 岡山大学寺澤孝文氏が語るeラーニングの可能性

app-review.jp


 地元岡大でベネッセとEラーニングの実証実験を推進されている
 寺澤教授についての記事。

 原田さん以降、どうも不調な感じのするベネッセですが、
 こういうのを読むと、割と将来は明るいのかも知れないと
 希望を感じます。


鈴木敏文氏が語る、GMSの衰退に歯止めがかからない理由

  

diamond.jp



 退任時になんとなく晩生を汚したような形になった鈴木さんの
 コラム。読むと、やっぱり名経営者だっだんだということが
 よく分かります。

 ↓引用
  「売り場には大きさの異なる13枚のワイシャツを
  1セットにして、それを1ロットとして届けられます。
  そうすると標準的なサイズは、真っ先に売れてなくなります」

 これは、時代の変化に対応していない象徴的な例である。
  一番よく売れる標準的なサイズが欠品となり、売れないサイズが
  棚を占めている。これにメーカーも問屋も小売りの現場でも誰も
  疑問を感じない。そもそも「1ロット13枚」という、なんの
  根拠もない納品形態に、なぜ誰も疑問を感じないのか。


 *こういう問題を解くにはSKU(Stock Keeping Unit、
  この場合13枚で1セット)をばらし、ボトルネックを潰して
  リードタイムを極限まで短くし、消費者の動きに機敏に対応する
  体制を作ることしかありません。


 ◇若い社員に仕事を振ると「なぜですか?」と逆質問される:人はなぜイラッとくるのか?

 

bylines.news.yahoo.co.jp



 東大の社会人教育研究の第一人者、中原先生のコラム。
 そうだよなあ、と思わず膝を叩いてしまいます。


◇新幹線清掃「ハーバード経営大学院」の必修教材に(毎日新聞
 

http://mainichi.jp/articles/20160902/k00/00m/020/121000c



 研修でよく使うテッセイのケースがハーバードの必須教材に
 なったそうです。「従業員に誇りを持たせる」という改革が
 感動的です!


◇「なぜなぜ期」の幼児が知りたいのは原因ではなく目的!
 子どもの能力を高める対応術

 こちらはちょっとだけ目からウロコのコラム。
 なるほどなあーと思います。

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【編集後記】
 問題解決手法を含めたコンサル業界の進化に関するざっくりとした
 振り返りは松岡正剛(セイゴー先生)のコラムがオススメ。
 

1560夜『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』カレン・フェラン|松岡正剛の千夜千冊

問題解決手法の新しい潮流としてのTOCfE

6日間がっつりTOCfE(システム思考の一種)のファシリテーター認定トレーニングを受講。

 

ピラミッドストラクチャーやMECEを駆使する従来(バーバラミント系)の問題解決(PSA/Problem Solving Approach)と共通点はあるものの、一つの原因が結果を生み、それが連鎖して、結局元の原因になってループ(悪循環)しているような問題にはかなり有効なメソッドです。

 

さらに「Fact(事実)」ではなく「(主観的)認識」や人の「感情」が絡むような問題解決にはもってこいです。

 

京大MBAを始め、いろいろなところで採用が進んでいて、最近は戦略コンサル出身の方々も、問題を分解して要素に絞り込むだけでなく、因果関係をつないで全体感=「エコシステム」に注目するこのシステム思考問題解決に注目する動きが加速している感じです。

僕も仕事上マッキンゼーやBCGで一般的なミント系の問題解決は馴染み感が強く、よく使うのですが、

 

会社の問題解決しようとすると、いつも誰か(上司や同僚、部下)のせいになってしまう(→だから解決できない)

 

トヨタ式問題解決の「なぜなぜ5回(Why X5)」をやっているうちに詰問のようになってしまい、人に嫌われるので、結局は現場で使えていない」

 

というモヤモヤ感をお持ちの方は、システム思考系問題解決を、補完的な意味で学ぶ価値は相当あります(少なくとも私はそうでした、汗)

 

関連コラム:問題解決手法の新しい潮流

tocforeducation.org